びゅーん
***
「ブランコって気持ちいいね」
なんとなく、嫌悪な雰囲気だ。
でも、ここで言葉を交わさなければもっと悪化してしまう気がする。
「……ね。春の暑さが吹き飛んでいきそうー」
「ぶわーって?」
「そ、ぶわーって、びゅーんって」
そう言って、私達はくすくすと笑う。
心晴は、目元を細めて景色を愛おしそうに見る。
「いいね、なんか。───クラスでの千奈のことはわかんないけどさ。今朝話してた穂花ちゃん、きっとすごく優しい子だよね」
心晴は、少しブランコを漕ぐ手足を強めた。
「………そうかな。そうだよね、きっと。肩……預けられるかな」
「あっ」と言い終わってから気づく。
「肩を預ける」なんておかしな表現、心晴に伝わるだろうか。
でも、冗談を言いあってる仲だ、突っ込んでくれるだろう。
「……少しくらい、預けたいよね、肩」
突破、心晴がそう言った。
私は「え?」と心晴を二度見してしまった。
「……心晴も、そういうこと、思ってるんだね…。心晴は、完璧なのに」
私の口からは、心晴を妬むような言葉が出てしまった。
本心だった。
だけど。
長い付き合いだけど。
誤解を生むような発言は、したくなかったのに。
「私は完璧じゃないよ、人間みんな、ね」
「完璧…じゃない?」
「うん、私だって、自我が出過ぎちゃう時とか、出せない時とかあるし。後悔してることだって、いっぱいあるし」
心晴は、上を向いて「はーっ」と息を吐いた。
そして、ブランコからパッと降りた。
「私も、千奈も、完璧じゃないよ?だからそんなにさ、塞ぎ込まないでよ。大丈夫だよ、失敗なんてたくさんあるし!!」
ブランコから降りた心晴は、私の目線に合わせるようにしゃがんだ。
「実は、ずっと千奈のこと心配だったの。友達できてるかな、とか上手くやれてるかな、とか」
私は大きく目を見開いてしまった。
驚きのあまり、口もポカンとあいてしまっている。
「え……こ、はる」
絞り出すように声を出した。
「そんなに驚かないでよ……。でも、いちいち『友達できた?』なんて聞くのもウザがられるなって思って」
心晴は、一呼吸おいてまた喋りはじめる。
「だから、あんまり聞かなかった。でも、朝に穂花ちゃんと話してて、『友達…!?』って思って」
「だから、聞いちゃった。ごめんね、嫌な気持ちにさせちゃってたら」
私は首を横にふる。
「──心晴、ありがと」
私はぶっきらぼうに言った。
もどかしくて、くすぐったかった。
心晴に、面と向かってこんなことを言うなんて───。
「そろそろ帰ろっか」
「んね、帰ろ」




