ウイッチミステイク
「――――――君達は自分達の知識が、こんな隔離地域で得られるような情報が、本当に真実だと思っているのかな?」
窓から入って来た少年は、僕達に、いやまるで観客に語りかける役者のように話しかけていた。
頭には黒いシルクハット、着ている服はえんじ色のフォーマットスーツを着た、どこか紳士のような雰囲気を纏っている、鉄臭い血の臭いを漂わせる少年。
中肉中背でどこにでも良そうな善良な少年であったが、その瞳は空虚で、空っぽで、どことなく胸に大きな穴を開けているようなその少年は、僕達の前に現れていた。
「5%未満で生まれる異能者? 異能者のために作られた異能特区? 5つの系統、10個の属称? それが君達異能者が、ここと言うこの狭い土地に閉じ込められている理由が"それだけ"だとは思わないのかな?」
疑問を問いかけて、質問を投げかけて、答えを求めるようにして、シルクハットを被ったその少年はそう言いながら両方の腕を高く上げる。
「陰謀論? 悪巧み? 企て? 企み? そんな嘘偽りばかりの言葉で、ボクの言葉を否定しようとも構わないけれども、一旦は考えてみたらどうかな?
この世界が実はもう既に滅んでいるとか、異能者に対して精神攻撃をしているのかも知れないとか、そう言った事を考えてみたりしないかな?
……まっ、そんな事はどうでも良いんだけどね。本題は、こっち」
そう言いながら少年はトコトコと歩いて、猫屋敷蓮一郎が召喚した統率されていないドラゴン達の方を見ると腰から何かを取り出す。
それは、黒と白の二種の模様が特徴的なダーツであった。
「――――――さぁて、ほーい」
少年はダーツを数本取り出すとそのまま放り投げると、少年が投げたダーツがドラゴン達に突き刺さると、ドラゴン達が急に頭をこちらに向ける。
「世界は陰謀に満ち溢れている。現実は悪巧みを行い、企てや企みを図る人も普通に居る。それが現実。
実は伝説の鐘の管理システムに対してハッキングしたのだったり、生徒会長と猫屋敷蓮一郎との戦いのきっかけを左右しているのはこっちだったりするんだけれども、まぁ、そんなのはどうでも良いかな?」
サラッと、この前の久崎誠二郎が起こした鐘の事件と、今回僕達が巻き込まれた生徒会長と猫屋敷蓮一郎の事件の、2つの事件の黒幕が自分だと軽く流すように言う少年は、そのまま最初に現れたのと同じようにどこからともなくスーっと消えていた。
『ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
『ギャォォォォォォォ!』
『ギャァァァァッス!』
少年が消えると共に、ドラゴン達はジロリとこちらを睨み付けるとブレスを吐きながら向かって来ていた。
その様子は先程までの統率がとれていない、ただただ暴れまくっているだけのドラゴン達とは違って、どことなく束ねられている群として統率されてこちらに向かって来ていた。
「……おいおい。あのドラゴン、こちらに向かって来ていないか? それも郡単位で」
僕の言葉は、誰もが感じている事であった。
先程まではただただ暴れて乱暴しているばかりだったけれども、今では何か目的があってこちらに向かっているような、そんな印象を受けていた。
「燃えなさい!」
「……くら、え」
加賀見さんは火炎をドラゴンを放っていて、楓は虎の爪を硬くしてそのまま斬撃を放ってドラゴンの翼に斬りかかっていた。
「おい、猫屋敷蓮一郎!」
と、僕はそう言ってそのまま歩き出して猫屋敷蓮一郎の腕を掴んでいた。
「あのドラゴンを制御するすべはないのか? それか、あのドラゴンを別の場所に帰還させる力はないのか?」
「そうだ! 教えろ、猫屋敷!」
と、西城生徒会長も猫屋敷蓮一郎にそう答えていた。
「え、えっと……その……。ひがのけんも、さいじょうひめかも、落ち着いて……」
うろうろと、どうすれば良いのかと、どこか申し訳なさそうに悩んでいる猫屋敷蓮一郎。
「悩む事はないぞ、猫屋敷部員!」
と、そんな男らしい声が聞こえてくる。
その声が聞こえて来ると、顔を上げてキラキラした眼つきに変わっていた。
「ぶ、部長! いちじくじゅういち部長の声が聞こえる!」
「その通りだ、猫屋敷部員」
と、その声と共にとうっ、とそのまま窓の外からくるくると前転しながら入って来る少年。
その少年は先程の空虚で空っぽな少年とは違って、元気と勢いに溢れた少年だった。
赤い短髪の中学生のような中性的で小動物のような顔をした少年は、背中に丸めたアイドルポスター、両手にはアイドルグッズの詰まった買い物バッグを片腕で2つ、両腕で計4つのバッグを手に取ったその少年は、猫屋敷蓮一郎に先程まではキラキラとした目で、今はちょっとばかり残念な物でも見るような眼で見られいた、"いちじくじゅういち"と呼ばれた少年はキラリと歯を輝かせていた。
「――――――生徒会長よ、この九十一がこの勝負に加勢させていただこう」
次回、「ドラゴンバーサス」




