ウイッチマッチ(2)
西城生徒会長は猫屋敷蓮一郎との戦いでは敵である彼女が魔術と言う強い能力を持っているがために敗北したけれども、西城姫花自身はこの敗北をただの敗北だとは思っていない。
そもそも、西城姫花と言う彼女は十字学園に入る以前から自分の能力を自分なりにどの程度の強さで、なおかつどの程度応用が効くのかを個人的に解明、改善してきており、彼女の人生は戦闘と、そして敗北と共にあった。
ある時は、最強と呼ばれていた少年と喧嘩をして敗北した。
――――――その後、勝利を収める。
別の際は、無敵と呼ばれている防御能力の少女に手も足も出なかった。
――――――弱点を見つけ、きちんとその防御を打ち破る。
圧倒的な戦力を誇る能力者の少年になす術もなかった。
――――――戦力差を能力の応用で失くした。
一度敗北して勝利し、二度負けを知って勝利を掴み、三度弱さを感じて強さを得る。
負ければ負けるだけ成長する彼女は、まるで鍛え直されるほどに強くなる鉄のような女であった。
それもまた、彼女がどうして負け、どうすれば勝ち、どうすればもっと強くなれるのかと言った、戦闘からきちんと学んでいたからに違いない。
故に猫屋敷蓮一郎との2度目の対決において、西城生徒会長はここでも成長を遂げ始めていた。
☆
「さいじょうひめかせいとかいちょう、まずはこれでも喰らってなさい!」
猫屋敷蓮一郎がそう言って眼を赤く光り輝かせると共に、西城生徒会長の身体が一瞬にして動かなくなる。
前の戦いで彼女が見せた金縛りであると確認した西城生徒会長は、そのまま身体に力を込めると彼女の身体が金縛りにあっている状態なのにも関わらず、ゆっくりとまずは腕が震え出し、そして足がゆっくりと揺れながら一歩、そしてまた一歩と歩き始めていた。
「なっ!? さいじょうひめかせいとかいちょうに対して、わたしの金縛りが効かない? ならば、対処方法を変えるまでですね」
そう言いながら猫屋敷蓮一郎は指をパチンと鳴らすと、彼女の身体の周りを囲むようにして赤い炎が現れていた。
そして炎は回り始めて、そのまま西城生徒会長の元へと放たれる。
それを西城生徒会長は身体に一瞬光り輝いたかと思うと、拳を握りしめてそのままの勢いで赤い炎を殴っていた。
殴ると共に、そのまま雷で投げやすい苦無を作った西城生徒会長はと言うと、彼女の身体めがけて、どちらかと言うと彼女の身体に大量にある装飾品へとその攻撃先を向けていた。
そしてアクセサリーは地面へと落ちると、猫屋敷蓮一郎は余計な事を、とでも言いたげに、どこか悔しそうな顔をしていた。
「ちっ……。わたしの魔術に対してなんらかの対抗策を講じるとは思っていましたが、まさかわたしの能力の弱点を見破るとは……」
と、忌々しげに話す彼女を見て、西城生徒会長は少し嬉しそうな顔をしていた。
(弱点……そう言うって事は、少なくとも彼らと話していた事は……彼女の装飾品が魔術に関係あると言う事は事実であったと言う事)
西城生徒会長は猫屋敷蓮一郎との戦いで、自身が確かに成長している事を感じていた。
西城姫花の異能力は雷の武具を作り出す事であったが、それは彼女の認識の問題であった。その異能力は特性こそ違うえど日向野健の異能力に似た物があった。
日向野健は植物を武器に変える異能力であるがそれは彼がそれを植物であると認識したものを、彼自身が武器だと認識したものへと変える力であるが、それは裏を返せばどんなものであろうとも彼がそう思えば変えられると言う力でもあると言う事であり、その利用性の高さは自分にも使えると思って、西城姫花は彼を、日向野健を買っているのだ。
実際、今回の猫屋敷蓮一郎の金縛りを破る方法もまた、そう言ったところから生まれたのだ。
金縛りを受けて身体が動かないと言う状況であろうと、意識だけはハッキリしていると言う事であり、なおかつ異能力とは身体で使うものではなく頭で使うものであるから意識さえあればこの能力は普通に使える。
そして異能力を使っていると悟らせないようにして、異能力を使って見えない透明な雷の戦闘用スーツを作った。
今までは見栄えもそれなりに戦闘の助けになると思っていたが、今回はそれを逆にして敢えて見えにくいスーツを作り、身体に纏わせて、そのスーツを動かして猫屋敷蓮一郎に攻撃したのだ。
(さらにスーツは私の異能力で意のままに動くから、力加減も自由自在。全く……自分の異能力ながら大したものですよ)
自分の身体と雷の異能力で作ったスーツを同時に操らないと戦力が弱くなる事もあって上手くいかない事が多かったが、それでも同時に動かせればパワーも強くなると思うのならば、西城生徒会長は努力してその力を実践で使えるくらいにまで昨日一日で仕上げて来た。
最も付け焼刃のようなものであり、パワーも身体能力にほんの少し上塗りされたような物であり、なおかつ使える時間も限られているけれども。
(でも、そんなちっぽけなものであろうとも金縛りは敗れた。ならば後に残っているのは、相手を倒すためにどう使い、どうすれば良いかと言う問題、だけ!)
西城生徒会長はそう心に思いながら、雷のボウガンを作り出すとそのまま猫屋敷蓮一郎の身体を、猫屋敷蓮一郎のブレスレットを狙いながら、ボウガンの弓矢を放つ。
放たれた弓矢は猫屋敷蓮一郎へと放たれ、猫屋敷蓮一郎はその攻撃に対して黒い魔法の靄を作り出していた。
「ブラックホール」
猫屋敷蓮一郎が作り出した黒い靄は多くの渦を巻きながら存在しており、その渦巻は西城生徒会長の放った雷のボウガンは吸い込まれてしまっていた。
「そう簡単にはいかないですか……。燃えて来たー!」
「なんともまぁ……無駄に強いと言うか何というか……」
そう言いながら猫屋敷蓮一郎はこの戦いは本当にくだらないと思っていた。
確かにあの時、書記の左凛の言葉に怒りを覚えて西城生徒会長と戦ったのはこちらの落ち度、こちらが悪いと言えるけれども、だとしても今ここで戦う意味があるのだろうか?
悪口を受けた、当人である部長の九十一さんはもう気にしてないのにも関わらず、私がどうして今も戦っているのだろうか?
そこまで考えて猫屋敷蓮一郎は頭を振って、自分の考えを振り払っていた。
「……いや、今はさいじょうひめか。あなたを倒す事だけがこのねこやしきれんいちろうが倒させていただきましょう」
猫屋敷蓮一郎はそう言って、後ろに大きな魔方陣を作り出していた。
「ここからが本番ですよ、さいじょうひめか」




