第572話 薬局に悪そうなお兄さんが現れた
無断欠勤でクビになるため、ルピスお姉ちゃんとエレナお姉ちゃんが勇ましい顔でプルクックミィに向かいました。
まあ、くつろぎタイムのあと普通に実家へ帰宅したから、勇ましい顔ってのはボクの想像でしかないわけですが。
ちなみにキャルねえは遅番だから出動するのは午後からですね。
昨日クビ会議をしていたのですが、早番の2人はキャルねえがクビになるための作戦を使用せずに、ちゃんと残しておくってことで話がまとまったみたいです。
無事クビになったらボクへ報告しに来ることになってるから、今日はクーヤちゃん薬局で待機し、キャルねえと合流したら家具を買いに行く予定です。
そして他の人達ですが、まだパンダ工房に頼んだ柱が完成してないから桟橋を作りに行くのは明日になるらしく、今日は空飛ぶ島でアイリスお姉ちゃんの『黄金の槍』を完成させるみたいです。
チャムねえにとって、ヒヒイロカネと違ってオリハルコンはそこまで難易度が高くないらしく、たぶん今日中に完成するだろうとのこと。
というわけで、チャムねえ、レオナねえ、アイリスお姉ちゃん、シーラお姉ちゃん、リズお姉ちゃんの5名は空飛ぶ島へ。
魔剣持ち2名が興味あるのは納得なのですが、黄金の剣を所持しているシーラお姉ちゃんも黄金の槍には興味津々だったみたいです。
そしてチャムねえがいなくなってしまうからクーラーの製作はお休みで、いい機会だからとパンダ工房とジャーキー工房に最強便器くんを設置するため、魔法使い達とレミお姉ちゃんはトイレ工事をすることになりました。
実は昨日ベイダーさんと色々話し合った時に最新式トイレの話もしまして、正規料金を払うからすぐにでも設置してほしいと言われたのですよ。
すなわち今回はサービス的なやつじゃなく、便器屋さんとしての初めての仕事ということになります。会社はまだ無いんですけどね!
空飛ぶ島に行くにはドラちゃんが必要不可欠だから、ボクとタマねえとプリン姉ちゃんとロコ姉ちゃんは、レオナねえ達と一緒にドラちゃん乗り場へ向かいました。
そして5人を空に送り出してから、クビになった三馬鹿従業員を迎え入れるためクーヤちゃん薬局に移動。
薬局喫茶のテーブルでまったりしてると、早速ルピスお姉ちゃんとエレナお姉ちゃんが店にやって来ました。
「どうでしたか!?」
「フハハハハ!豪快にクビにされてきたぜ!」
「上手くいったね♪」
「詳しく!」
「昨日サボったくせに、エレナと2人で高笑いしながらプルクックミィに入っていったんだけどさ、当然ながら顔を真っ赤にしたハゲ店長に怒鳴られたの」
「でもね、『お前らクビだ!』の一言が無かったから、逆切れして給料の賃上げを要求したんだ」
「今の給料じゃやる気が出ないってブーブー言ってたら、『だったら出ていけ!お前らはクビだ!』って怒鳴られてミッションコンプリート!」
「悲しかったけどしょうがないよね」
逆切れで賃上げ要求とは考えましたな。新人と給料がほとんど変わらないって話だから、2人の言うことにも一理あります。まったく問題ないでしょう。
「給料が少ないからモチベーションが上がらないってのは事実でしょうし、3人同時にやめたことで店長が苦労して、『ちょっと給料が少なすぎたか』と考え直すかもしれないから、残った従業員の救済になるかもしれませんね」
「そうだといいけど・・・。でも私達が抜けると大変だと思うから、彼女達には悪いことしちゃったな~」
「まだキャルがどうなるかわからないけど、無断欠勤が許されるとは思えないから大丈夫だよね?」
「余裕っしょ!キャルは普段から結構反抗的だし」
なかなか口が悪い人ですからね。高圧的なタイプの店長が無断欠勤の従業員に下手に出るとは思えないし、派手に言い争ってクビが濃厚でしょう。
「クーヤ、バケツチョコ出して!あと鉄板とバール」
「にゃははは!タマねえはチョコ狙いでしたか」
タマねえが昨日のように鉄板の上にバケツチョコを置いて、バールでしばき倒して食べやすいサイズのチョコを量産しました。
そういえばアイテム召喚したのってお昼過ぎくらいだっけか。
忘れないようにしなきゃな~。
「そうだ!もうクーヤちゃん薬局の従業員なわけですし、コーヒーと紅茶くらい作れるようにならなきゃですね」
