We've hit a bit of a snag(ウィーヴ ヒット ア ビット オヴ ア スナッグ)
お久しぶりです!4か月も止まってました。本当にお待たせしました!ここからも、ゆっくり更新していくので、楽しみにしていてください!あと、今月から、”新・アビスキュラ図鑑”あとがきにて始まります!
滴る水音と、僕の靴の音だけが響く地下牢。
個々には、今まで気犠牲になった幾万もの死霊たちが、うじゃうじゃと徘徊している。
僕が触れると、彼らは「いつものだろ?」というように、僕を案内してくれる。
その先に言うのは、この間、唯一僕がしゃべらなかった、アビスキュラ12姉妹の6女…マルティラ・ヴェルノアだ。
彼女の周りには、いくつもの火の玉―つまるところの死者の魂―がフワフワと漂っていて、彼女はその中心で、その魂と戯れている。
普段彼女が、ここから出てくることはない。それが、この前僕が彼女に会わなかった理由だ。もともと彼女は人づきあいが苦手だから、僕は、彼女の調子がいいときにしか声を掛けないようにしている。
今日は地下牢の扉の前にちっちゃな火の玉たちがぴょこぴょこしてたから、大丈夫だろうと思ってやってきたわけだ。…いや、今日に関しては、無理にでも来たかもしれないけど。
「おはよ、マルティラ」
「導師様…おはようございます」
声をかけると、彼女はボソッとしたしゃべり方で、でもしっかりと返してくれる。
隣に座ると、周辺の死霊たちが、何やら文字の書かれた羊皮紙を持ってくる。
「…なんの魔法?」
「……この間ネフィラと一緒に作ったものです。まぁ、大体は彼女ですけど…」
僕がそれを確認しようとしたその時。地下牢につながる扉が、コンコンっとノックされる。
「……大丈夫そうだね」
「…」
部屋に入ってきたのはセレナ。
どうやら、ちょっとだけ部屋を出ようと思った矢先、地下牢前の火の玉を見て、調子がいいと思ったから来たらしい…全部、僕が察してるだけだけど。
死霊は、意外と警戒心が強い。自分たちが死んだ後も、魂を好き勝手されたくないんだろう。僕もそう思う。
でも、そんな魂が慣れているのが、もともと管理していた僕とマルティラ、それにセレナだ。
セレナはマルティラの横に座ると、そのまま楽しそうに横揺れし始める。それに反応して、なぜかマルティラも横揺れしだす。
世間の喧騒が苦手な2人と、この場にはいないエリシアは、こういうところで意外と気が合うんだよなぁ…。よく、3人で楽しそうに、何もしゃべらずにぽ~っとしているところを見る。
あとなぜかこの3人は、ヴァレリアと仲が良かったりする。元デーモンというところが、何か引き付けるんだろうか…
「…そうだ。忘れるところだった」
セレナとマルティラが同時に首をかしげるその姿に吹き出しそうになるのを抑えながら、僕はコングチュレンドで押収してきた、あるものを二人の前に差し出す。
「「…?」」
僕が差し出したのは、14個の宝石。その色は全部、黒ずんだ色をしている。
「これのそれぞれに、君たち全員の魂に結び付けてほしいんだ」
「…?」
「これで、君たちが離れてても、どんな状態かわかるでしょ?」
「魂を結びつけるのは、私の得意分野ですもんね……わかりました」
マルティラは12個の宝石を自分の前に置くと、そこにゆっくりと座り、手をかぶせる。すると、屋敷のあちらこちらから、いろんな色の光が集まってきて、一つ一つが、宝石に入り込んでいく。セレナから出ているのは、濃い青色の光。マルティラから出ているのは深い紫の光だ。
「こうしてみると、みんなの個性が出るね」
「…あとの二つは、どうするんですか?」
「……恨まば恨め…か」
「?」
「………鬼族の大将っていたでしょ?カーミラのおじいさん。あの人の魂を二分割して入れて」
「イイですが……なぜ?」
「もしかしたら使うかもしれないからね。」
幼いころ。あの人とは面識があった。「恨まば恨め」それが彼の口癖だった。戦場で相手を殺すことは自然の通りであると同時に、相手から恨まれることでもある。
その号を背負ってでも生きていかないといけないことがある。どれだけ恨まれようと、自分の一族を持続させるために全力を尽くす。それが彼の生き方だった。
カーミラが生まれた直後に、彼は、人間に攻められて、里子と滅ぼされてしまったけど。
「物に意思はあると思う?」
「…はい?」
ネフィラに魔法を教えているとき。僕はふと、そんなことを言った。
館の中にある大図書館。大量の魔導書が安置されていて、ここにない魔法は、僕が生み出したものくらいだと思ってる。
この場にいるのは、僕と、魔法を教えていたネフィラ。それに、暇だったらしいリリスと、よく図書館にいるヴァレリア。それにイヴだ。
「ものに意思、ですか…」
「意識、という点で見れば、ないものだと思いますが…」
「でも、魔法の掛けようによっては、物体を生き物にすることはできますわよ?」
「花と武器ではどうなんでしょうか?」
「花にはあるんじゃない?生き物だし。」
「では、木製の武器に意思はあるんでしょうか…?」
普段はあまり接点のないアビスキュラの中の知恵者4人が悩んでいるのを見ていると、なんというか、面白い。
「答えは「あることもある」正確に言えば「意識はないが意志はある」だ。聖剣がいい例になる。自ら動くことも、しゃべったりすることもないが、強い者を持ち主を選ぶという意志はある。」
「そうそ……って、なんでここにいるのかな?裏切りの勇者殿?」
4人がそれぞれ臨戦態勢に入る。僕の問いに答えたのは、ネフィラでも、リリスでも、ヴァレリアでも、イヴでもない。魔王の一角であり、世界最強の元勇者―レイダ・デクリファーだった。
咄嗟に認識阻害をかけていてよかった。
僕は仮面をかぶると、レイダに向き直る。
「よく入ってこれたね。」
「私自身もびっくりしているところだ。それにしても、あのアビスキュラの館が、こんなところにあったとは……ここで、貴様らごと吹き飛ばしてやってもいいんだぞ?」
レイダが背に差すブラッド・ルミナに手をかけると、4人は一層警戒を強める。でも…
「責めるつもりなら、軍を率いて蹂躙すればいい話。僕たちがどれだけの力を持っているのかも、わかっているだろうしね。…何が目的?」
そう聞くと、レイダは静かに…
「”世界最強の賢者”マチアス・M・アンブローズを排除してもらいたい。」
No.1 イヴ・ブラッドローズ
身長 156㎝ 体重 主様への信頼度よりは軽い
種族 元ドライアド
二つ名 紅薔薇の処刑人
詳細
アビスキュラ第一号。元ドライアドで、比較的冷静。魔物たちに提供していた森が人間に焼き尽くされそうになった際、偶然出会ったマチアスに助けを求めた。一番記憶に残っているのは、その際に「そんなことで自分の命を懸けようとするな」とマチアスに怒られたこと。それからは、メイド長として他のアビスキュラを束ねるとともに、全力で主であるマチアスに尽くす。
得意技は「血薔開花」。敵を倒せば倒すほど、地面には敵対する者の生気を吸い取る薔薇が咲き乱れる。
マチアスへの評価は「頼りがいのある主」。抜けているところも多々あるが、正確な判断と指示は尊敬に値する。
時折、主を独り占めしたいと思う時も…




