第569話 バケツ
ベイダーさんから配達の仕事を頼まれたので、ミートチョッパーを受け取ってペカチョウに預けた。
このマシーンの完成を首を長くして待ってた悪そうなお兄さんに届けるため、お土産の『鳥の燻製』と『燻製タマゴ』をジャーキー工房で購入してから、ハンバーガー屋さんに向かってアホ鳥を走らせる。
「今度はどこに向かってるん?」
「ハンバーガー屋さん。建築中の会社を挟んでるけど、大奥のお隣さんみたいなもんです」
「ハンバーガーってなに?」
「もうすぐオルガライドの名物料理となる食べ物です。安くて美味しいお手軽料理だから、みんなあの店には何度もお世話になると思いますよ」
「「へーーーーーーーーーーーーーーー!」」
ハンバーガー屋さんに到着。
アホ鳥から降りて、ゾロゾロと中に入っていく。
「こんにちはーーーーー!悪そうなお兄さんはいますか?」
女の子2人がレジ打ちの練習をしてたから、彼女達に聞いてみた。
クーラーが効いてて快適空間ですね。
「ガイアさんはお出掛け中だよ」
「あれ?いないのか~」
「部下を連れて海藻を採りに行ったの。毒見試食会もするって言ってたから、今日は帰って来ないかも」
「なんてこったー!お届け物をしに来たのに」
「それなら私達が預かっておくね」
「かなり重いから、カウンターに置いたら動かせなくなると思う。厨房の隅っこにでも置いておくので、中に入っていいですか?」
「そんなに重いの!?じゃあ仕事の邪魔にならない場所にお願い!」
「ふむふむ。では場所を指定してください」
厨房に入って従業員の女の子達と話し合い、使ってない台の上に乗せておくことにしました。
パンダ工房でミートチョッパーを使ったことがある子が何人かいて、それと同じ物が出てきたから『店長が喜ぶ!』と大騒ぎしていました。
カウンターの前に戻ると、ハンバーガーとメメトンカツサンドの試作品をいっぱいくれたので、店内に設置してあるベンチで食べてくことにしました。
「タダでくれたの!?」
「ボクくらいの紳士になると試作品がタダでもらえるのです。店がオープンするまでですけどね!」
「紳士だからというより、知り合いだからくれたんでしょ?」
「子供店長って本当に顔が広いよなーーーーー!」
「ハンバーガーとメメトンカツサンドをもらったのですが、もうすぐお昼だし二つくらいいけますよね?ちなみにボクは無理です」
「さっき色々食べたけど、それくらいなら何とかいけるかな?」
「新しい料理なら大丈夫!」
「むしろ楽しみ!」
「メメトンカツサンドってメッチャ美味しいやつだ!こんなん無限に食える!」
美味しいけど結構なボリュームだから有限だと思います。
包んでいた紙袋を開けて、ボク以外の全員がパクッといきました。
「味が濃くてメチャメチャ美味しい!!」
「お肉はジューシーなのにサクサクしてる!」
「この肉なんでこんなに柔らかいんだ!?」
「メメトンカツうめーーーーー!」
指定しなかったからハンバーガーを食べた人とメメトンカツサンドを食べた人がごちゃ混ぜですが、どっちも美味しいですからね~。
ピコねえはメメトンカツサンドの方が好きなのかも。
「どっちもクーヤちゃん薬局で売る予定なのです」
「本当に!?値段は?」
「230ピリンにしようか250ピリンにしようか悩んでます」
「この美味しさでその値段は安いね!」
「ここでなら200ピリンくらいで買えますから、西区まで歩いて買いに来た方が絶対お得なんだけど、たぶん爆売れすると思ってます」
「その安さだったら、ステーキを注文しないでこっち食うんじゃね?」
「ほとんどお持ち帰りでしょうから別に構いません。薬局喫茶のテーブルで食べるには飲み物を注文しないとダメってことにするつもりです」
「ハンバーガーと乳飲料で一服する人もいそうだね。まあ飲み物を注文してくれるなら十分かな?」
そもそも薬メインで稼ぐつもりですし。
薬局喫茶はマダム達に楽しんでもらえたらそれでいいのだ。
「ふ~、美味しかったーーーーー!」
「こんなの間違いなく売れまくると思う!」
「お手軽なのがいいよな!しかも美味くて大満足だ!」
わざわざ飲み物まで持って来てくれた従業員の女の子にお礼を言い、ミートチョッパーを託して店の外に出た。
