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第十六話・・守護神・・

第十六話・・・守護神・・・



きっと一瞬って、こう言うことを言うのだろう。

それともこれは夢の中なのだろうか、

どうやってさっきまで居た民宿の部屋を抜け出したのか、

どうやってこの場所に来たのか全くわからない、

そんなことよりも、ここはいったいどこなのだろう・・


気がついたらここにいた。と、やけに冷静に考えている私がいる。


目が霞んで焦点が合わない、

けれど頭は変に冴えている。

どうやら私はものすごく上等で

フカフカの布が敷かれた台の上に横たわっているようだ。


目の前には白光に輝く

銀色の天井だけがぼんやりと見えている。

次第に目が慣れてきて周りを見回してみたが、

辺り一面銀色に光る壁ばかりで、

天井や壁、床に至るまで

蛍光灯のような照明器具は見当たらないのに、

とても優しいあかりに包まれた

部屋のほぼ真ん中に横たわっている。

「おかえりなさい。はなゑ」

瞬きする間に現れた

二人の人間らしき人が、

私が横たわる台の横に立っていた。


体全体が緑色で目が大きく、

口らしいものはついているが、

どうしたわけか口は動いていないのに、

私の心にその言葉ははっきりと響いてきた。

・・・テレパシー・・・?

きっとそうだと思いながら、

やけに冷静な自分が不思議で、

こういう場合慌てて

パニック状態に陥るのが普通だと思うだが、

恐怖や逃げ出そうなんて考えが全く浮かばずに、

むしろ長い旅を終え、

自室に戻ったような安堵感さえ感じている。


その証にさっきお帰りと言われた時に、

ただいまと言いそうになったくらいだったから・・・。


それにしてもこの人間そっくりな人達に、

以前どこかで逢ったことがあるような気がしてならない。

「はなゑ、起きてください」

緑色した人達が、手で起き上がるように合図している。

私は静かに起き上がった。

「ついて来てください、案内します。」

心に言葉が響いてきて私は従った。


・・あ〜そうだ!

確かたっちゃんがハヤチネの神様が私に逢いたいと言っていて

案内すると言ってその後・・・

あれ?ところで、たっちゃんは何処に行ったのかしら・・・


「あの〜ここはどこですか?」

前を行く緑色の人達に話しかけてみたが、

ちらりとこちらを振り向いただけで何も答えてくれない、

・・それにしても不思議な場所。

窓もないし、銀色に光る長い廊下がどこまでも続いているだけ・・・

たっちゃん!どこにいるの?・・・


よく見ると、

前を歩く二人の足が全く動いていないことに気がついた。

動く歩道の上に乗っているようである。

その動きを不思議と思いながら

後ろを付いていくと、私の手を不意にしっかりと握る者がいた。


「あっ!たっちゃん、

今までどこにいたの、ここはどこなの?

