第570話 クーヤちゃん薬局の誓い
「甘くて美味しいけど、なんか勝手に溶けて無くならない?」
「これさ、昨日食べた裏メニューに似てる気がする」
「あ、それだ!こっちは冷たくないけど」
タマねえがバケツチョコレートをちょうどいい大きさに叩き割ってくれて、それを従業員達と一緒に食べてるところなのですが、昨日食べたチョコレートアイスケーキと一緒だって気付いたみたいです。
そういえば、ホールケーキを買って溶かしたチョコをぶっかければ、簡単にチョコレートケーキが完成しますな。これはやってみるしかないでしょう!
「タマねえ、帰りにホールケーキを一つ買って来てください。まだ切ってない状態の丸くて大きいケーキです」
「ケーキ?」
「それに溶かしたチョコレートをぶっかけて魔法で冷やしてもらえば、一瞬でチョコレートケーキになるのですよ!」
「おおおおおーーーーーーーーーー!そんなの絶対やる!」
「あ、やっぱりたくさん買って来てください!お風呂の後のくつろぎタイムでマダム達にもご馳走しよう!」
「そんなの全員喜ぶに決まってる!ケーキはまかせて!」
ってことは、お風呂の後のソフトクリームはキャンセルかな?
甘いアイスを食べた後じゃインパクトが薄れますしね~。
「そうそう!ルピスお姉ちゃんにエレナお姉ちゃんにキャルねえ。大奥に部屋を借りるって話はどうなりました?」
「そういえばスッカリ忘れてた!どうしようか?」
「3人で借りるんだよね?」
「えーと?1人17000ピリンだっけか」
「大奥はいいぞ~!ソフトクリーム食べ放題だし、トイレは最強だし、しかも隣にハンバーガー屋。ウチらも住んでるから一緒に遊べる!」
ピコねえの話を聞くと魅力しかありませんな。
これでたったの17000ピリン!部屋が埋まってしまったら絶対後悔すると思う。
「とても魅力的ね。ただ一つだけ引っ掛かるのよ」
「なにが?」
「中央区に実家があって中央区で働くのに、西区に住むっていう意味不明さよ!」
うん。そう考えると頭おかしいですね。
「ド素人が!いや、しょうがないか、素人すぎて一番重要なとこに気付いてないんだもんな・・・。私からは言えないし」
「なに?その気になる言い方!まだ何か大きな秘密があるの?」
「あるんじゃよ。もし部屋が全部埋まっちゃったら誰も出ていかないから、後から部屋を借りるなんて不可能だと言っておく」
「絶対後悔するって言い方だね」
「今がチャンスってことか・・・」
スタジオ・モコティーが動き出したら、スタッフやら女優やらがすぐ隣の最強アパートに目を付けるに決まってるから、これが普通のアパートだったとしても争奪戦になるでしょうな。
「先に言っておきますが、クーヤちゃん薬局の仕事が終わったら毎日『女神の湯』に直行ってのが常識になりますよ?マダム達の中には中央区から毎日通ってる人だっていますからね。乗り物は貸し出してますけど」
「「中央区から毎日!?」」
「そこまでする理由があるってことじゃよ。もし『女神の湯』の入浴料が1000ピリンだとしても通い続けると思う」
「すなわち、お金を払うほどの価値があるってことか・・・」
「なんか部屋を借りないと損するような気持ちになってきた!」
「面白そうだし、あたしはすでに乗り気だぞ!」
部屋を借りるかどうかで3人が話し合いを始めたわけですが、その間にチョコレートを食べまくって満足したタマねえがギルドへ戻りました。
魔物が詰まったハムちゃんをギルドに連れて行ってるから、大量のケーキを持ち帰ることはできるハズです。
「子供店長、3人で部屋を借りることにしたぜ!」
「おお、それじゃお風呂の後、どの部屋に住むか決めましょう」
「ピコル達の隣の部屋でいいよ」
「会社側でいいの?」
「隣の建物から着替えを覗かれる心配はあるみたいだけど、大きな木が植えられてるからそこまで気にする必要ないってピコルが言ってたし」
「なるほど。じゃあ【203号室】で決まりですね!」
