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Lurking in the shadows(ラーキング イン ザ シャドウズ)

ここは、とある森。

ログレスから、隣の国、テクノマギアのちょうど間にあって、この二つの国片方からもう片方に行くには、この森を通るか、外から大回りするしかない。

この森は、どんな季節でも、赤色の葉が茂る木が生えていて、地面に近いところには、薄い紫色の霧が立ち込めている。

この森に入り、そのまままっすぐ進み続ければ抜けることができるが、一度でも横道にそれれば、一生ここで迷い続けることになる…いや、迷い続ける、は違うかもしれない。とにかく、帰ってこない。

そんな森の中に、一つだけ、横道にそれないとたどり着けない場所が存在する。

道を教えることはできないが、そういうところがある、というのだけは伝えておく。

そして、その特殊な道を抜けたところにあるある建物の前。私は今日も、箒で、風が吹くたび地面に落ちる深紅の葉を片方に集めていた。

「なんだ、ここ……」

時計の針が10と書かれたところを回ったころ。

この森に迷い込み、歩いている間にたどり着いたのか、ある男が入ってきた。

背中には大きなものを背負い、手にはランプ。あの方が言っていた、ばっくぱっかー?という職業の者だろうか。まぁ、何者であっても、私は主の命令に従うだけ。

「この森で迷われましたか?」

「え、あぁ…はい。少し迷ってしまって。」

「ならば、こちらでお泊りください。」

「え⁉ありがとうございます。」

私はそう言って、ほかのメイドたちが仕事をしている廊下を抜け、()()()の部屋へと案内した。食事、風呂、できることをすべて。

「今日はごゆっくりお休みください。」

時計の針が2を回ったころ。そろそろ、私の周りのメイドたちの挙動がおかしくなってきた。

ほほをほんのり赤く染め、ふらふらと、力のない動きで歩いている。そのうえ、その状態の者は皆、基本的に、客人用の部屋の近くにいる。

「みんな。もう少しだけ待ってね。」

「ハァ…ハァ…あと、どのくらい……ですか?」

「あの長い針が、今は2って書いているところにあるけど、それが4って書いてあるところになったらよ。」

「………わかりました。」


それから10分後。

私の少し力が抜けてきたころ、ほかの子たちは、もうすでに我慢の限界のようで、中には口からよだれが出ているようだった。その姿はまるで、飢餓状態の時に餌の目の前で待てをされている獣のようで…

「回ったようね。いいわ。」

そういうと、次々に、メイドたちの姿が変わっていく。

人間のように黒かった髪はワインレッドに、背からは何かの動物(あのかたはこうもりといっていた。)のはね、額からは小さな角。それらが生えると同時、耳は少し長くなり、先がハートマークのようになっている尻尾も生える。彼女たちがあらわにしたその姿は、「ヴァンパイア」と「デーモン」の交配種、「アビスキュラ」。その主食はもちろん………………人間なのである。

断末魔の聞こえる生き餌(きゃくじん)用の部屋を眺めていると、自分の体からも、アビスキュラの片りんが出始めているの感じている。おそらくはたから見れば、小さく翼や角が生えているんだろう。

そんなことを考えていると、この―いえ?やかた?…否、城だ―の玄関が3回、不思議な間隔を開けてノックされる。

ドアを開けると、そこに立つのは見慣れた顔。まるで宝石のような美しい赤色の瞳に、ひとみと同じ赤と、銀色の模様が入った、漆黒のローブ。右手には自作の魔導書、左手には、私たちが初めて見る杖を持っている。

「その杖は?」

食事の用意をしながら尋ねると、()()()はうれしそうに、

「古代遺物で作ってもらったんだ。しっかり魔法が制御できるようにね。いいだろ?」

と見せびらかしてくる。

私たちの主であり、一種族の長だというのにこの態度。頼りがいがあって、そばにいると気が休まる半面、いつ、何をしでかすがわからないというのが、この方の困ったところ。

「……ねえ、イヴ」

「—はい。」

「君さ………」

突然椅子から立ち上がりこちらに向かってくる()()()の気配に、体が無意識的にこわばり、声が震える。もう3年くらい一緒に暮らしているはずだけれど、いまだ、ふいに声をかけられることに関しては巨富を感じることがある。

「たべてないでしょ。」

「……え?」

「え?じゃなくて。ほかの子たちは迷い込んだの食べてるみたいだったけど、イヴ食べてないでしょ。若干千鳥足だし。何より、顔が赤い。」

突然顔を指さされ、私はとっさに顔を隠す。血に飢えているところに、その血の匂いをつけた仲間たちがいる。大体予想はしていたけれど、それならそれで、もう少し早くいってもらってもよかったのに…

「早くいってほしかった、て顔してる。」

「~~~」

そんな心を読んだのか、あの方はにこにこしながら私の頭をなでる。

「ほら、」

そういってあの方が差し出すのは、ご自分の右腕。確かにご主人様は人間とアビスキュラのハーフ(?)なので、私たちが血を吸っても支障はない。ご主人様は人間の中でもかなり上位の強さに位置しているから、どちらかといえば、その吸った血の持ち主の強さによって強くなったり弱くなったりする私たちにとって、恩恵しかないのだが……

「ですが…その……」

「ん?いや?」

「いえっ!決して嫌なわけで…ムグッ」

そう断ろうとした私の唇に、その発言を一切無視したあの方の手の甲が触れる。

「…………」

「君がみんなの中で一番強いんだから、体調管理とかもしときなよ。それで、今の状況は?行かせてた子たちは帰ってきた?」

「はい。全員そろって。それと、ログレスに、オルグマールの兵が攻め込んだようで…」

「オルグマールか。そろそろ動くとは思っていたけど。あそこは、僕たちアビスキュラにとっても脅威だ。全員に出撃準備をさせて。………………マチアス・M・アンブローズの名のもとに。」

すいません。前回の話に関しまして、いくらか補足です。

まず、一部おかしい文章がありましたので訂正しました。申し訳ありません。

もう一つ。第1話でマチアスが「聖職者ではない」と言っているのに、前回の話でプロメスが「聖職者だろ?」と言っているのは、「聖職者そのものだろ?」というよりは、「半分聖職者みたいなものだろ?」という意味です。国の大図書館は中央教会の中にあり、そこの秘書というのは、半分枢機卿のようなものなので、こんな言い方になっています。わかりにくくてすいません。

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