私いつの間にここに来たの、まるでわからないのよ・・・」

聞きたいことは山ほどあるのに、

たっちゃんは(黙って)と指を口に当てたまま、

前を行く人達に続くように私を促すばかりで、

初めはいつものかわいい男の子の姿で現れたのに、

あっという間に前を行く、緑色の人たちと同じように背が高く、

顔つきも成人男性のように変化している。

「たっちゃん・・・」

私はそう声をかけるのが精一杯だった。


それでもたっちゃんは(黙って)のポーズを繰り返すだけで、

何も答えてくれない。

大人になったたっちゃんに、エスコートされながら、

白く輝く廊下を歩いていくと、

いつの間にか、私にも変化がはじまっていて、

いつかの夢で見た、

私そっくりな人が着ていた白い衣装を身に纏い、

頭には光り輝くティアラを着いていた。

「たっちゃん・・・これは・・・」

たっちゃんは、優しく微笑むばかりで

相変わらず何も答えてくれない。


次の瞬間。私の心の中に今まで聞いたことのないくらいの、

深く優しく響く声が聞こえてきた。

「私たちには時間も空間もありません」

その声がどこから聞こえてくるのかわからない、

辺り一面銀色に光る壁ばかり

「私たちは時間と時間の狭間を歩いて移動しているのです。

地球の時間で千年ほどかけないと移動できない距離も

(そこにいく!)と思っただけで移動できます。」


優しく響く声のせいなのだろうか、

私は遠野の郷を福ちゃんと一人と共に周り、

この郷は神々の集落と一人が言っていたのを思い出していた。


現代と昔が交差しているような

不思議な時間が流れている感覚が色濃く残る、

それは現代を生きる私たち人間が生きている時間と、

まさに神々が生きている時間の流れが、

この遠野の郷には

今も確かにあるように感じてならないからだった。

どこからか響く声の中で私は強くそう感じていた。


私たちの前を行く二人の緑色の人たちが、

大きな鳥居の形をした扉の目の両側に立ち

「はなゑ、祈りの言葉を」

と私に向かい言い、

その言葉に促されながら私は両手を広げて、

祈りのポーズを取り

「四神の神様、天の神様、地の神様、森羅万象全てに感謝いたします。

我、本来の光を放つ成り」

と三回唱えていた。


それと同時に私の中で眠っていた何かが、

静かに背伸びして目覚めたような気がした。


「はなゑ!よく覚えていましたね。

私たちが与えた言葉です。さあ!中へお入りなさい。待っていましたよ」

あの深く優しい声が私の心に響いてきた。


扉の両側に立っていた緑色の人達が、

門を静かに開け、私達を導いてくれた。


その時緑色の人達の顔を始めて間近で見たが、

福ちゃんと一人にそっくりだった。


扉が開いた途端、

今まで嗅いだことのないほどの、とてもいい香りが私を迎えてくれた。


そして私の目の前には、

今まで見たこともないほどの大きな木が一本、

キラキラとエメラルド色に輝いていて、

天の先の方まで伸びていて、先は見えない。

枝葉も白銀に輝き、

眩しすぎてどこまで伸びているのかわからない。

更に樹皮は一枚一枚が大きな鱗のようで、

エメラルド色に輝きながら、

規則正しく呼吸をしているように動いているのがわかった。

そして、どうやら深く優しく私の心の中に響いてくる声は、

この大きな木から響いてくるのだとわかった。

辺りの空気はとても澄んでいて、

私が一呼吸するたびに体の中にあったマイナスな感情が清められて行くようで、

私はとても安心したきもちになれた。


「はなゑ、ハヤチネの神様だよ」

私をエスコートしてくれている、

大人の姿になったたっちゃんが、大きな瞳でこちらを見ている。

辿々しい物言いは消え、

声までも深いテノールの大人の男性の声にかわっていた。


「たっちゃん。この美しい木がハヤチネの神様なのね」

たっちゃんは静かに頷き、

大きな木に向かい片膝を着いて一礼した。


私もたっちゃんに続いてお辞儀をしようと思ったら、

体が勝手にバレリーナがするように両手を優雅に広げ、

右手を前にして一礼していました。

・・・私どうしてこんなお辞儀を知っていたのかしら?・・・


「はなゑ。頭で考えないで、

全てを任せましょう。貴方は魂の故郷に帰ってきたのですから」

私の前には、

ハヤチネの神様から一本の白い糸のようなものが

上からスルスルと降りてきて、

優しく私の頬を撫でてくれた。

それと同時に私の心の中に

私そっくりなもう一人の私がいることに気が付いた

・・あなたはだれ?・・

問いかけてみた

・・私はあなた・・・

もう一人の私はそう答えた。

それと同時に

魂の故郷、その言葉が心の中に響いて、

忘れていた何かが私の頭の中でこだましていた。

涙と共に。


そして、私はなぜかあのトヨ占いの書の序文を思い出していた。


