第592話 仕事終わりの団体様が襲来!
子連れマダム達とお昼に来店した二家族が帰宅し、ようやくボク達も一休みできたわけですが、むしろここからが本番なので気合を入れ直した。
マダム達との会話で優遇システムを決めたりしたから、その内容をノートにまとめ、料理の注文が入るタイミングでお客さんに説明しようと思ってます。
高い料理を注文しないとクーラーがすぐ手に入らないってのはちょっと脅しに近いような気もするけど、優遇するポイントって結局上客かどうかですしね~。
仲間達の家族、パンダ工房、ブロディ工房、黒眼鏡屋敷、あとシェミールとニポポ家具店とムギマル建設なんかにも声を掛けて、もう何回か特別オープンしてもいいかもしれませんね。
特にニポポ家具店の揉み手店長なんかは、儲けたお金を派手に使ってクーラーと便器くん獲得に動くハズなのです!
っていうか面白そうだから絶対呼びたいですな~。
懇意にしてる店にはお友達価格でクーラーを売ってあげるつもりだから、仲の良い知り合い相手に儲けようとは思ってませんが、正式オープン前に招待して楽しんでもらいたいのですよ。
ボクのお店ってだけでメッチャ気になっているでしょうから。
クーヤちゃん薬局の本日の閉店時間は12時です。この世界では日本の朝6時が0時となっていてしかも1日20時間なので、日本の1時間がこっちでは1時間12分となり、こっちの12時は日本時間の20時24分だから正直ややこしいです。
簡単に説明すると、地球は1日24時間だから60分×24で1440分。
こっちは1日20時間だから1時間が72分となり、72分×20で1440分となるのです。
しかも日本の朝6時がこっちでは0時。
もう慣れたけど本当にややこしいんですよ!!誰にも話せないから時計を見比べながら自力で解明したけど、見切るまで大変でしたよ・・・。
まあレミお姉ちゃんが時計を作ってくれたから比べることが出来たんだけど、ボクは彼女ほど天才じゃないのです!
今までは『1時間は1時間10分くらい』ってふわっと考えてたけど、労働時間を考えたらふわっとじゃダメだと思いまして。
店長の責任は重いのだ。
とまあ色々考えてたら、商業ギルドが閉まる10時になってしまいました。
さあ、地獄の時間が始まりますぞ!
「店長、10時だよ!」
「狼狽えるでない。『なるようになる』の心でどっしり構えるのです」
「テキトーじゃん!まあそれくらいの気持ちでいた方がいいか~」
「皿洗いは明日でいいんでしょ?それならたぶん大丈夫だよ」
「無限に食器が手に入るのがウチの強みなのですよ」
いや、無限ではないか。
でも一流の大きな食器屋さん1件分の食器があるから無敵なのだ。
「ウチの食器ってどこで仕入れたヤツなの?なんかすごく高そうな食器だよね」
「そういえば説明してませんでしたが、1000年前の古代の食器なのです。『クーヤちゃん薬局の誓い』をしたあの金貨と同級生ですぞ!」
「「ぶはッ!!」」
「メチャメチャ高級品じゃない!1枚でも割ったら大惨事なんですけど!」
「貴重な食器ではありますが、タダで手に入れたヤツだからそんなに緊張しなくていいですよ。できるだけ割らないよう気を付けてくれれば」
「子供のお客さんがコップを割っちゃうかも・・・」
「あ~、コップはその辺で買ったヤツだから割れても大丈夫です」
「コップは安物だったのか。それなら安心だ」
言われてみると、貴重な食器をお客さんに出すのはもったいなかったかな?
でもまあ食器なんか使ってなんぼですし。
大切な傘を汚したくなくて傘を広げずびしょ濡れになってたおじさんの話を本で読んだことがあるけど、それじゃ傘を買った意味が無いですからね。
食器なんていつかは壊れるモノなのだ。壊れるのを恐れて大事にしてたら、活躍の場をなくした食器達に怒られちゃいますぞ!
チリンチリーン
きっつあああああーーーーーーーーーー!
