表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/22

やっぱ、ファミリー層を狙いに行く

「えー、皆様にお知らせがございます」


冒険者ギルド、商業ギルド、魔法ギルドのマスター3名が並んで、お立ち台に立ち、大衆の前で説明を始める。


「この度、商業ギルド管理のダンジョンを開放する運びとなりました。冒険者ギルド、魔法ギルドの協力と秘技を用いまして、このダンジョン内には、モンスターが発生しない結界を設置してあります」


おぉ、と民衆がざわつく。

ダンジョンはモンスターが出る危険な所、というのが当たり前だったからだ。


「昨今の薬不足解消の為、皆様にもお力添えをお願いしたく、こうして今回のダンジョン開放についてと、その利用方法を御説明致します。興味のある方は、2時間後に商業ギルド大ホールにて、詳しい説明と手続きを行いますので、ご参加下さいませ」


商業ギルドのマスターはそう締め、一礼する。

ざわざわとしながらも、皆、何か新しいことが始まるらしい、と期待を膨らませる様子。

徐々に散り行く人々を見ながら、商業ギルドのマスターは両隣の二人に呟く。


「これでいいのか?」


「ああ。すまんな。毎回ウチがやっているとな、他の都市の冒険者ギルドからなぁ。当たりがキツくなってやりにくくなっちまう」


「で、巻き込まれた私は、どういう立ち位置何でしょうかね?」


魔法ギルドのマスターはジト目でライアスを見る。


「魔道具使って、結界張ってるって体を取る必要があったんだよ。だから巻き込んだ。ほら、これが詫びの印だ」


ライアスから、手渡された小袋を受け取り、中身を確認すると、魔法ギルドのマスターの顔が歪む。


「こ、れは……、何処で、これを?」


「貰った」


「この純度の魔石を譲るなんて……あり得ない。貴方、騙されていやしませんか?」


「ソレをくれた御仁は、()()()()の魔石は腐るほどあるから、こんなつまらない物で本当に申し訳ないだとよ」


その言葉に、思わずゴクリと喉を鳴らす魔法ギルドのマスター。

そっと袋をしまい、ライアス殿とは良い関係であろうと心に決めるのであった。



指定の時間。

場所は商業ギルド大ホール。

大勢の人が集まっている。

一般的な仕事終わりの時間にしたためか、仕事着のまま来ている人も見かける。


「……あー、お待たせしましたー。それでは、商業ギルド管轄のダンジョンの利用説明を行いますー。私は商業ギルド員のセリーナと申しますー」


ギルド員━━セリーナがホール前方の壇上に上がり、説明を始めた。

拡声の魔道具を使用している為、大ホールの隅々まで、セリーナの声が届いている。


「今回開放するダンジョンには、先刻説明を致しました通り、モンスターは出現しないよう封印が施されています。ですので、お子様から御老人まで、心配なくご利用下さい。ダンジョンは、『草原エリア』『迷路エリア』『探検エリア』があります」


セリーナの手には、ダンジョンマスターから渡された資料を要約したものが握られている。

簡単には、以下の通りだ。


・草原エリア

数キロ四方に広がる草原。

丘と、水辺と、小さな森が点在している。

それぞれの植生に合わせた薬草が生えています。

ダンジョンの魔力を利用して栽培している為、

約3時間で、再び採取可能になります。

※効能は、天然物より低いです。


・迷路エリア

迷宮のようですが、罠はありません。

挑戦を始めて2時間で、強制排出されます。

ゴール到着もしくは強制排出で、迷路が変化します。

迷路には宝箱や魔石があります。


・探検エリア

複雑な構造の建造物があります。

自由に探検しよう。


探検エリアの存在は意味が判らないが、何か活用方法があるのだろうか?

商業ギルドとしては、目下、草原エリアでの薬草採取や迷宮での宝箱からのポーション(出ると書いてあった)が狙いだ。

多少効能が低くても、薬草は薬草。

濃縮すれば、天然物とそう変わりない物が作れる。と、錬金ギルドから報告書を受け取っている。


「ダンジョン内で手に入れた物は、商業ギルド特設窓口で換金可能です」


この一言に、ホール内にどよめきが響く。


「質問いいか?」


「はい、どうぞ」


一人の中年男性が手を挙げる。


「換金してくれるのは有り難いが、正直に言って、胡散臭い」


「あー、はい。言われると思ってました。」


セリーナは苦笑して、続ける。


「自分達で採取すれば、お金を払わずに済むのに、何故、お金を払って採取しようとしているのか?そうですね。単純に考えると、私達商業ギルド側が損をしていると思えます」


一旦、言葉を切って様子見。


「しかし、草原エリアに生えている薬草を探して、集めて、持って帰って……。正直な話、人手が圧倒的に足りません。絶望レベルです。なので、皆様の手を借りよう。という訳なのです。私達に変わって、皆様に薬草を集めて貰った方が、量が圧倒的に違います。……もう、定時で帰りたいんですよ」


最後に若干の本音。

通常業務の後に、薬草採取とか、もう、ホント、手が毎日薬草臭いのよ……。とセリーナは心の中で涙する。


「……なるほど、人手不足なら確かにな。ありがとう。続けてくれ」


男性は()()()()()()質問を終える。


「他に、質問があれば……」


しばらく、セリーナとの質疑応答が続いたが、やがて質問は出尽くし、説明も混乱なく終わる。

ダンジョンの開放は明日の昼過ぎから、と告知し、説明会は終わった。


後は、ダンジョンが開放された後に起こる問題への対処だな、と、商業ギルドマスターはギシリと執務室の椅子に身体を預ける。

く、とグラスの水を飲み干すと、一息。

さて、サイは投げられたぞ、と。



翌日、ダンジョン解放と同時に多くの民衆が訪れた。

意外だが、エルフも多く来ているということで、興味本位で聞いた所、「王都は自然が少ないから」とのこと。

草原エリアに訪れて、草原で寝転がっていたり、木に登って潜んでいたり、思い思いの方法で癒されているようだ。

時々、薬草の見分け方や採取の仕方を教えていたりもしている。

ギルドに納品される薬草も、かなりの量になっている。

ほとんど儲けはない状態で、錬金ギルドや都の調合屋、病院などに流しているが、まだまだ数は足りないようだ。


商業ギルドマスターの手には、小袋がある。

中には純度の高い魔石が幾つか。

オークションへ出品すれば、今回の赤字の補填など雑作もない。

ダンジョンマスターから、とライアスに渡された物で、ダンジョン入場数で変動させるが、今のペースなら、月1で提供出来るらしい。

一度不安になった幹部達が、薬草買い取り額を下げることを打診してきたが、これを見せて黙らせた。



……さぁ、考えよう。


いかに無駄なく、不満なく、皆が笑顔でいられるような、ダンジョンの利用方法を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