・・自分を変えたい

悩みから解放されたい、

しあわせな最高の人生にしたい、

誰もが抱くそんな思いをたちまち解決したい

そしてこの先も

目のまえの出来事にいちいち動揺しなくなり

自分の思い通りの道を突き進むことができます。

経済的なゆとりを手に入れ

最高の仲間に囲まれながら

好きな仕事

楽しい趣味で満たされた人生を

最後の最後まで

笑いながら生き抜くことができます。


誰と居ても、何処にいてもどうしようもない

孤独感を感じていた私。

満たされないままの心はどうしたらよいものなのか・・・

その答えのヒントを今、いただけたような、

そんな気持ちになっていた。


魂の故郷、トーノ、ハヤチネ。

私は大きなため息を一ついて、

どうしようもない孤独感という大きな荷物を

やっと降ろすことができる、

そんな魂の故郷に帰って来たのだと強く思った。


「貴方の中のもう一人の貴方に気がついたのですね」

ハヤチネの神様から伸びて来た白い糸は、

私の掌にスーッと降りてきて、

同時に白い糸にほのかな灯りが灯ると

私の心の中に言葉が響いてくる。

その白い糸に向かい私は問いかけてみた。


「はい。一人だと思っていたのは私だけで、

実はもう一人の私が私の中に存在していたのですね。」

「そうです。いつもそれを忘れないでください。

そしてもう一つ大切なことは

貴方が本当に行うべきこと。

お役目を思い出すことです。」


「はい。ありがとうございます。

今の私ではまだ思いだせませんが、思い出してみます。」


私の体はまるで、日向ぼっこでもしているかのように

ぽかぽかと温かく感じ、とても気持ちが良かった。

今まで気づかなかった

私の中にあるもう一人の私に気づくということは、

なんて気持ちが晴れやかになるのだろうか


「貴方に見せたいものがあります」

すると別の方から白くほのかに光る

枝の先がある一点を指し示していた。

そこには大きな石碑が立っていた。

私は以前テレビでトヨ文明の特集があり、

そこに出ていた広場のような所に立っていた

トヨのカレンダーにそっくりだと思った。


よく見るとたくさんの年号らしき数字が白く着色されている。

けれど2010年より先は赤い色で着色されており、

2025年より先の数字が刻まれていなかった。


私はハヤチネの神様の手を握りながら心の中で話しかけてみた。

(ハヤチネの神様教えてください。これはカレンダーですか?)

するとかなりの上の方からキラキラ輝く水滴のような光が私の手に届き、

それと同時にハヤチネの神様の言葉が響いて来た。

「そうです。それは地球のカレンダーです」

するとまた違う方角から一本の枝がスルスルと伸びて来て、

私の頬を優しく撫でてくれた。

気がつくと私はハヤチネの神様をしっかりと握りしめていて、

ふいに違和感を感じ、恐る恐るひらいた掌の中には

藍色に輝く丸い球が輝いていた。

「祭りを、本当のまつりを大切に行いなさい」


気がつくと私は民宿の部屋の布団に横たわっていた。

窓の外はそろそろ夜明けが近いのか、

少し明るくなって来たように感じた。

「夢だったのか・・・・」

それにしてもあまりにもリアルすぎる夢に戸惑いながら、

程よい疲れもあり再び眠りについた。


雨の音がする

やはり予報はあたったのかと思いながら

ぼんやりと天井を見つめていた。

(・・・・・!)

私は布団から飛び起き

ハヤチネの神様から頂いた藍色の珠を探した。

・・ない!ない!ない!

ハヤチネの神様が確かに渡してくれたのに・・・

あれは夢だったのだろうか・・・

確かにこの掌で感じた珠の重さを思い出しながら、

諦めきれない私は部屋中を探したけれど、

いくら探しても藍色の珠は見つけられなかった。

・・夢だったのかな・・・


朝食を取るために一階に降りて行くと

福ちゃんと一人は既に席についていた。

階段を降りる時、昨日かなり歩き回ったはずなのに

足がとても軽く感じて不思議だなぁと思っていた。

「おはよう、はなちゃんお先していたよ」

福ちゃんが言った。

「遅くなってすみません」

「今日はいちだんと足どりが軽やかだね、

なんかいいことでもあったのかい」

「ありがとうございます。

やっぱりわかりますか?朝起きたら足がとっても軽く感じて驚いていたところです」

「お肌もとってもツヤツヤして綺麗だよ」

「うわ!ほんと!ありがとうございます」

「いい夢でもみたのかな?」

福ちゃんが親指を立てながら言った。

「はい!とってもいい夢でした」

「どんな夢だったの?」

「な・い・しょ・です。」

と笑って答えた。


元来布団が変わると寝不足気味になるのがいつものパターンなのに、

どうしたわけか今朝は嘘のように体が軽い、

やはり昨夜の夢のせいなのだろうか?

