ウイッチプロローグ
猫屋敷蓮一郎はかなりの自信家であると同時に、一種の思い上がりが強い子供であった。
それもまた、彼女が猫屋敷家始まって以来の才女であり、なおかつ『魔法』と言う一種別次元に思える異能力を持ち合わせていた事が理由の1つでもある。
自身の生まれ持った才能が凄まじく、誰もが自分を凄い人物であると褒め称え、称賛し、なおかつ望めばなんだって出来た故に、彼女はそんな傲慢な子供になってしまったのである。
まぁ、その猫屋敷蓮一郎に与えられた異能力と言う名のオモチャは、彼女には過ぎたる物だった。
子供にライフルを、しかも子供が分かる説明書付きで渡されたのとほぼ同意であり、そんなものを物事の分別や親同士の事情、ましてや人として大切な道徳が分からないような子供なんかに預ける物ではなかった。
さらに厄介だったのはそのオモチャを取り上げる事が出来ず、なおかつ取り上げようとした大人が子供にやられてしまうと言うのが問題だった。
彼女はどんどんと自分の力の強さを過信し、いつしか自分ならばどんな事だって出来るし、それにどんな事をしたって許されると勘違いしてしまっていた。
勝手に暴走し、勝手に思いあがり――――そして勝手に自滅した。
「な、なんで……」
蓮一郎は目の前の光景が理解出来なかった。
自分が倒され動けないようにしているのに、自分が戦っていたはずの相手は自分の事なんか見ていないようでずーっと手元の写真に目を落としている彼。
そんな彼の姿を見ていると、負けたと言う事実よりも彼の顔をどうにかして振り向かせたいと言う気持ちの方が、蓮一郎の想いとしては強かった。
「誰……? 誰なの?」
蓮一郎がそう語りかけたが、手元の写真に目を落とした彼にはなにも答えなかった。
ただ彼の持つ――――巷で話題になっているアイドル、十姉妹栗花落の写真を持った彼の姿だけが、取り分けて頭に残った光景であった。
「――――必ず、必ずあなたの事を調べあげてみせましょう! このわたし、ねこやしきれんいちろうの事を必ずや、あなたのその眼に見せつけて、その耳に聞こえさせ、その手に触れさせ、その鼻で嗅がせてあげます! そう、これからあなたにはねこやしきれんいちろうの全てを感じさせて差し上げましょう!」
――――それは猫屋敷蓮一郎にとって初めて何かに対する強い感情であり、初めての他者に対する感情で、初めての恋愛感情であったのだが、それを彼女が正しく感情を理解出来たのは小学校5年生、ようやく物事に分別が付き始めていた頃の事であった。




