第591話 ようやくマダム達が帰宅しました
外に出ることで本当の気温を知ったマダム達が、今度はクーラーが欲しくなって騒ぎ始めました。
でもクーヤちゃん薬局をオープンするってなったのはここ最近の話であり、商売をするなんて想定外だったわけで、残念ながら製作が間に合っておらず、まだお売りすることが出来ないのです。
店にクーラーが並んで見栄えが良くなったら正式オープンしようと考えていたのですが、完成した瞬間売っちゃってたらいつまで経ってもオープン出来ないので、数が揃うまでじっと我慢の時なのだ。
「クーラーはクーヤちゃん薬局の目玉商品の一つなのですが、まだ店内がスカスカなのを見ればわかると思いますけど製作が間に合ってないのです。魔道具に魔法を組み込むことが出来る天才職人達が一生懸命作ってるとこなので、正式オープンまでお待ちください!」
魔道具に氷魔法と風魔法を組み込んで魔石で発動させるって高度な技を使っているのですが、これって実はベレッタお姉ちゃんにしか出来ないことなのですよ。
なぜかというと、この時代の魔法使い達がルーン語を理解せず丸暗記で魔法を使ってるのが原因です。『呪文のこの部分がどういう意味を持つか』ってのが分かってないと、複数の魔法を組み込んで発動させるなんて芸当は普通に無理なのです。
そんなベレッタお姉ちゃんにしても、共通語をルーン語に変換する魔道具を使ったりしてるから、まずはそこからという敷居の高さなのだ。
弟子のナナお姉ちゃんとミルクお姉ちゃんが育てば、ベレッタお姉ちゃんのような魔道具職人になれるかもしれませんが、まだ入門したばかりなので全然師匠の足もとにも及んでません。これからの成長に期待なのです!
それでも光魔法を発動する魔道具とかは存在してるので、この時代の魔法使いも頑張ってはいるのですよ。呪文の意味を理解せずに作ったのですから、逆にすごいとも言えますね。
「くっ、やっぱりこれも最新式なのね・・・。でも魔道具まで販売するなんて本当にすごいお店ね!」
「予約は出来ないのかしら?」
「これほどの魔道具だから当然関係者全員が欲しがってますし、店長パワーをもってしても職人達と話し合わないと決められませんね~。でも高い薬を買ってくれて高級料理まで注文してくれた皆さんを優遇したいとは思ってます」
「「おおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!」」
とりあえずマダム達をテーブルに戻らせてから、クーラーの大きさによる適用畳数の説明、そしておおよその値段まで教えてあげた。
子連れマダム以外にも二家族いるわけですが、ボクが高級料理を注文してくれた人を優遇するとか言ったので、チョコレートアイスケーキを注文してくれました。
これはもう優遇リストに入れるしかないでしょうなあ。
「仕事終わりに来る人達はすぐ店内の涼しさに気付くハズですから、間違いなくみんな欲しがりますよね~。数にも限りがありますから、オープン当日に売ってあげられるとしてもリビング用の1台分ってとこかな?」
「1台か~!でもこんなの絶対みんな欲しがるわよね。それでもリビングが涼しくなるのはありがたいわ~♪」
「大型までは必要ないとしても中型は欲しいわね」
「私も中型かなって考えてた!大型だと魔石代が厳しいもんね」
「オープンしたらいきなり争奪戦になるでしょうし、まずはリビングに中型クーラーを設置して、他の部屋に設置する小型クーラーのために次の入荷を狙って動くのがベストかしら?」
「全部屋を涼しくするために通い続けるわよ!」
「「オーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」
なるほどなるほど。
小型が一番売れると思ってたけど、商業ギルドの職員クラスの家ともなるとリビングも広いでしょうから、中型を設置するのがピッタリなのかもしれない。
魔道具職人達に伝えて、お金持ち用の中型クーラーをいっぱい作ってもらった方が良さそうですね。
ちなみにあの二人はですね、特別オープンってことで居住スペースで仕事しております。マダム達に見られたら大変な騒ぎになるところでした!