そうなると、家具を揃えたりする必要があるのか・・・。
ピコねえには支度金を渡したけど、可愛い従業員達にも10万ずつ渡しとくか~。
普通支度金なんかもらえないだろうけど、ピコねえの前例があるしな。
「あ、大事なことを忘れてました!実はクーヤちゃんの助手になると、古代の金貨が一枚もらえるのです」
「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」
「古代の金貨って、そこに入ってる10万するやつ?」
「その金貨です。助手1号のピコねえも当然持ってますよ」
「しまった!金貨は部屋だ。持ってくればよかった・・・」
「なにィ!?しょうがない助手ですね。まあ常に身に着けろとは言ってませんが」
「あれ結構重いんだって!」
ペカチョウを呼び出し、古代の金貨と巻物を取り出した。
そして従業員達に金貨を一枚ずつ手渡した。
「わああああ~~~~~!ピカピカ光ってるし明らかに本物の金貨だね!」
「なんて美しいのかしら・・・」
「重量感が素晴らしいな!こりゃ確かに10万するわ!」
「格好良いじゃろ!?」
とててててててて
住居スペースまで走っていき、助手4号と助手5号を連れて来た。
「いや、なぜこっちに連れて来られたんだ?」
「それって古代の金貨じゃない!もしかして買ったの?」
「えーとですね、クーヤちゃんの助手になると古代の金貨が一枚もらえるのです」
というわけで、虚無ふわコンビにも金貨を一枚ずつ手渡した。
「え?くれるの!?」
「やったーーーーーーーーーー!」
はしゃいでいる5人の助手を見て、ピコねえがニヤリと笑った。
「フハハハハハ!古代の金貨を受け取ったということは、あの儀式をしなければならないのだぞ?」
「なによ?その儀式って」
「少し前にピコねえとぺち子姉ちゃんとラン姉ちゃんもやった儀式なのですが、金貨を掲げて5人で簡単なセリフを叫ぶだけなのです」
「なんかハメられた気分なんだけど!」
「でもそれをやれば金貨が貰えるんでしょ?」
「面白そうだしやろうぜ!」
アイテム召喚した広い場所に5人を連れていき、向かい合わせで円になるように立たせた。
近くで仕事していたレミお姉ちゃんとロコ姉ちゃんを呼び寄せ、さっきペカチョウに出してもらった巻物を横に広げてもらう。
そこにはプリンお姉ちゃんの達筆で、例の文章が書かれていた。
ボクの指示で、5人が金貨を天に掲げる。
そして巻物に書かれた文章を大きな声で読み上げた。
「「我ら天に誓う!生まれた日は違えども、死す時は同じ日同じ時を願わん!」」
うおおおお!人数が増えても無駄にカッコイイ!
「ブラボーーーーーーーーーーーーーーー!!」
ワー パチパチパチパチパチパチパチパチ!
レミお姉ちゃん&ロコ姉ちゃん&ピコねえにもこの格好良さが伝わったみたいで、クーヤちゃん薬局に拍手喝采が巻き起こった。
「本当は『桃園の誓い』といって、花びらが舞散る場所でやると最高にカッコイイ伝説のシーンなのですが、クーヤちゃん薬局でやったので『クーヤちゃん薬局の誓い』と命名されました」
「よくわからんけど確かに格好良かった!」
「いや、チコリンはともかく、まだよく知らない3人と同じ日に死ぬの嫌なんですけど!」
「金貨を天に掲げる儀式は格好良かったけど、『クーヤちゃん薬局の誓い』ってネーミングが微妙すぎる!」
「うん。やるなら中央公園が良かった気がする!」
「ん~、『中央公園の誓い』も微妙じゃね?」
「贅沢言うな!うちらなんかジャーキー工房でやったから『ジャーキーの誓い』になったんだぞ!」
プハッ!
「「あーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」
このイベントやっぱおもろいな~!
目立つ場所に巻物を飾って、古代の金貨を買ったお客さん達に儀式をさせたら、すごく盛り上がる気がしません?
絶対思い出になるし、10万の金貨も売れるし、これは流行らせるしかあるまい!




