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27話 スィナーンからの書簡②

 

【 スィナーンからの書簡 5通目 】


 親愛なる我が君。


 姫君は、現地調達した干しナツメがいたくお気に召したご様子。

 食が細く心配しておりましたが、本日は吐かずに食べきることができました。

 食事以外の場面でも、マダムが甲斐甲斐しく世話を焼いているので、お体の心配はございません。


 *


 夜陰に乗じて盗賊団に急襲されましたが、大事には至りませんでした。健やかにお過ごしでいらっしゃいますので、ご安心ください。




 ◆◇◆




【 6通目 】


 親愛なる我が君。


 砂漠を通過する折、オアシスにて小休止をいたしました。

 本日は気分も良いようで、冷たい水に足を浸しながら祖国の歌を披露してくださいました。あなたがおっしゃった通り、金糸雀(カナリア)のようです。


 マダムが異国での商売についてお話したところたいそうお喜びになり、東の島国のことをしきりに尋ねていらっしゃいました。

 内密にと念を押されましたが、海の向こうに嫁いだ姉妹がいらっしゃるとか。


 姉君様が婚約者の商人から贈られたと言う真珠が羨ましかったそうです。あなたも今度贈ってみたらいかがでしょうか。


 (マダムが売買を仲介してくださるそうです。ただし、小口の取引は難しいとのことなので、村のご婦人方にも首飾りなどを作って差し上げるとよいでしょう。姫君のいる牢屋に通い詰め、仕事を疎かにしていたお詫びは必要かと存じます)




 ◆◇◆




【 7通目 】(嵐のため鷹匠の元に戻れず、不着。通信筒も破損)


 就寝中の姫君が、寝言であなたの名前を呼びました。

「ごめんなさい」としきりに謝っておられたので、あなたの代わりに涙を拭っておきました。差し伸べられた小さな手を握り返しておきました。


 恐れながら申し上げますが、


 あなたはいつまでそこに留まっているおつもりですか。

 哀れなほどに健気なこの姫君が不幸になれば満足なのですか。


 そう思うと、私は悔しくてなりません。


 金輪際、柄でもないことを私にさせないでください。




 ◆◇◆




【 8通目 】


 親愛なる我が君。


 隊商は交易路を順調に進み、先ほど、都の一つ手前の街・テヘラムに到着いたしました。

 姫君はお一人で別行動をとられ、露店にて淡紅色のドレスを購入。白粉や頬紅などの化粧品もお買い求めになりました。

 公衆浴場(ハマム)もご利用になったようです。


 マダムの勧めで化粧を施し、ドレスを試着したところ、輿入れの日同様に見違えるほど美しくなられました。薔薇の蕾がほのかに開くような微笑みに、一瞬言葉を失くしたほどです。


 (私ごときがご尊顔を拝見してしまい恐縮ですが、麗しの姫君を手離したのはあなた自身です。くれぐれも私を恨まないでくださいね)




 ◆◇◆




【 9通目 】


 あなたの姫君は、都・グラナバードへ無事到着いたしました。

 マダムの一行と別れた後、宰相・ハリド様に謁見を申し入れましたが、入れ違いで地方視察に出られたとのこと。

 宰相が戻られるまで邸宅の外で待機するよう仰せつかりましたので、近隣の宿屋に腰を落ち着けました。


 姫君はもう心を決めたのでしょう。

 先だって見せていたような不安な表情は消え、静かにその時を待っておられます。相変わらず、肝の据わったお方です。


 仔細は、次の書簡にて。



 追伸:いい加減、意地を張るのはおよしなさい。都で待っています。


 最愛の弟へ。


読んでくださってありがとうございました!


次の28話からはシュカが再登場します。だんだん盛り上がってきますので、よろしければお付き合いください。

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