とまあ、クーラー騒ぎもあって子連れマダム達はかなり粘っていましたが、日本時間の14時過ぎくらいにようやく家に帰る決断を下しました。
「あ、夕食のハンバーガーを買わなきゃ!」
「そういえばメメトンカツサンドが気になってたのよ」
「ハンバーガーも美味しかったし両方買ってくしかないわね」
「せっかくだし隣の奥様にもご馳走してあげようかしら?」
「良いわね!絶対喜んでくれるわ♪」
無敵のマダム達は最後まで無敵で、全員10個くらい購入したんですけど?
想定外まで見切って、悪そうなお兄さんが大量に用意してくれて助かったのです。
っていうか夕食にハンバーガーなのですね。それもまあアリなのかな?
「正式オープンの日が決まったら商業ギルドにお知らせしますね。あと店の前に大きな看板を出すので、それで街の人達にお知らせする予定です」
「へーーーーー!チェックしに来るしかないわね!」
「すごく楽しみ♪」
「でもオープン当日はメチャメチャ混みそうね~」
「最初にテーブルを二つ確保すれば私達の勝ちよ!」
「クーラーはどうするのよ?」
「テーブルの横に置いとく?邪魔かしら?」
「旦那に家まで持ち帰ってもらってもいいし」
「「それだ!!」」
どうやらマダム達は早くクーラーを設置したいって感じじゃなく、お客さんが大勢来て騒がしくなるのをテーブルから高みの見物したいのかもしれません。
たぶんアレですな?
まったり紅茶を飲みながら、動物やトイレやクーラーで驚くお客さん達を、先に体験したことによる上から目線で微笑ましく見守るつもりなのだ。
わかります!ボク達も『さあ驚くぞー』って思いながら楽しんでますもん。
驚くのは最初の1回だけですし、たしかにこれは見所満載ですね。
「「ありがとうございましたーーーーーーーーーー!」」
というわけで、クーヤちゃん薬局の常連客になってくれそうな子連れマダム達がようやく家に帰りました。
薬だけじゃなくランゴランドンやチョコアイスまで注文してくれたし、ハンバーガーもいっぱい買ってってくれるという最高のお客さんでした!
ずっとあのマダム達の相手をしてたから、ちょっと疲れましたけどね~。
ちなみにボク達も、タイミングをみて居住スペースでハンバーガー&メメトンカツサンドを食べました。皿洗いとかしてたあの時間帯ですね。
お手軽にパクッといけるのがいいですよね~。
正式オープンしたら、昼食用として朝買ってく人が結構いそうな予感がしますよ。
そしてお昼に来店した二家族も、コーヒーを三杯くらい飲んで満足したようで帰宅しました。
すべてのお客さんがいなくなり、ボク達も一休みです。
「ふ~~~、マダム達があんなに粘るとは思わなかった」
「いやほんと!この店ってすごく居心地がいいのかも?」
「トイレの話をした時に、店長が『常連さんには真っ先にお伝えしますよ』って言ったせいかも」
「「あ~~~~~~~~~~!」」
「なるほど!何度も来店してくれれば十分だったのですが」
「でも効果はあったんじゃない?マダム達の顔覚えたもん!」
「たしかに!あとミルミちゃんも覚えた!」
「ミルミちゃんは危険だよ!本当に笑い転げそうになったし!」
「「あーっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」
アレはヤバかったよね~。話を聞いてた全員の腹筋が破壊されました!
「さてと、本番はここからですぞ?仕事が終わったギルド職員さん達が大勢押し寄せて来るのです!」
「ギルド職員だけならいいんだけど、たぶん家族も連れて来るよね~」
「狙いは薬とハンバーガーだと思うけど、時間的にステーキとランゴランドンの注文が入りまくると思う」
「だろうな。下手したらテーブルが足りないかも・・・」
「な、なんですとーーーーー!?」
言われてみると、職員さん達の家族まで押し寄せたらピンチかもしれない!
なんか思った以上に喫茶が大人気で、これは想定外なのです。
ぐぬぬぬ、今日はもうしょうがないけど喫茶を拡張した方がいいのかも・・・。




