ポリ(警察官)とチャカ(銃)とブンヤ(新聞記者)とペンと
地方紙『県民タイムス』記者で警察クラブキャップの鍛冶俊作は、沈没を予知したネズミが船から逃げ出すように同僚が続々と大手紙へステップアップしていくのに遅れを取り、好ましくない経歴のせいもあって、劣悪な待遇の職場で馬齢を重ねている。その経歴に新人記者の剣城早苗が関心を持ち、鍛冶に付きまとうようになる。
早苗と同期入社で唯一の手下、栗坂と共に、鍛冶はライバル各社との取材、報道合戦に明け暮れる。会社の指名で、役立たずながら早苗が応援に入る。早苗は、かつて鍛冶が暴いたまま尻切れトンボ状態になっている、警察官が貸与される拳銃にまつわる不祥事の企画記事に関心を示す。鍛冶の手柄話を聴きたがる。自身の打ち明け話もする。
そんな中、早苗が市政ネタでスクープを放つ。しかし、市役所は鍛冶や早苗が所属する社会部ではなく、部長同士が犬猿の仲の政経部のテリトリーだ。早苗は両部の醜いセクショナリズムと上層部の権力抗争に巻き込まれ、鍛冶の援護もむなしくネタをつぶされる。それだけではない。社会部長より一つ職位を上げた政経部長の意により、市政、県政両記者クラブを混乱させた懲罰として不当な異動命令が下される。
一切の非は早苗にはない。政経部の縄張りを破ってもいない。ネタをつかんだ時点で市政クラブキャップに相談を図り、原稿を見せ指示を仰いでいる。政経部長の昇格を阻止するために社会部長が早苗の記事と名前を利用したことが、裏目に出たのだ。
失意の果て会社を辞め家族の待つ東京に帰る選択に傾いていた早苗の心の振り子を揺り戻したのは、鍛冶だった。鍛冶は生涯そのことを悔やまなければならない。異動先の早苗を危険にさらしてしまう。早苗は重大な犯罪被害に見舞われる。鍛冶の目の前で凶弾に倒れる。それはまるで、鍛冶がかつて書きなぐったことに対する銃器によるあだ討ちか腹いせのようでもあった。
記者として仕事を全うするために、早苗は撃たれた。鍛冶は事件取材のベテランだというのに、しかも早苗のすぐそばに付いていたというのに被弾を防げなかった。早苗を守れなかった。同僚や他メディアが、鍛冶の落ち度を批判する。狭あいな功名心が早苗を追い詰めたのだと糾弾する。
ところが、事件で警察は大きなミスを犯していた。警察は警察で、因縁のセクショナリズムに支配されていた。40年かかる大事業に失敗し、世代が断絶してしまったのだ。
早苗と同期入社で唯一の手下、栗坂と共に、鍛冶はライバル各社との取材、報道合戦に明け暮れる。会社の指名で、役立たずながら早苗が応援に入る。早苗は、かつて鍛冶が暴いたまま尻切れトンボ状態になっている、警察官が貸与される拳銃にまつわる不祥事の企画記事に関心を示す。鍛冶の手柄話を聴きたがる。自身の打ち明け話もする。
そんな中、早苗が市政ネタでスクープを放つ。しかし、市役所は鍛冶や早苗が所属する社会部ではなく、部長同士が犬猿の仲の政経部のテリトリーだ。早苗は両部の醜いセクショナリズムと上層部の権力抗争に巻き込まれ、鍛冶の援護もむなしくネタをつぶされる。それだけではない。社会部長より一つ職位を上げた政経部長の意により、市政、県政両記者クラブを混乱させた懲罰として不当な異動命令が下される。
一切の非は早苗にはない。政経部の縄張りを破ってもいない。ネタをつかんだ時点で市政クラブキャップに相談を図り、原稿を見せ指示を仰いでいる。政経部長の昇格を阻止するために社会部長が早苗の記事と名前を利用したことが、裏目に出たのだ。
失意の果て会社を辞め家族の待つ東京に帰る選択に傾いていた早苗の心の振り子を揺り戻したのは、鍛冶だった。鍛冶は生涯そのことを悔やまなければならない。異動先の早苗を危険にさらしてしまう。早苗は重大な犯罪被害に見舞われる。鍛冶の目の前で凶弾に倒れる。それはまるで、鍛冶がかつて書きなぐったことに対する銃器によるあだ討ちか腹いせのようでもあった。
記者として仕事を全うするために、早苗は撃たれた。鍛冶は事件取材のベテランだというのに、しかも早苗のすぐそばに付いていたというのに被弾を防げなかった。早苗を守れなかった。同僚や他メディアが、鍛冶の落ち度を批判する。狭あいな功名心が早苗を追い詰めたのだと糾弾する。
