最悪の再会
――翌朝。朝露に濡れて仄かに煌く薄明るい草原を、重厚なホバー音を響かせながら巡行する一機のゴーレムの姿があった。…念のため、例の剣の切っ先と剣身に小さな穴を開け、そこに紐を通してシーツを括りつけ、白旗の代わりとした。
これで撃たれないという保証も無かったが、これより他の方法も思い浮かばないので、このままモニターに表示されたマップを参照しつつ手近な都市へと向かっていた。
マップに表示された名はアレスガルド。 やはりHOGで自分が属していた勢力だった。
都市を囲む城塞が見えてくる頃、アレスガルドから三機のゴーレムが同じくホバーダッシュで接近してきていた。
…戦闘速度だ。さしずめ、領土侵犯してきた所属不明機を迎撃するべくスクランブル発進したアレスガルド軍の魔導機兵隊だろう。
やはりそうだった。最近の初心者に初期支給されるアレスガルド軍ゴーレム、「ゼオルA型」だった。
現行型だけあってヘビーよりスマートでスカしたフォルムが、いかにも旧型と最新型兵器との対比らしく見える。
『所属不明のゴーレムと魔導機士へ告ぐ。我々はアレスガルド軍だ。臨検を行う。そこで武器を棄て停止、駐機せよ』
言われた通りに武器を置いて停止し、片膝をついて駐機姿勢に移行した。 駐機した武尊…自分を、徐々に速度を落とした三機のゴーレムが遠巻きに唖然としたように見ている。
『全く見た事のないゴーレムだ…色もどの軍とも違う。…そのくせ見たか、今の流れる様な動作を?操縦技術はかなりのものだぞ、コイツ』
馬鹿にされているのだろうか?
それは、機体操作に慣れない内は簡単じゃないかもしれないが、慣れてしまえばこんなものだろう。
…いや、よく見ると警備隊の三機はどこか危なげな様子でこちらにゆっくり近づいてくる。 ホバーダッシュ中は方向修正さえ気を付けてれば自動運転のようなものだが、細かな移動時には機体の動かし方の癖というか粗が出る。 三機とも、熟練の兵士にしては機体の重心が左右にぶれている。…歩きながらコレでは、移動射撃などでは命中率が20%台まで落ち込むだろう。
(警備と臨検を任された新兵なのかもしれない)
そう思う事にして彼らの到着を待った。 …遅い。ナメクジがのたうつような動きと速度でようやく武尊の傍らに立った。
『どこから来た?』
馬鹿正直に山中のガラクタ置き場から、とは言わなかった。
「アルカディアからゴーレム乗りにできる仕事を探しに!」
何れの勢力にも属さない完全中立都市。三国に囲まれるように立地しながら、聖皇を頂くために一切の外部干渉を受けない聖域。
三国はこの聖皇の真の騎士たる国を決めるため…という名目の建前で争っている。しかして指導者たちの肚では三国を統一して敵対勢力を滅ぼした後に聖皇もろともアルカディアという蜜の滴る聖域を手中に収めようという魂胆で、自分含めたプレイヤー達はその手先だったという訳だ。
ともあれ、自分はその三国の内一国につくつもりは無かった。特定の勢力について大国同士のパワーゲームに巻き込まれるなんてまっぴら御免だったし、折角なので軍人として生きるよりこの世界を冒険して回りたいと思っていた。
その為にはまず、アルカディア…聖域から来た中立の人間なのだと主張しなければならない。
『アルカディアから…そうか。いいだろう、通れ。ケルテット商会に行けば何かしら仕事の依頼があるだろう』
「ありがとう」
(これまた素直なNPⅭよろしく話が早くて助かる)
この調子なら何事もトントン拍子で進められそうだ—―…そんな楽観的な考えが一瞬、頭を過った。
ジャックスが去った後、その背を見送った警備隊は軽い無駄口を叩き合いながら詰所へと帰投した。
『…しかしあの魔導機士、見事な操縦技術だったな』
『ああ、一週間前に現れた三賢者様のようだった』
『もしかしたら三賢者様と所縁のある方かも知れん。上に報告しておこう』
アレスガルド城内にはゴーレムで移動可能な大通りがあった。これもやはりゲーム内でプレイヤー同士が決めた交通ルールというかマナーのようなものがあり、それに従って行動した。歩兵の道路と歩行者用の歩道があり、日本サーバーの場合は日本の交通ルールの要領と殆ど同じだった。
