取り繕う
千奈ちゃんは、少し前に噂になっていた。
「千奈ちゃんと(心晴ちゃんも)は、告白して、フラれた」というもの。
当然、その噂は一瞬で広まり、あたしの耳にもすぐに届いた。
千奈ちゃんと心晴ちゃんは、宵乃ちゃんとの3人組で仲が良かった。
しかし、その噂が広まったころから、3人で一緒にいることはなくなってしまった。
3人組は、自然に解消したのかな。
当時の純粋なあたしは、そんなことを思っていた。まさかそんなわけもなく、やっぱり一悶着あったみたいだ。
宵乃ちゃんが、「心晴ちゃんと千奈ちゃんの嘘の情報をばら撒いた」んだって。
そして美香は、その時宵乃側だったらしい。これは最近聞いた話なんだけどね。
って、こんな美香のこと思い出しても、あたしは変わらない。変われない。
「自分が仲良くなった友達」の性格が悪そうだったから、他の子と仲良くしたい、あたし。
休み時間の間も、移動教室のときも、ずっと1人でいる、千奈ちゃん。
千奈ちゃんは、誰かに話しかけられると冷たく答える。
そういう子なんだな、と妙に納得していた。
生まれた時からそういうクールな性格で、疑うことなんて一切なかった。
それが、こんなに簡単に覆されてしまうなんて、思ってもいなかった。
千奈ちゃんが、心晴ちゃんと話すところを見た。
すると、千奈ちゃんは心晴ちゃんと普通に話していた。
しかも、少し口調が強めで「ばかぁ!」とか「おまえ!!」とか。
冗談なのはわかった。
でも、あのクールで孤高な千奈ちゃんが、こんな風に話すとは思ってもいなかった。
千奈ちゃんと心晴ちゃんは、わざと遠回りをして登校していた。
あまり人がいなくて、ただ学校から遠いルート。
その道を使っている理由は、すぐに理解できた。
千奈ちゃんは、自分の心にたくさんの側面があるのかな。横からの見た心と、上から、下から見た心が、大きく変わってしまう。
そういう、子なのかな。
──あたしと、同じなのかな。
人によって、「声」を変えてしまうということ。
あたしも、初対面の人の前だと取り繕ってしまう。
この前、あたしのことを「取り繕う」と表現することがわかった。
取り繕う。
人によって、取り繕い方を変えてしまうのか。それともそもそも取り繕ってないのか。
それでも、きっと千奈ちゃんとあたしには共通点がある。仲間だ、と千奈ちゃんのことを知って嬉しくなった───




