脱獄王④
今日も1日が始まる。
といっても、朝日が差すわけでもなく、鶏が鳴くわけでもなく、目が覚めた。程度の事だ。
洗面台で顔を洗い、うがいをする。
そして、朝食を用意する。
操作はもう大分慣れた。
生野菜のサラダに、程よく焼けたトースト2枚。
果実のジュースと、厚めのベーコンが焼けた状態で2枚。
後、鳥の肝臓の塩焼き。
これで、DP1,000の消費。
オレの1日辺りのDP収入が24,000P程らしく、そこから、オレが使えるDPが2割だそうだから、4,800P程ってところか。
オレは朝食をとると、端末を操作して、移動する。
先日、溜め込んだDPを使って、ダンマス━━ダンジョンマスターに頼み込んで、立ち入りを許可してもらったトレーニングエリア。
出入口はなく、端末移動じゃないとここにはこれない。
部屋のあちこちに、トレーニング用具が設置してある。
この辺はダンマスの趣味に任せてある。
オレとしては、走り回れる空間と、重りみたいなのがあれば良かったのだが……。
「おぅ、遅かったな!」
「今日も早いっすね」
オーガの『赤鬼どん』さんが声をかけてくる。
レベルは300を超えるそうだ。
相方の『青鬼どん』さんもレベルは300超え。
普段から、ここのトレーニングエリアで鍛えているそうだ。
初めて会った日は、正直、漏らしかけた。
いや、ちょっと漏れてたかも知れない。
ていうか、厄災レベルがうろちょろするダンジョンって何だよ。
それがトレーニングとか、手に負えないぞ。
ちなみに、オレの存在は、ダンマスから各モンスターに周知されていて、手は出されない。
先日、バンパイアの若いやつ(といっても、200歳超えてるらしい)にちょっかいかけられたが、翌日、赤鬼どんさんにシメられたそうで、ボロボロの姿で謝罪にきた。
が、その場で笑顔のダンマスに、顔面握り潰されて消滅したが……。
………怖ーよ。
「ユーキの旦那に一撃入れるまで、日々精進よ」
「赤鬼どんさんが無理って、そいつ何者っすか?」
「あ?お前会ってるだろ?ここに来た日に一緒にきたやつだよ」
む?あれか。あの大臣の護衛とか言ってた。
そんな気配は微塵も感じなかったが……、それほどの手練れってことか?
「姐さんも旦那には手が出ないらしくてな、大人しくしてるのさ。
まぁ、俺等は姐さんに手も足も出ないがな。……出すつもりもねぇが」
「……色恋的な?」
「ねぇな。隙あらば殺りたいらしいが、200%返り討ちだそうだ」
「にひゃくぱー?」
「絶対ってことだよ。追い討ちのおまけ付きで」
「うへぇ」
と、雑談はコレくらいで。
オレはいつもの走り込みを始めることにした。
砂の重りが入ったベストと、両手足に鈍重の呪いがかけられた枷をはめる。
ダンマス特性で、『修行といったらコレでしょ』らしい。
コレとは別にくっそ重い亀の甲羅もあったが、オレはこっちだ。
やっぱ、見た目は気にするだろ。
走って、倒れて、休んで、走って、倒れて、休んで。
何度か繰り返すと、昼飯の時間になる。
部屋の備え付けてある端末で、昼飯を選ぶ。
昼はガッツリとステーキ。
分厚いのに柔らかく、溢れる肉汁たるや。
そのままでも旨いが、コメという穀物と一緒に食うと、ヤバい。
DP消費が止まらない。
ステーキのソースは色々選べるが、今日はワサビショーユを選んだ。
独特の辛味としょっぱさがあるが、例えようのない甘味のような旨い味が、ステーキの肉汁と合わさって、ヤバい。
口の中がヤバい。
DPヤバい。
あ、ちょ!赤鬼どんさんがたかってくる。
あ、青鬼どんさん!?あんたそんなキャラじゃないでしょ!ちょっと!
DPヤバい。マジヤバい。




