第593話 疲れたあああああーーーーー!
嫁がクッソ高い料理とデザートを注文したことに憤慨している旦那さん達ですが、よく考えたら店長であるボクが思いっきりバラしてしまったので、このままじゃマダム達が怒られてしまうと思って弁護してあげることにした。
「ちょっと待った!ミルミちゃんのお母さん達が高級料理を注文したのには、ちゃんとした理由があるのですよ」
それを聞いても旦那さん達は訝しい目で子供店長を見ているだけだった。
「贅沢した理由だと?」
「美味いもんが食いたかっただけだろ!」
「違うのですよ!いや、美味しい料理に興味があったのは事実でしょう。ああ、えーと、料理を注文する少し前の話なのですけど、マダム達は室内を涼しくする魔道具を買おうとしたのです。しかしまだ生産が追い付いてない状態だから、『クーラー』の完成待ちという話になったのです」
「ほほう、その魔道具はクーラーという名前なのか」
本当はトイレの話から始まったんだけど、旦那さん達はまだ便器くんを知らないから話を前後させました。
「ぶっちゃけますと、クーラーの宣伝という理由もあって商業ギルドには最優先でお売りしようと思ってますが、しかし問題はその次です!まだ誰も持ってないすごい魔道具ですし、こんなのみんな欲しいに決まってるじゃないですか?」
すごく興味があるのでしょう。みんなボクの言葉に注目しております。
「もちろん商品を求める全員に売ってあげたいのですが、簡単に作れるような魔道具じゃないので順番待ちになってしまうのはもうしょうがありません。ただもし皆さんがボクの立場だったら、お世話になってる人や常連さん、あとはやっぱたくさん買ってくれたお客さんを優先してあげたいな~とか考えたりしません?」
「・・・まあ、そう考えるのが普通だわな」
なんでボクはここまで必死にマダム達の弁護をしているのだろう?
まあでもごちゃごちゃ話してるうちに説得力が出てきたかも。
「すなわちまだ正式オープン前だから、人情が入り込む隙があるとマダム達は考えたわけです。でもたしかに高い料理やデザートまで注文してくれたからマダム達の顔を覚えましたし、ミルミちゃんなんて名前まで覚えてしまいましたから、まあ、ボクの負けですね!ここまでされたら優先順位を上げざるを得ませんよ」
ここで『ふ~、ヤレヤレだぜ』って感じの外人っぽいジェスチャーをする。
「そうか、なるほど!子供店長と仲良くなってクーラーを手に入れるとは、あいつもなかなかやるじゃないか!」
「フム、それなら褒めてやるしかないだろうな」
「まだ実際に買えたわけじゃないけどな!」
「だったら俺達もランゴランドンを食うしかないだろ!」
「お前が食いたいだけじゃねえか!まあでも確かに興味はある」
とりあえず薬を買うのは夕食をいただいてからにしようってことでみんなテーブルに着いたのですが、今の会話を聞いていた人達が『ここは攻め時』と考えたようで、ステーキセットやランゴランドンセットの注文がガンガン入ってます!
ちなみに職員さん達の家族もたくさん来てるからほぼ満席です。
キャパオーバー寸前ですがギリ耐えました!
チリンチリーン
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
たった今キャパを超えました。
「ピーーーンチ!クーヤちゃん、席が足りない!」
「くっ、こうなったらへそくりを出すしかありませんね・・・」
「なんか秘策があるの?」
一昨日来たおっさん職員の一人が10人くらい連れて来たのですが、どうせどこかで使うと思って余分に買ってあったテーブル二つをパンダちゃんの近くに出した。
こっちは少し安物で色も違うのですが、もう今日はしょうがないです。
するとロコ姉ちゃんもハムちゃんからテーブルを一つ出してくれたので、これでなんとか耐えられそうです。
しかし店を持ってるボクだけじゃなく、ロコ姉ちゃんまで予備のテーブルや椅子を買ってあるとか、どこにでもくつろぎ空間を作りまくるボク達らしいですよね!
目の前にパンダちゃんがいるテーブルなので、『そっちがよかった!』って向こうの人達に羨ましがられてます。
なんかもう喫茶の拡張をするしかないような雰囲気だし、パンダちゃんテーブルを作ってもいいかもしれませんな。
「えーと、トイレってどこにあるのかしら?」
その一言を聞き、おっさん職員3人の口端が上がった。内緒にしてたのかな?