「難しい?」
「最初はなんじゃこりゃって感じですが、3回くらいやれば覚えると思います」
「やってみる!」
「注文していいの?」
「どうぞ!」
「じゃあモカ!」
「ブルーマウンテン」
「私はアールグレイをお願いします」
ルーキーには荷が重いのでボクが注文の品をメモって、ルピスお姉ちゃんとエレナお姉ちゃんをカウンターに連れていき、まずはポットの説明から始めました。
まずお湯がどれくらい入ってるか確認して、少なかったら水を入れると説明したのですが、お湯が無くなって沸かしてる最中でもお客さんを待たせないようポットを2台置いてあるので、2人同時にコーヒーを作ってもらう。
ドリップパックのコーヒーだから、カップにセットしてお湯を注ぐだけです。
でも初心者には開け方からすでに意味不明ですからね。
出来上がったコーヒーを、プリンお姉ちゃんとタマねえとロコ姉ちゃんのテーブルまで運んでもらい、次は紅茶を作ってもらいます。
全員分の飲み物ができたので、ボクもタマねえの隣の席に戻りました。
「たしかに『なんじゃこりゃ』だったけど、すでにお湯も沸いてるしメチャメチャ簡単だね!」
「うん!お湯の残量にだけ気を付ければいい感じかな?」
「ポットを持ってキッチンまで水を入れに行くのが面倒なくらいですね。あとはウェイトレスの仕事と変わらないと思います。ウチはお客さんとワイワイする感じの飲食店だから、気張らず楽にやっていいですよ」
「気楽にやれるのはいいかも♪」
「プルクックミィと全然違うね!」
こうして今日もいつもの様にまったりくつろいでいたのですが、思わぬお客さんが来てほんわかした空気が吹き飛びました。
ガチャッ
「おーい、クーヤはいるか!?」
この声は!!
とててててててて
「悪そうなお兄さんじゃないですか!」
「お、いたいた」
「わざわざクーヤちゃん薬局にまで来るとは、どうかしましたか?」
「海藻を採ってきたから返そうと思ってな。あとはミートチョッパーを店まで運んで来てくれた礼だ。アイツがあればオープンは目前だ。感謝するぞ!」
「おお、ミートチョッパーが完成して良かったですね♪海藻なんていつでもよかったのに」
「昨日ラグナスレインの屋敷で毒見試食会をしたんだが、あの2種類の海藻以外にも食える海藻が見つかったんで、お前らにも試食してもらおうと思ってな」
「すごいじゃないですか!じゃあとりあえずテーブルに移動しましょう」
悪そうなお兄さんをテーブルの方に連れていくと、新入り2人が驚いて目を大きくさせた。
「なんか凄い恰好の人が・・・、えーと、何者ですか?」
「悪そうなお兄さんなのです」
「いや、悪そうなのは一目瞭然だけど」
「失礼ですね!こう見えてすごく良い人なんですよ!」
「店長が『悪そうなお兄さん』って言ったんじゃない!」
ああ言えばこう言う。ド素人めが!
「まあ簡単に説明しますと、ハンバーガー屋さんの店長その人です」
「「この人が店長なの!?」」
「おいクーヤ、こいつらは何者なんだ?」
「あとでもう一人来ますが、クーヤちゃん薬局の従業員達です」
「ほお!もう従業員を雇うとは手際が良いな」
これから何度も顔を合わすことになるだろうし、悪そうなお兄さんと従業員ABがササッと自己紹介しました。
「レオナ達はいないのか」
「黄金の槍を作りにラララ工房に行きました」
「おお、アイリスの槍か!そりゃ重要だな」
「それとレミお姉ちゃん&魔法使い達が、パンダ工房とジャーキー工房のトイレ工事に行きました」
「トイレ工事だと!?それは羨ましいぞ。ウチの屋敷も頼みたいんだが・・・」
「みんな忙しいですからね~。でも順番的に次はあのお屋敷だと思いますよ」
「まあ忙しいのは分かってるから無理にとは言わん」
魔法使い達はともかく、レミお姉ちゃんが忙しすぎるんですよね。
彼女を忙しくさせてる犯人はボクのような気もしますが。
「んじゃ最強の海藻サラダを作るからキッチンを貸してくれ。えーと、7人前作ればいい感じか?」
「前回毒見試食会をした2人も参加させるから9人前お願いします。・・・大丈夫なんですよね?」
「尊い犠牲はあったが、毒見試食会を無事突破した海藻だけ使うから大丈夫だ」
「「いや、尊い犠牲って何!?」」
ラグナスレインのお屋敷で一体何があったんだ!?