「確かケルテット商会ってこっちだった筈だよな…」
自分は普段、クエストや依頼などとは無縁で、遥か離れた辺境の地でエマと共に隠れ住んでいたから、このアレスガルドに来たのはゲームの記憶含めて久しぶりだった。おぼろげな記憶だったがそれでもケルテット商会のゴールド袋と剣、手のひらが重なり合った看板を見て、記憶が正しかった事に安堵した。
ゴーレムを駐機エリア…の陰、人々が普段立ち寄らない裏手のエリアに滑り込ませ、駐機する。
起動パスワードと音声認識システムをリンクさせ、ハッチを開けて降り立った。
「…ひっさしぶりだなぁ…」
ファントム盗賊団結成前、右も左も分からずに手当たり次第に難易度の低い依頼を受けて居た頃を思い出して感慨に浸った。
商会の待合室には自分のように仕事を求めてきたり、逆に仕事を終えた報告をしにきた者達…ゴーレム乗りや歩兵らの姿があった。 歩兵と言ってもRPGの勇者や戦士のような出で立ちの者もいる。銃火器もメジャーに存在するが、それは対人戦においては極めて有効だがモンスター相手には必ずしもそうでは無かった。
しかしエマは剣の他に銃火器も好んだ。
歩兵の戦いはFPSゲームのような反射神経と戦術、判断力が必要とされる要素があり、そのプレイスキルが彼女にはあった。…まさかクラス…いや、学校一とも噂されていた上級女子の正体が、コアな歩兵だったとは驚きだ。
「ようこそ、ケルテット商会へ!当商会のご利用は初めてですか?」
あぁ、そう言えばこんな魅力的なNPCの受付嬢がいたっけか。ソロでやってた頃は結構好きだったな…
「あ…初めて、かな。ゴーレム乗りにできる仕事を探しているんだけれど。土木治水とか農業開拓、救助とか無いかな?」
「はい、少々お待ちください」
待つ間に俄かに外が騒がしくなったような気がしたが、程なくして戻って来た受付の少女に向き直った。
「…申し訳ありません。現時点ではお客様のご希望に合う依頼はございませんでした。…今は専ら、傭兵としての任務依頼ばかりですね」
「…そうですか…分かりました。少し考えてからまた出直します」
とりあえず、手持ちのゴールドで必要な物を揃えなければならなかった。食料と…傭兵の依頼を受けるにしてもソードだけではさすがにきつい。
出入口に向かおうとした所、外から扉が開かれて三人の男が入って来た。
「さ、三賢者様だ…!」
「何故こんな所に…?」
周囲が騒めきながら道を空ける。…そうした人々に紛れ、自身も目立たぬように壁際に潜んだ。
三人組の男は傲岸不遜な態度でずかずかと受付へと向かっていく。
…なんだ?こんなNPⅭはゲームには居なかったはずだが…
「よぉ、お嬢さん。ここ一時間以内にゴーレム乗りの男がここへ相談に来なかったかい?」
一人がカウンターへ身を乗り出し、受付嬢に迫った。「ひっ」と小さく声を上げて少女は後退る。
「さ、三賢者様…その、お客様情報ですので…」
「そう。じゃあ仕方ないな」
男はあっさりとカウンターから身を引いた。代わりに何やら一枚の紙片にサラサラと書き込んで少女に手渡した。 その目は冷淡に笑っている。
「…じゃあここの勤務態度について、然るべき考査をしてもらわないとね。…君、急いで次の就職先探した方が良いと思うよ?これ親切心ね。 困ったらここに連絡しなよ。養ってあげるから」
とんでもない相手を敵に回したと知り、少女の血の気が引いていく。 他の二人はくくっ、とその様子を見て噴き出すのを堪えている。
「…なんてね。どう?言う気になった?」
打って変わって優しげな声で受付の少女にまた迫る。 …少女は震えながら首を横に振った。
「無礼をお許し下さい…本当は言えないのではなく、知らないだけです…」
男の目から柔らかみが消え、無機質なものに変わった。
「あっそ。…使えねー女… おい、誰か新しく外からやって来たゴーレム乗りの人間を知らないか?」