来たばかりの頃はみんな借りてきた猫みたいだったけど、慣れてきて普通に会話できるようになったから、遊びに来やすくなりましたね~。
アホ鳥に乗り、クーヤちゃん薬局に向かって駆けていった。
ほとんど仕事って感じだったけど、美味しい物を食べまくったからお姉ちゃん達もご機嫌で、無断欠勤で明日クソミソに叱られることを忘れてそうですね。
そしてようやくクーヤちゃん薬局に帰って来たのですが、店の中に入るとなぜかタマねえがいました。
「あれ?タマねえって冒険者ギルドに行ってたんじゃ?」
「ここに戻らなきゃいけない予感がしたから、ちょっと抜け出してきた」
「なにそれーーーーー!もう別に何も起きないと思うけど・・・」
なんかタマねえが意味不明なこと言ってるけど、とりあえずみんなで薬局喫茶に移動してテーブルに着いた。
「ふ~、外出して喉が渇いたから乳飲料にしようかな?」
「私も冷たいヤツがいい!」
みんな冷たい飲み物を希望したので人数分のコップを出して乳飲料を注ぎ込み、ボクも自分の席に着いたところで、アイテム召喚をしてないことに気が付いた。
「アイテム召喚を忘れてました!」
「なにそれ?」
何が出ても大丈夫そうな広い場所まで移動し、床にぺたんと座る。
いつものように、タマねえも所定の位置に着きました。
『こいつら何してんだ?』と、従業員達が子供店長に注目する。
「新入りが見てるから店長に恥をかかせないようお願いします。アイテム召喚!」
ヴォン
眩しい光は出たけど、昼間だからまったく効きません。
そして光の中から姿を現したのは・・・。
「え?バケツ??」
大ハズレやんけ!
いや、でもバケツにしては蓋が付いてるな。
とにかく中を確かめないとストックする価値があるかわからないので、頑張って蓋を開けてみた。
パカッ
謎のバケツの中は真っ黒・・・というか、こげ茶色だった。
匂いを嗅いでみる。
クンクン
「・・・この匂いは!!」
「チョコレートの匂いがする!!」
マジか!このバケツの中って全部チョコレートなの!?
豪快で面白いけど、こんな風に流し込んだらメチャクチャ食べにくいでしょうが!
「なんかすごいのゲットしちゃった気がする」
「凄すぎる!だから戻らなきゃいけない予感がしたんだ!」
「ぶはッ!タマねえの野生の勘ってどうなってんのさ!?」
えーと?この場合どうするのが正解なんだろう?
チョコレートを叩き割ってからストックした方がいいような気もするし、毎回この状態からスタートするのもアリな気がする。
「タマねえ、この状態でストックした方がいいと思う?」
「このままやって」
「プロがそういうのなら、このままいきましょう」
タマねえの野生の勘を信じるのです。
「ストック!」
召喚獣リストの文字化けを『バケツチョコレート』に書き変えた。
「バケツチョコレート召喚!」
そして再び目の前にバケツチョコレートが現れた。
「クーヤ、鉄板とバール出して。叩き割る」
「豪快ですが素晴らしい作戦ですね!」
プロの指示通りに鉄板とバールを召喚すると、タマねえが鉄板の上にバケツを置き、躊躇なくバールで叩き割った。
一撃で滅びたバケツを排除し、食べやすい大きさにチョコレートを割っていく。
そして割れたチョコレートを箱に移し替えたあと、タマねえが一番大きな欠片を手に取り豪快にかぶりついた。
目をキラキラ輝かせ、すごく幸せそうな顔をしてます。
「まったく板チョコに引けを取ってない。大きいからこっちの圧勝!!」
「おおおおおーーーーーーーーーー!」
「ねえ、あの子達さっきから何してんの?」
「さあ?」
「なんかさっき光ってたよな?」
「おそらく当たりを引いた。おこぼれが来るぞ!」
お姉ちゃん達のテーブルに箱を持っていき、みんなにチョコの欠片を手に取ってもらう。そして一斉にパクッといった。
「「あまーーーーーーーーーーーーーーーい!」」
なんでバケツに入ってたのかは謎ですが、タマねえが目を輝かせるほどの美味しいチョコレートでした!
これはチョコレートブームの到来かな?
こうやってみんなで摘まむだけじゃなく、お菓子作りにも使えそうですね!




