カガミシスター(2)
フユさんが行った後、すぐさまナツさんが「そうだ! そうだ!」とパンフレットのような物を取り出して、話を切り出す。
「いやー! すいませんでしたねー、我が愛すべきお姉たんをフユちゃんが呼んでますので、ちょっと待っててくださいねー、お友達の皆々様! あぁっ、でも、お姉たんの傷を治さないといけないです!
それでしたら、ちょっとこの本でも読んで時間を潰しましょう! この本、展開とか、すっげー面白いんですよぉ。そう、是非ともそうしましょう!」
「さぁさぁ、早くしましょう!」と眼をキラキラしてこっちを見るナツさんに対して、パンフレットに展開とか関係ないんではないだろうかと僕と楓。
(それで読書って……。どうなのよ……)
どう反応したら良いか困っていると、
「こら、バカナツ! パンフレットで読書とか勧めるんじゃないわよ。私達がパンフレットで読書している変な家族とか思われるじゃないの!」
「……アキお嬢様、そこまで不安になられなくても、恐らくお友達の皆々様もそんな事は1ビットも考えておられないと思いますよ」
「そ、そう? なら良いんだけど……」
そんな事を言いながら加賀見さんがフユさんに連れられて、出て来られました。
いきなりパンフレットの読書について指摘されたナツさんはと言うと、姉に言われて自分が持っているのが何なのかを確認して、
「やだ! 私、パンフレットなんか勧めてる!?」
と、ようやく自分が何を勧めているのかを理解したらしくて、恥ずかしそうに顔を赤らめながらパンフレットをしまう。
「ありがとう、加賀見さん……。さっきのままだと、どうも僕達はあのパンフレットで感想を言い合わなくてはならなかったから……」
「ケン、顔、青い……」
うん……もう読書で感想を求められながら読むと言うのもどうかと思うし、なおかつパンフレットでそれを当てはめられるとどうかと思うし。
「はぁ……」
「ごめんね、バカな妹で……。本当にバカな妹で……」
「ナツお姉たん!? どうして、2回もバカって言うの! まるで私がバカみたいじゃん!」
ムキになって言うと、余計バカに見えるなぁ……。
「……本当、にバカ、っぽい、ね。加賀見さん、の妹の、ナツさんは」
「すいません。ダメな姉で……」
楓まで言ってるし、しかもバカじゃないほうの妹さんが謝ってるんだが。
「……と言うか、お姉たんのお友達のお二人さんはお姉たんの事を加賀見さんと呼んでますよね? それならば別に、アキと名前で呼んでも良いんじゃないですか?」
ナツさんの言葉に、そうだなと思う僕と楓。
そう言えばここは加賀見さんの家であり、そんな家で『加賀見さん』と呼ぶのも変な話であるから、アキさんと名前で呼ぶのが普通である。
「そう、ね。なら、アキ(笑)、さん」
「誰が(笑)よ! この無表情虎女!」
ムキー! と怒りながら言う加賀見さん。
……うん、いつも通りである。
「……全くもー。え、えっと……」
十分怒った加賀見さんはこちらを見て、ちょっと頬を赤らめながら、
「……え、えっと日向野君? そう言う訳だから、私の事を気軽にあ、ああ……あ、アキって呼んで良いんだよ?」
「お、おぉ……そうだ、な……」
そう言われて僕は一度ゴホンと咳を吐いて、アキさんの方を見る。
正直、加賀見さんをアキさんと呼ぶ事は簡単だとは思うけれども、それにしたってちょっとずつ仲良くなっていくのが筋だと思うし、こんなふうに強制されて言いたくはないんだけれども。
「早く言わないかなー。お姉たんが男を呼ぶだなんて初めてだし、お姉たんがどう言う反応をするのか興味ありありでぇす!」
「えぇ。私も、映像情報としては知っていますが、アキお嬢様がどう言う態度を取るのか、とても……1ギガバイトほど興味がございます」
……なんか、その妹さん達には非常に注目されてしまっていて、こちらとしても照れてしまうのだが//////
「……//////」
あっ、どうやら照れているのは僕だけではないようだ。
「え、えっとじゃあ、呼ぶね。ア……」
「――――――良い!」
諦めて、いや決心して加賀見さんの下の名前を呼ぼうとしたら、加賀見さんの方から顔を真っ赤にして止めて欲しいと言われてしまった。
「ほら! バカナツも、それからバカフユも、あんた達の方も忙しいでしょ! ほら、出て行って!
――――――あっ、フユは訓練場に行ったと言う、西城生徒会長をこちらまで案内しといてね」
そう言うと、加賀見さんの2人の妹はブーブーとふて腐れながらも、
「お姉たんのバーカ! ……あっ、そう言えば今後の生活費を得るために重要な、テレビ会談の予定が入ってたんだ!
ありがとう、お姉たん! 思い出せたよ! じゃあ、お友達と仲良くしてよね! お姉たん!」
「……妹使いの荒い姉ではありますが、お友達に対して見得を張りたい気持ちは分かるので、従いましょう。すぐさまお呼びいたしますね」
そう言って、2人は部屋を出て行く。
「……全く! 余計な事しかしない妹達なんだから! 全くもぅ!」
そう言うアキさんは文句ばかりを言っているが、どこか楽しそうな表情を浮かべていた。
……仲良いな、この三姉妹。