嫌な予感がした。極めて本能的…生理的な嫌悪感。こいつらは何故か俺を探している。
こいつら、全く初めて見る顔姿だが…知っている…
人の純粋で無邪気な憎悪と悪意を煮詰めたような屑共。
三賢者と呼ばれる男達の内の一人と目が合ってしまった。…同時に、それが何者か互いに理解してしまった。
相手はニヤリと嗜虐心を滲ませて笑み、ジャックスへと大股に歩み寄って来た。
澤田…中嶋、山岸…。
あの神様も、あの連中がそこそこのスキルを手に入れて転移したと言っていた。間違いない。
「おやおやぁ~?顔は別人だが分かるぞ?…お前、篠川だろ?」
他の二人もズイと歩み寄って来た。さりげなくそのまま取り囲むように退路を断たれた。
「警備隊から報告が上がってさぁ。この世界のゴーレム乗りは軒並み雑魚ばっかりだから、すぐにピンときたよ。…まさかお前もこっちの世界に来てるとはな!」
バン、バン、と力強く背を叩かれた。 …言い逃れはできないし逃げ場も無い。刺激しないよう相手に合わせた。
「…すごいね、もうこのHOGそのものの世界で地位を掴むなんて」
「俺達にはそれぞれSランクスキルがあるからな。中嶋は国家運営スキル、山岸は戦闘補助スキル、そして俺は純粋な戦闘スキル。…リアルファイトでもモンスターをぶち殺せるから楽だったよ。 それに、三人全員がHOGのチームランカーだったしな。ゴーレムの扱いも余裕過ぎて、難易度もう少しは上げて欲しいくらいだよな?」
「ははは、チームランカーって! 澤田は一位だろーが!隠してんじゃねーよ!」
「言うなって! …でさ、篠川?協力しあわね?」
お断りだ
…そう面と向かって言ってやれればどんなに爽快だろうか。しかし、悪夢はこの世界においても続いていた。モブ村人程の戦闘能力しかない自分に対し、澤田は別次元のステータスを持ち、他二人も自分より遥かに上のステータスだった。
生身で楯突いても痛い目に合うしかないだろう。
「…俺なんか足を引っ張ると思うけど」
「気にすんなよ!友達だろ?」 そう一方的に言いながら連れて行かれた。
…良いオモチャを手に入れた…そんな顔だった。
さっき、この世界のゴーレム乗り相手では物足りない、と言っていたが、確かにゲームではあまり敵キャラが弱すぎるとつまらなくなる。
程よく弱くて、サンドバッグにし甲斐のある相手が欲しい…そういうことだろう。
そしてその予想は正しかった。
支給されたゼオルA型に乗せられ、ゼオルB型に乗った澤田ら三人に球戯のボールのようにどつき回された。
ゼオルB型…ゼオルA型の完全上位互換。 指揮官仕様の高性能カスタマイズモデルだ。カスタム内容も見る限り、これ以上ないレベルのアッセンブリーとなっている。
早速、ブラスディア軍との紛争地帯である国境まで部隊と共に同行を命じられ、何度か軍事行動を共にさせられた。 …しかし三人は自分を最も活かせないポジション…タンク代わりにさせた。
弾避けにして苦しめて遊ぼうというのか。 ジャックスは頼りないアームシールドとソードで必死にコックピットを守って耐えた。
装甲も殆ど取り外されていた。ゼオルA型とはガワだけで、中身はベビー…本来は新兵訓練用のインナーアーマーを排除した、とても実戦に耐えられる代物では無かった。段ボールボディの車みたいなものだ。
「篠川くん?いや、今はジャックス君かな?…逃げてばかり、守ってばかりでやる気が無いねぇ」
まともな機体さえあれば… 何度もそう思いかけるが、この連中の為に敵兵を殺すのも違う気がする。
…今は無能でもいい。ただ、耐える時だ。
澤田らは親衛隊に女性魔導機士を多用し、取り巻きとしていた。彼ら一人につき、三、四人の女性機士が護衛兵として常に従う。中々に男性好みな容姿をした美人揃いだった。
…そしてこの女達が澤田らの代わりに、何かにつけて自分を嘲り、時には暴行してきた。心身問わず、自分を痛めつける芸術点によって彼ら三人からそれぞれ評価されたりご褒美が貰えるらしい。
勿論自分は耐える他無かった。
