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Settled...for now(セトルド…フォー ナウ)

「…」

「どうかされましたかな?王よ。」

「…いや。それより、戦況は?」

「上々…というわけにもいきませんが、何とかはなる、といったところでしょうな。後は、戦場に立つ彼らの成果への執着によるでしょう。」

「執着…か。クラドルポス。」

「?」

「皆に言っておいてくれ。上には手を出すな、と。」

「はぁ…?」

クラドルポス公爵は、王であるプロメスの言葉の意味が理解できずしばらく思案するように頬に手を当てていたが、そののち、納得したように「ああ」とつぶやいた。

「ハハハ。王も、なかなかに失礼なことをおっしゃいますな。」

「?」

「あの話の続きに、この話。王は、賢者殿がゆう…元勇者殿に向ける思いが、執着に近いものだ、とおっしゃりたいのでは?」

「かもな。」

「わしゃ、少し賢者殿が苦手でな。」

「それはまたなぜだ?」

「賢者殿と友人の仲である王の前で言うのも、少々気が引けますがな。」

「いい。なぜだ?」

「賢者殿の目は、皆が皆、声をそろえて澄んでいるといわれる。じゃが、わしゃ、その澄んだ眼の奥に、濁りが見えるようでならない。まさに、今の元勇者殿のような目です。」

「それは、いつからだ?」

「最初からですよ。勇者パーティーに入る、その前から、ずっと。」






「痛覚は消せるようだが、その傷はしばらく癒えることはない。」

「…………」

右肩から左わき腹にかけて、鈍く、だが鮮烈に、ひどくやけどをした時のような感覚がはしりつづける。

『くらったときに、すぐにシールドを展開できたのが幸いしたな。でも…』

「いくらお前といえど、その傷を瞬時に治すことはできないだろう。負けを認めないならここで斬る。認めるなら、そこをどけ。」

レイダがそういった途端、その四肢に、翡翠色(ひすいいろ)に光る鎖がどこからか繋がれる。

「…」

「まだ…行かせるわけにはいかないよ。」

「…」

が、レイダが一瞬目を閉じると同時、僕の後ろ…つまるところ、防壁の内側から、とてつもなく大きな火の手が上がる。

「狙いはそっちか。でも、君の軍のほうも、無事ではなさそうだよ。」

戦場を見れば、そのほとんどが、僕らの国の兵で埋め尽くされている。

「…」

レイダが戦場を確認した、次のコマには、僕の体に、無数の剣が切っ先が向けられていた。

「これ以上抵抗するのなら―」

「僕が殺されると同時に、君も殺す。」

「先に拘束を解け。」

「解いたとして、僕のほうも解いてくれるかな?」

「当たり前だ。」

その言葉が嘘か本当かはわからないが、少なくとも、僕が先に解かない限り、こちらの拘束を解く気はないらしい。

「…わかった。」

僕は仕方なく、持っていた魔導書を閉じ、翡翠の鎖を四肢からほどく。

その刹那、僕の体の周りを浮遊していた無数の剣が、光の粒と化して消滅―してもらえるわけもなく、消えるどころか、さらに鋭くなって、先ほど受けた傷や頭部に向けて振り下ろされる。

僕がすべての剣をはじき終わった後。地上ではもうすでに、魔物たちが撤退の指揮を始めていた。

「レイダ、さては僕を試したな?」

僕がレイダを追いかけようとしたその時、地上からトルナスに声をかけられる。

「おい、マチアス。撤退すんぞ。さっさと帰って、復旧のほう手伝ってくれ。」

「あ…わかった。」

ふとむこうを見れば、魔物の軍勢は遠くに過ぎ去っている。

『まあ…いいか。』

「わかった。すぐ行く。」

そうして、()()()()、この戦いは幕を下ろしたのだった。

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