あ、トイレを探してるのって、眼鏡美人の受付嬢じゃないですか。
「トイレは此方でございます!二つありますので、もう1名様ご利用できますよ」
ルピスお姉ちゃんがトイレに案内してくれました。
他に手を上げる人はいなかったけど、戻ってきたらフィーバーするでしょうな。
―――――10分経過。
「なんて素晴らしいトイレなの!!」
受付嬢が一人で大興奮してるので、他の人達が『なにを騒いでるん?』っ顔で見てますね。
「誰かトイレ行きたい人いない!?本当に凄いから絶対行った方がいいよ!」
「おトイレが??」
「もう、すっっっごくビックリするから!」
「そこまで言うなら行ってみるか~」
というわけで、恒例のトイレフィーバーに突入しました。
まだトイレに行きたいってほどじゃない人もどんどん入っていってますが、二つしかないので限界寸前で長蛇の列になるより良かったかも。
しかしこうも人気だと、二つじゃ足りないような気がしてきました。あと二つくらい追加した方がいいのかなあ?でも工事が大変だから頼みにくいんだよな~。
でも喫茶を拡張すると店に長時間滞在する人も増えるってことだから、これは本当に必要かもしれない。パンダ工房みたいにちゃんと正規の金額で依頼しよっと。
あ~、もちろんお客さん全員が最強トイレを欲しがったので、まだ会社は建造中だって説明し、便器屋さん情報は常連さんに真っ先に教えるって言っておきました。
まあそんなこんなで夕食タイムも終わり、コーヒーやケーキでまったりする人もいますが薬を買う人もボチボチ現れ始めました。
まとめて説明すれば1回で済むのですが、正式オープンしたら毎日こんな感じになるだろうし薬屋さんの宿命ですよね。何度も何度もふわっとお姉さんの説明する声が聞こえてきます。がんばれ~!
ただお客さん全員が閉店まで粘ってるわけでもなく、ボチボチと帰り始めたのですが、ほぼ全員ハンバーガーやメメトンカツサンドを買っていきますね。
おっさん職員がお土産に買って帰った30個のハンバーガーが大好評だったのでしょう。みんなこれ狙いだった感じです。
「「ありがとうございましたーーーーー!」」
チリンチリーン
お客さんが帰ってく時の音だろうと思っていたのですが、黒いのが見えたから視線を向けると、知ってる人がこっちに歩いて来ました。
「あーーーーーっ!悪そうなお兄さんじゃないですか!」
「よう!メチャクチャ繁盛してるじゃねえか!」
「ありがたいことにバカ売れです!ハンバーガーとメメトンカツサンドもすごい勢いで売れてますよ♪」
「・・・なんか一人一人が5個とか10個とか買ってねえか?」
「特別オープンだからまとめ買いしてるんだと思います。正式オープンまで間が空きますからね~」
「なるほど、そういうことか。大量に作っておいてよかったぜ・・・」
まだ西区のハンバーガー屋さんはオープン前なんだけど、これだけ売れまくってるんだから自信になったんじゃないかな?
ある意味ここはハンバーガー屋さん2号店だから、クーヤちゃん薬局で売れても悪そうなお兄さんの勝利なのだ!
「薬もガンガン売れてるみたいだし、喫茶も楽しんでもらえてるようだし、この感じだと毎日忙しくなりそうだな」
「商業ギルドだけでこれですから、正式オープンが怖いです!」
「まったく人が来ないよりはいいだろ。大変なくらいでいいんだよ」
「まあそうなんですけどね~!」
こうして閉店時間の12時となり、最後の一人をお見送りしました。
「料理も美味いし皆本当に喜んでいた!正式オープンが決まったら商業ギルドに知らせてくれ。またコーヒーを飲みに来る」
「了解なのです。でもその前にハンバーガー屋さんが西区でオープンするから、そっちもお知らせするのです!」
「おお、ハンバーガー屋も楽しみだな!ではそろそろ失礼する」
「「ありがとうございましたーーーーー!」」
一昨日のおっさん職員が最後まで残ってくれたんだけど、たぶんこの人が来た中で一番お偉いさんなんだと思う。
とにかく、これでようやく閉店です!
たった一日店を開いただけなのに、こんなに疲れるもんなんですね~。
・・・さてと、お腹が空いたけど帰る前に軽くお疲れ様会をしよう!