「「いらっしゃいませーーーーーーーーーーーーーーー!」」
入口までお出迎えに行くと、先行の数人が来たとかじゃなく、団体様がゾロゾロと店に入って来るところでした。
「おお!何でこんなに涼しいんだ!?」
「本当に涼しい!それに店内も可愛らしいわね♪」
「驚いただろ!?この店には室内を涼しくする魔道具が設置されているのだ!」
「なにそれ!?どこで買えるの?」
「この店で販売するらしいぞ!しかしまだ作ってる最中で売るほどの数が揃ってないらしいから、正式オープンまで待たねばならんがな」
どうやら、一昨日来たおっちゃん職員がここまで案内してくれたようです。
「あ、クーヤくん!商業ギルドの職員達を連れて来ま・・・うぇええええ!?そこに大きな動物がいる!!」
「大きな動物??・・・うおッ!何なんだそいつは!!」
「わあああああ~~~~~~~~~~~~~~~!」
タタタタタタッ
ウインズさんがボクに気付いて話し掛けてきましたが、隣にいたパンダちゃんを発見して流れが変わりました。
みんなこっちに駆け寄って来たので、サッと回避。
「クーヤちゃん薬局のマスコットキャラでもあるパンダちゃんです。パンダ工房の社長と似てますが別人です」
「別人?いや、どう見ても『人』じゃねえだろ!」
「置物・・・じゃないですよね?」
「ちゃんと生きてますよ。いや、召喚獣だから生きてるって言っていいか少し自信ないですけど」
「召喚獣か。確かに生きてると言っていいのか難しいな。出したり消したりできる生き物だと説明するしかないだろう」
「これって触っても大丈夫?」
「死を感じるような危険行為をされない限り大人しくするよう言ってありますから、ウチの動物たちはみんな温厚で可愛いですよ~」
「ほほう」
おっちゃん職員がパンダちゃんに触れてみた。
「モコモコのふわっふわだな!癖になる触り心地だ!」
「私も触ってみる!」
あ、この前商業ギルドで話した眼鏡美人の受付嬢じゃないですか。
「ほわあああああ~~~~~~~~~~!すごく気持ちいい!!」
「私も触るーーーーーーーーーー!」
「こんなのがいるとは、子供に人気が出そうな店だな!」
やっぱりこの場所にパンダちゃんを置いたのは正解でしたね。
いきなり『薬をヨコセー』って感じじゃなく、まずパンダちゃんでリラックスしてから買い物する流れだと、ボク達も落ち着いて対応できるのだ。
たぶん買い物が終わったお客さんも、みんなパンダちゃんを撫でてから店を出ていくような気がするから、『またパンダちゃんに会いに行こうかな』ってなるかもしれませんよね~。
可愛い動物は正義なのだ!
「さてと、俺はこの前薬を買ったからコーヒーとハンバーガーでくつろぐか」
「あ、そうそう!今回は突発イベントじゃないから新メニューを追加したのです」
「食い物か?」
「ステーキセットと、食後のデザートとしてケーキが食べられますよ」
「いいじゃないか!なら夕食はステーキだな!」
「おっと決断するにはまだ早いです。特別オープンってことで裏メニューもご用意しました!なんと高級店で注文すると2万ピリンとかする『ランゴランドン』を、特別価格の1万ピリンで食べることが出来ます!」
「「ランゴランドンだと!?」」
「そしてもう一つ、ミミリア王国どころかおそらくセルパト連邦でも食べることが出来ない最高級スイーツもご用意しました!ショートケーキくらいの大きさで2000ピリンしますけどね」
「た、高いな・・・。ランゴランドンは1万でも激安と言えるが、デザートに2000ピリンはちょっと勇気がいるぞ」
「朝ご来店した子供連れのマダム達が、どっちも注文してくれましたよ♪」
「子供連れの?」
「ミルミちゃんのお母さん達です」
「「ぶはッッ!」」
ボクと話してたおっちゃん職員ではなく、その後ろにいた職員数名が噴いた。
「ウチの嫁じゃないか!!1万の料理に2000ピリンのデザート・・・だと!?」
「待て!一緒にいたお母さん達って、絶対うちの嫁だろ!!」
「それならウチの家内もいたハズだ!」
「ってことは間違いなくあいつも一緒だよな・・・。許せん!こうなったら俺もランゴランドンを食うぞ!」
「「うわっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」
騒いでるこの4人って、子連れマダム達の旦那さんだったのか!
あの金遣いの荒いマダム達が嫁とか、可哀相だけど笑ってしまう。
ぷくくっ!いかん、堪えろ!