今も、澤田の特に可愛がっているグラマーな美女に尻を蹴飛ばされ、湿地の泥中に顔からダイブさせられた。顔を洗う水を探して、泥水の上澄みを目に入れないようにしながら目元の泥を洗い落とした。
「ジャックスさん、足を引っ張りすぎですよ?…私達トライデントの評判を落とさないで頂けませんか?」
トライデント…三賢者とその親衛隊、51機の一個大隊クラスの最精鋭部隊。
「す、すみません」
…あんな紙装甲の機体でフロントを張って、どうしろと言うのだ。 自由に動き回らせてくれれば幾らでもやりようがあるものを、その場から動くなと命じられてその通りに出来るものか。それこそ良い的だ。
…勿論、こいつらは俺が派手に戦死する事を望んでいるのだろう。
一人くらい自分に同情して、後から謝罪の一言もあってくれてもいいと思うが、見事なくらい、そんな人間は居なかった。 監視されている訳でもないのに。
「エリック様ぁ、どうしてこんな人を我らがトライデントに入れたりしたんですか?」
別の少女が科を作りながらエリック…澤田に密着しながら不満を漏らした。
「誰にでもチャンスをやらねーとな。心を広く持てよ、お前ら」
少女の腰に手を回しながら澤田はジャックスを見下ろした。
「でもこの人…ジャックスさんが入ってから、私達の戦果が落ちています」
当たり前だ、こっちが殺されかけている間、トライデントとやらは遥か後方で見物しているのだから。
あんなことをさせられて死なずに済んだのは単純に自身の回避テクニックと防御テクニックのおかげだった。…並のプレイヤーならとっくに死んでいると断言できる。
「そのくせお尻とか胸ばっかりジロジロ見て来るし。…常に視線をゾワゾワ感じて、本当に寒気がして気持ち悪いです」
…そいつぁ失礼、ジロジロ見たつもりはないが、随分と露出度の高いその戦闘服?のせいで風に当たり過ぎなんじゃ無いか?
こんな連中の為に死ぬつもりはない。何としても生き延びて武尊に戻り、こいつらのいない国…ブラスディアかラガルメスへと逃げ延びなければ、と改めて決意した。
「やっぱマジで使えねーわ、お前。 予想以上のゴミとかある意味神だわ」
「せめて最期くらいかっちょよく戦死してくれるかと思ったら、それすらできねーのな、お前」
ようやく飽きられたか、その一言と同時に寄ってたかってゼオルA型…ハリボテマシンから引きずり降ろされ、平原に身一つで投げ捨てられた。
下手にレアスキルを持っていない無能力者であることも救いになったようだ。オモチャのピエロとしての役目は終わった。 …欲を言うなら、もっと早く捨てられたかった。
全身に生傷を作ったジャックスは命からがらアレスガルドへ辿り着き、幸運にもまだ無事に残っていた武尊を確認したあと、他国へ旅するための食料他雑貨を買い揃えた。
最後に何か温かいものを食べようと、商会近くの食堂へ寄った時には夜になっていた。
店の奥に寂しげに座る少女の姿があった。何人かの男がナンパしては断られ、口汚い罵り文句を吐いて去っていく。
…迷わず、少女の座るテーブルへと向かった。
「…あの」
声を掛けると少女が顔を上げた。またか、と不貞腐れた顔だったが、意外そうに目を瞬かせた。
「…どうしてこの前、脅されたのに俺を庇ってくれたんですか?」
「…ああ、あの時の! …ええ、それは彼らが脅してくるような権力者で、貴方がお客様だっただからです。受付係として業務を全うしただけです」
「図々しいお願いですが、三賢者について知っている事を教えて貰えませんか?」
「…はい。一週間ほど前にアレスガルドに訪れた3人の冒険者でした。彼らは高い戦闘能力とスキルを持って現れました。そして国王に謁見した際にその能力を見込まれてゴーレムに乗り込んだ所、ベテランのゴーレム乗りでも足元に及ばない程の圧倒的な実力を見せ、すっかり国王に気に入られてゴーレム部隊の指揮権と言う大きな権限を手に入れました」
HOGでチームランク1位になるほどの実力を持ち、この世界には低難易度NPⅭ程度の敵ばかり。…となればこの世界で絶大な権力と力を手に入れたあの連中はこれからどうするだろうか?
