酒の飲み過ぎ
飲酒が制限付きの杉原(古知丸の同僚)。
なんと酔っ払っているところを大垣社長補佐に見つかってしまった。社長補佐は杉原さんをガン見している。もう言い逃れできないんじゃないか?
「あら、杉原さんも一緒なんですね。最近はハニクといい、強そうなモドキがたくさんいますから、みんなで頑張りましょうね。お休み中にすみません。それではまた」
ガチャ。
大垣社長補佐は普通に部屋を出て行った。
私たちは顔を見合わせた。
『耐えた〜』
「いやなんでなんで?」
また部屋に人が入ってきた。
「おお!久しぶり!生きてたかヒョロガリ!」
この一幕の一部始終を見ていた乙原だった。
「歓迎されてるのか拒否されてるのかどっちなんですか?」
「会いたかったぞぉ!ヒョロガリ!」
「古知丸さん。僕のこと貶してますよね?」
「乙原くん。これは彼女なりの歓迎だよ」
「お久しぶりです。楡俣さん。歓迎だといいんですけどね。...あっ。あれ。やばくないですか?」
乙原が楡俣と古知丸の後ろを指差した。
「おぇ...。...ゲボッ...」
杉原が古知丸の部屋で、古知丸のゴミ箱に、四つん這いになってリバースしていた。
「おいぃぃぃぃ!!!何やってんだ杉原!人の部屋だぞ!人の部屋!」
古知丸は杉原の胸ぐらを掴んで揺さぶった。杉原はまだ気持ちが悪いのか顔が真っ青である。
「も、萌ちゃん...。ま、まだ、ゴミ箱に吐いただけ、ましれしょ」
「マシなだけだ!マシなだけ!吐くなら飲むな!飲むなら吐くな!」
「飲酒運転の啓発ポスターみたいなこと言わないれよ」
まだ強く揺さぶっている。
「古知丸さん。そう強く揺さぶると...」
「え?」
古知丸が乙原の方を向く。
「アッ。まだ出そう...」
「ほら。言わんこちゃないじゃないですか」
「えぇ!?ちょ、ちょっと堪えて。はい、ゴミ袋。ここに、ここにして」
「わかった...。ウッ...。ゲボー」
酒の飲み過ぎで吐く人と、それを心配する人と、それらを遠くで見守ってる野次馬という謎の構図がこの部屋にうまれた。
「楡俣先輩」
「ん?」
「杉原さんって結構な頻度で吐くほどお酒飲んでますよね。あれってなんでですか?」
楡俣は渋い顔をした。
「乙原って何も知らないよな」
「そりゃ入社してちょっとしか経ってませんからね」
「まあ。色々あるのさ」
「なんですか?その言い方」
「プライバシーってのがあるからな。デリケートな話、本人の許可もなく関係ない人が他人に話せるか?お前だって過去に色々あったじゃないのか?」
「いや...まあ、確かにそうですけど」
「そう言うことだよ」
「なるほど。わかりました」
乙原は吐く杉原と介抱する古知丸に目をやった。
杉原はしんどそうだし、古知丸も完全に呆れている。しかし、なんだか楽しそうに見えた。過去に何かがあったからこそ、ああいうふうに人と一緒にいられることがどれだけうれしいことか。あの2人を見ている乙原は、それがわかるような気がした。
「でも、お酒はほどほどにして欲しいですね」
「そうだな。俺もずっと乙原とおんなじこと思ってる。無理して飲んでるわけだから、無理しない程度になって欲しいな」
「本人に言ってみたことあるんですか?」
「そらもちろんあるよ。杉原の酔いが覚めた時に一度だけ。可愛い後輩だし、健康に気を遣って欲しいからな」
「なんて返されたんですか?」
「やめれるならとっくにって言ってた」
「...そうですか」
何かを抱えている。それをお酒を飲むと言う手段で忘れようとしている。乙原はそんな風に思った。