「ほら!よそ見しないでさっさと食え」

一人がいきなりぶっきらぼうに言う。

昨日は風の丘で私の方が綺麗だと言ってくれたのに・・へんな奴。


私は朝食をいただきながら、

福ちゃんと一人に夢の話をしようかどうか悩んでいた。

「なにブツブツ独り言を言っているんだよ」

考えがまとまらない時、

独り言を言う癖があるらしく、よく一人から注意される。

一人はコーヒーを飲みながら、

「夢の続きでも見たのかい」

「えっ・・・・」

まるで心の中を見透かされているようで、驚いて一人を見返した。

「はなちゃんの考えていることぐらいわかるよ。

今は続石のことで頭の中がいっぱいなんだろう。

そのはなちゃんが、朝から独り言を言うってことは、昨夜の夢が原因としか考えられないだろう」

「・・・・・・」

私は黙ったまま一人を見つめていた。

「どうだい、いい男だろう?」

「はいはいそうですね、その通りですね・・・」

私が悩んでいると一人はいつも笑い話に変えてくれる。

「実は・・・昨日・・・大きな不思議な木と出会って・・・

ハヤチネの神様で・・・自分の役目に気がつくことって・・・」

あまりにも壮大な夢の世界を

どう話していいかわからないまま言葉ばかりが先に立っている私は、

自分でさえ意味不明な内容を、

一人は一生懸命聞いてくれて理解しようとしてくれていた。

「岩の次は木かい?はなちゃん少し落ち着いて説明してくれないかな?」

「ごめんなさい、そうだよね、ごめんね。まだ話がまとまらないままだものね。」

「まずは食事を済ませてからだよ」

一人がご飯を食べる真似をしながら言っている。

相変わらず竈で炊いたご飯は美味しかった。


食後のコーヒーをいただきながら、

改めて一人と福ちゃんに今度はちゃんと二人にわかるように、

話を順序立ててまとめ不思議な夢の話を聞いてもらった。


遠野に来てから、実は夢の続きは始まっていたこと。

(もうすぐわかります)の言葉から始まり、

不思議な歌に、

私そっくりな白い衣装の女性、

昨夜のUFO?の様子に、

たっちゃんが大人になっていたこと、

福ちゃんと一人に良く似た全身緑色の人、

そしてハヤチネの神様。

大きな呼吸している木。

その大きな木のハヤチネの神様からのイメージの中にあった、

自分の役目に気がつくこと、

思い出すこと、

正しい祭りを行いなさい。

まるで何処かのSF映画か物語の中のような話の内容に、

話している私自身が戸惑ったていたが、

それでも福ちゃんは頬杖をつきながら、

一人は腕組みをしたまま静かに頷きながら、

最後まで聞いてくれた。


「すべては(もうすぐわかります)に結びついていくんじゃないかな」

福ちゃんが言った。

「俺たちそっくりな緑色の人っていうのも気になるよな」

一人が言った。

「あと二日この遠野に滞在できるわけだから、

きっとハヤチネの神様が俺たちを見守っていてくださるよ」

遠野に来てから、

すっかり目に見えない世界の存在を認めるようになった福ちゃんに驚きながら、

これも遠野の郷の大きな力なのだろうかと考えていた。


「はなちゃん、なにびっくりした顔をしているの。行くわよ!謎探しに」

「・・・・・」

スキップしながら・・あのスマートさが売りの福ちゃんがスキップしながら、

それもオネエ言葉を使いながら歩いていく

「ハヤチネの神様、どうかおどかしっこなしでお手柔らかに導いてくださいまし」

つられて一人も両手で祈るようなポーズをしながら天を仰いでいる。

そんな二人にいつの間にか私も大笑いしていた。




感謝しています。

お読みいただきありがとうございます。

面白かったら、

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ありがとうございます。

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