強い懸念があった。…もしあの三人がこのままアレスガルド軍として他国を攻撃し続け、勢力を拡大していけば…あのゲーム内での世界観でしかなかった設定が、悪い形で実現してしまうのではないか?
あの三人が率いるアレスガルド軍がブラスディア、ラガルメスを統一し、最後にはアルカディアを支配してしまう。 その時、三賢者は支配者としてこの大陸に君臨するのではないか?
あんな連中に支配される世界なんて見たくない。
かつての自分にはあいつらに楯突く術などなかったが、今は違う。…リアルの国家まで巻込んでどこまでやれるか分からないが…勝ち目が無い訳では無い。
…そう自負できるだけの材料はあった。
「…じゃあ渡された連絡先って?」
「三賢者様の光栄なお世話係だそうです。…死んでも嫌です。私はこの仕事を続けたかったのに…今日付で解雇されました。業務を全うしただけなのに。…頼れる人も親族も居ないし、これからどうすれば…」
「…その、アイツらが一番悪いとはいえ、間接的に巻き込んでしまった俺にも責任があるような気がする。だから、お金は無いけれど何とか力になりたい。 …でもかなりの決断になるし、違う国になるけど…同じような仕事にはつけるかもしれないよ」
少女が物問いたげに顔を上げた。
「こう見えても魔導機兵の操縦だけは自信があるんだ」
…元、ソロランカー・世界ランキング一位の実力を、自身に問う時が来たようだ。
「…あ~、篠カマくん追放したの失敗だったわ。セルフざまぁだったわ、アレ」
「はははッ、なんでだよ!?アイツ、スキルどころかマジで無能力だったじゃねーか!アレ、ゴブリンといい勝負だぜ?」
「用意されてるヒロインもゴブリンの雌とかだったりしてな」
「ウケる!御祝儀持って行ってやらねーとな!」
およそ賢者の名を冠する者達の会話にしては品が無かったが、親衛隊の女達や兵達も調子を合わせて景気よく笑った。
「いやいや…最後に有効活用してやればよかったなぁ、って。この世界じゃ別に殺したって我らがショーネンホーどころか面倒な法律すら無いんだからな。あっちのクソみてーな世界じゃやり辛かった事も色々試せたのに、放りだして失敗したわ」
「じゃあ澤田には愛しのアイドル・篠カマくんを譲るよ。 俺は路頭に迷った頭ポンコツお嬢さんを保護してやるから」
「ふざけんな、殺すぞテメー!?」
言いながらまたゲラゲラと笑った。
「…だったらさ、アレスガルドにアイツが戻ったら城門に検問張って逃げられないようにしとけば?罪状なんて何でもテキトーにでっち上げられるだろ?」
「…そう言うと思ってさ。照会したらちょうど今日、戻ったらしい。まだアレスガルドに居るってさ」
それを聞いて澤田は満足そうに口元を歪めた。
「じゃあさ、絶対逃がさないように命令しといて」




