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年中討伐!古知丸さん  作者: 雨樋 朔
東京郊外戦
13/13

ロックな奴ら

「あの二人最近見るようになったな」


そんなことを言う人がいた。

その人の視線の先には杉原(すぎはら)乙原(おつはら)がいた。二人は休憩室と呼ばれる、自販機と申し訳程度の椅子と机がある部屋にいた。


「杉原さんってどんな銃を使ってるんですか?」

「私あまり銃詳しくなくて、名前とかはわからないんですけど」


そう言いながら杉原は腰に巻きつけたホルスターに手を伸ばした。


「一番最初に渡された銃を今でも使ってるんですけど...」


そう言って机にその銃を置いた。

その銃を見て乙原は顔をしかめた。


「...デザートイーグル...?」

「この銃、使ってると少し反動が気になって」

「少し?」

「これも持ち合わせるようにしました」


机に置いたのはグロック17だった。


「これ使い勝手がいいんですよ」


杉原はニコニコしている。

戸惑う乙原は自分が間違って認識していないかと疑い始めた。


「杉原さん。初めて使った銃はどれですか?」


杉原はデザートイーグルに触れた。


「その後に使い始めたのは?」

「これです」


グロック17に触れた。


「この銃を使ってて、周りの人に何か言われたことはありませんか?」

「いやあ。特にないですね。まあ、強いていうなら楡俣(にれまた)さんに『ロックだね』って言われたぐらいですかね」

「ロックだね?楡俣先輩は特に何も思ってないのか?」


少し銃を見つめ、考えていると頬に痛みを感じた。ただ、すぐにその痛みがひんやりと冷たかったことに気づいた。後ろを振り向くとそこには楡俣がいた。


「よっ!」

「何すんですか!びっくりしたでしょう!みてください!そのせいで杉原さんが震えてます!」

「あっ。まじ?ごめん。まさかそんなに驚くとは思わなかったから」

「で。なんの用ですか?」

「あぁ。これ。先輩から後輩への労いの品。的なね。はい」


そう言って楡俣は二人に缶ジュースを渡した。


「ここ最近二人で討伐に行くこと多いし。息ぴったりらしいじゃん。しかも戦績もいいらしいじゃん」

「ありがとうございます」


乙原はまさかあの楡俣先輩が褒めるなんて、と感動した。

杉原も褒められて嬉しかったからなのか、少し俯いて微笑んでいた。


「あっ。そういえば先輩」

「なんだ?乙原」

「杉原さんが新人の頃に使っていた武器を見て、何か思いませんでしたか?」

「杉原が新人の頃に使ってた武器?...ああ。デーグルか。なんかロック新人だなって印象だったな。酔っ払いながらデザートイーグルぶっ放してんの面白かったな」

「それに驚くことはなかったんすか?」

「まあ、ロックだなって」

「ロック...」


乙原は杉原の方を見た。杉原の長髪の隙間から見える耳が赤かった。


「杉原さんってここに入社する前は銃とか触ったことあるんですか?」


杉原は首を横に振った。


「古知丸や杉原の世代って、ロックな奴らばっかだったからな。凄い奴が多すぎて逆に驚かなかったわ」


楡俣は感慨深そうに言う。


「その環境に慣れるって怖いっすね」

「『慣れた』じゃなくて『受け入れた』の方が近いかな」


受け入れる...。まあ、後輩にこんな奴らがいっぱいいたら、そら受け入れるしかないか。


「もしかしたら、杉原さんってお酒飲んでリミッター外したら、さらにとんでもなく強くなるんじゃ...」


杉原は乙原を見つめ『そんなことない』と顔で訴えた。そして小声で


「奥の手です」


と言った。


「乙原。お前、杉原にお酒をやめさせるって誓ったんじゃないのか?なんで酒進めてんだ」

「いや誓いましたけど...。興味本位というか。酔ってる時の杉原さんと現場行ったことないんで...。てかなんでそれを知ってるんですか!?」

「全部、杉原に吐かせてるんだよ。乙原の言動、行動をね」


杉原は申し訳なさそうな顔をしている。


「乙原さん。ごめんなさい。先輩に圧かけられてどうしようもなかったんです」


杉原は頭を下げた。


「頭を上げてください!杉原さんは何も悪くないですから!楡俣先輩。流石にキモいっす」

「キモくねぇよ!後輩想いだろ」

「想いすぎた結果、通り越してるんですよ」

「先輩もロックですね」

「杉原さんも何言ってるんですか」

「ちょっと楽しくなっちゃって」


杉原さんのにこやかな笑顔でさらに場が和んだ。

遠くで見ている人はそれを快く思っていないようだ。


「やっぱり仲良いよな。あの二人」

「まあ似たもの同士なんだろ。壱班の人間だらけだし」

「あいつモドキなんだろ?モドキのくせに。幸せになってんじゃねぇy...」

「ちょっとお二人さん。どこの子かな?」


二人は振り返った。


「あんた。討伐課壱班の古知丸(こちまる)じゃねぇか?」


坊主の方が吠えた。


「そういうお前らは回収弍班の連中だろ?」

「なんで知っt...」

「確か名前は...。坊主の方は田中と言ったな。お隣は佐藤だったかな?」


田中は顔を真っ赤にしている。逆に佐藤は顔面蒼白であった。


「は?名前まで知ってんのか?」

「え?ほんとに田中と佐藤なの?適当に言ってみるもんだな」

「は?お前の相手してると調子狂うわ」


田中と佐藤は古知丸の横を過ぎ去ろうとした。


「おい待てよ」


急に古知丸が呼び止めた。


「は?」

「お前ら人のこと言ってるようじゃ、三流と括るのも烏滸がましいな」

「なんだと?」


すかさず田中が拳を振り上げるが、佐藤がそれを止めた。


「は?何してんだよ」

「馬鹿。古知丸さんに喧嘩売ったんじゃねぇ。返り討ちにされるぞ」

「意味わかんねぇ」

「まあここは穏便に済まそうよ」


古知丸はいやらしい笑みを浮かべた。


「はぁ?お前、調子乗るのもいいかg...」

「田中!もう行くぞ!古知丸さんすいません!」

「ちょっ...。離せや!」


田中は佐藤に引きずられていった。


「一応、私の方が先輩なはずなんだけどな。舐められないようにしなきゃ」


古知丸は気分が沈んだ。


「おっ。あんなとこに古知丸が」


無邪気に手を振る楡俣先輩に笑いそうになったのを堪えて


「楡俣先輩じゃん」


と当たり障りのない返答をした。


「古知丸にも労いの品だ」

「珍しい」

「そんなことないだろ」


壱班は明るかった。

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