ところが、事件で警察は大きなミスを犯していた。警察は警察で、因縁のセクショナリズムに支配されていた。40年かかる大事業に失敗し、世代が断絶してしまったのだ。
序 / 一 午睡(シエスタ)
2022/08/01 12:51
(改)
二 応援
2022/08/01 16:51
(改)
三 任務
2022/08/04 22:37
(改)
四 動機
2022/08/07 21:22
(改)
五 供述
2022/08/10 09:54
(改)
六 尊厳
2022/08/13 00:07
(改)
七 放送
2022/08/18 00:38
(改)
八 柳眉
2022/08/21 16:40
(改)
九 詐称
2022/08/24 04:10
(改)
十 用語
2022/08/28 00:00
(改)
十一 紋章(ワッペン)
2022/09/01 00:00
(改)
十二 利権
2022/09/05 00:00
(改)
十三 功罪
2022/09/09 00:00
(改)
十四 限界(リミット)
2022/09/16 06:53
(改)
十五 定番
2022/09/18 00:00
(改)
十六 老練
2022/09/24 00:00
(改)
十七 挑発
2022/10/01 00:00
(改)
十八 初報
2022/10/11 00:00
(改)
十九 罰則(ペナルティ)
2022/10/20 00:00
(改)
二十 筆致
2022/10/29 00:00
(改)
二十一 猟犬
2022/11/07 00:00
(改)
二十二 決壊
2022/11/17 00:00
(改)
二十三 軟禁
2022/11/27 00:00
(改)
二十四 統制(コントロール)
2022/12/07 00:00
(改)
二十五 生贄(スケープゴート)
2022/12/17 00:00
(改)
二十六 鋭敏
2022/12/27 00:00
(改)
二十七 性差(ジェンダー)
2023/01/06 00:00
(改)
二十八 本能
2023/01/16 00:00
(改)
二十九 焦燥
2023/01/26 00:00
(改)
三十 交渉(ネゴシエーション)
2023/02/05 00:00
(改)
三十一 退避
2023/02/15 00:00
(改)
三十二 足跡
2023/02/25 00:00
(改)
三十三 閃光
2023/03/07 00:00
(改)
三十四 丸腰
2023/03/17 00:00
(改)
三十五 身内
2023/03/27 00:00
(改)
三十六 先達
2023/04/06 00:00
(改)
三十七 掌中
2023/04/16 00:00
(改)
三十八 総括
2023/04/26 00:00
(改)
三十九 使命
2023/05/06 00:00
(改)
四十 孤立
2023/05/16 00:00
(改)
四十一 救済
2023/05/26 00:00
(改)
四十二 血筋
2023/06/04 00:00
(改)
四十三 瑕疵
2023/06/12 00:00
(改)
四十四 定石(セオリー)
2023/06/19 00:00
(改)
四十五 排除
2023/06/25 00:00
(改)
四十六 保身
2023/06/30 00:00
(改)
四十七 絶縁
2023/07/04 00:00
(改)
四十八 連載
2023/07/07 00:00
(改)
四十九 客人
2023/07/08 14:00
(改)
五十 画餅
2023/07/09 15:00
(改)
五十一 放棄
2023/07/10 16:00
(改)
五十二 迷信
2023/07/11 17:00
(改)
五十三 士気
2023/07/12 18:00
(改)
五十四 称号
2023/07/13 19:00
(改)
五十五 欄干
2023/07/14 20:00
(改)
五十六 周期(サイクル)
2023/07/15 21:00
(改)
五十七 面影
2023/07/16 22:00
(改)
五十八 軌道 / 主な登場人物、関連公式データ
2023/07/17 23:00