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一一二話 壁ドンならぬ、地面ドン

明けましておめでとうございます。

今年も皆様にとって良いなろうライフがお送りできますように。

「先の先?」


「えっと、まん……いえ、何かで読んだのか、人から聞いた話なのかよく憶えていないのですが……。

 武術では、相手の攻撃するタイミングを読んで、それより先に行動するという技術があるんだとか」


「へぇ。ハナビスも同じようなことを言っていたけど、特に名称はなかったな。でも、気に入った」


 私は前世も、この世界でも武術には疎いのだけど、きっとこの世界にも同じ概念はあるんだと思う。

 だけど、名称までは決まっていないのか、それぞれの流派なんかで秘伝にされているのかもしれない。


 ただ、それをスイフト様がハナビス様とバディを組んだ数ヶ月という短期間で習得していることに驚きだ。

 というより信じ難い。

 それ、達人の域ぞ。


 本当に先の先という技術を習得していたのなら、三回の攻防の内、二回はスイフト様に魔法が当たったことの説明が付かない気がするし。

 まぁそもそも漫画みたいに、相手の手札がわからない状態で殺気っ! とか言って動くこと自体が現実的ではないのかもしれないけれど。


 でもだとしたら、漫画のような先の先ではなく、違うカラクリがあるんじゃないだろうか。


 あ……手札?

 もしかして最初に私の手札の全容を把握するために、魔法を受けざるを得なかったって可能性があるんじゃ?

 私が使える無詠唱魔法の種類はバレているはずだけど、具体的にバレットやどこでもウィンドカッターの予備動作とか発動までのスピードを確認していた?


 それを把握されたから、三回目の攻防では先手を打たれた……?

 いやでも、それだけで私がバレットを発動させるのを瞬間的に感じ取って、あそこまで速く突きから軌道を変えて腕を跳ね上げるなんてできるものなのだろうか?

 他にもう一つ、何かカラクリが……。


「また、あっちで動きがあったみたいだね」


 スイフト様が顔上げていたから、つられて顔を上げると結界が銀に染まり、すぐに白に染まった。

 先程と合わせて銀杯から二人、白盾からも二人分の護石が破壊されたことになる。


 銀杯で倒されたのは、モロック様と正面から戦っていたカーイ様とセッツ様の可能性が一番高い。

 お二人が倒された後も白盾の数を減らせたのは、クレアが光のバレットかナインテイルレイを使ったんだろう。

 どちらも発動までに時間がかかる上に、魔力の消耗は激しいはずだから、継戦能力は低く、これ以上の戦果は期待しない方がいい。


 距離があるからはっきりとはわからないけど、白盾から逃げる二つの姿が見えた。

 クレアとエリック様に違いない。

 無事に、逃げてくれればいいのだけど。


「まだ黒剣は一つも護石を破壊していないようですが、わたくしにつきっきりでよろしいのですか?」


「銀杯が白盾に直接攻めてくれているおかげで、こちらの魔法は着実に白盾の護石を削れている。

 焦らなくてもそのうちいくつか破壊できるよ」


 なんだか掌の上で転がされているようで悔しいのだけど、確かにカーイ様、セッツ様を倒すために魔法の弾幕を張り切れず、白盾は少なくない被弾をしていていてもおかしくない。

 人数差もできてしまったし、白盾が魔法戦を継続するならその言葉通りになるだろう。


「白盾が魔法戦を拒否するとは思わないのですか?」


「可能性は無くはない、かな。ただ、マリアンヌ様ならこの状況でも攻勢を仕掛けてくると思う」


 あぁなるほど。

 私の知るマリアンヌ様も、ゲームの悪役令嬢であったマリアンヌも、相手から逃げるというのはイメージできない。

 正しく公爵令嬢であろうとするマリアンヌ様なら、試合である限りはこの状況でも逃げることなどせず、堂々と攻勢を仕掛けて来そうな気がする。


「さぁ、僕たちも続きを始めよう」


 そう言うや否や走り出すスイフト様に、咄嗟にバレットを放つがやはり避けられてしまう。

 態勢を低くしながら走り込んできて、勢いのまま横から剣が迫る。


 咄嗟にダガーを逆手に持ち替え、左腕の下に右手を潜り込ませてなんとかガードをするも、すぐに剣が引かれて、剣戟が次々に迫りくる。

 なんとか状況を打開しなきゃと、ウィンドブラストの詠唱を開始する。


 詠唱を開始した途端、振り下ろしや薙ぎからコンパクトな突きの連打に切り替え、上半身を狙ってくる。

 これにはたまらず詠唱を破棄して、回避に専念せざるを得なくなる。

 顔に当たればどちらにしろ、詠唱は中断されてしまうし。


 でも! でもさぁ!?

 ワザとじゃなくても! おと、お、乙女の顔に当たったらせせせ、責任取ってくれるんでしょうねぇ!?


 顔は無事だったけど何度か攻撃を食らってしまい、押し切られそうになる前に風魔を全力で放つことで態勢を崩すのに成功したから、後方に下がって仕切り直しだ。


 ハナビス様程の威力は感じなかったし、護石が痛みを緩和してくれているから、指でツンってされた程度の痛みがあるくらいで、護石の耐久力はまだまだあるだろう。

 けれど、こちらの攻撃が当たらない以上、このままじゃ徐々に護石を削られちゃう。


「やっぱり、フロストは強いね。だからこそ、君に勝ちたい」


「ぜぇ……ぜぇ……。こ、これほど一方的な展開で、わ、わたくしが強い……なんて、良く言えますね……」


「単純な実力だけじゃなくて、心の在り方も含めて、やっぱり君は強いよ。

 君はまだ諦めていないだろう? ずっと勝つ方法を考えている。そして、それを実現するかもしれない怖さがある。

 普通の生徒なら、今頃諦めていてもおかしくないと思うんだけど?」


「私にも、負けられない理由がありますから」


 ジョルジオ様と戦って、認めてもらうことと……学食の一定期間無料お食事券のために!!


 頭をフル回転させて対処法を考えていると、またしても結界の色が変わった。

 今度は黒に、だ。


 白盾の護石を破壊したのだろうか?

 それとも、先程から姿の確認できないエリーゼ様が倒されてしまったのだろうか。

 黒剣と白盾の間には、魔法の相殺でできたのか霧が発生して詳細を窺い知ることはできない。


「さて、これで僕達黒剣は魔法を放ちつつ、逃げていればいい。

 君さえ倒せれば、これ以上にない戦果になる」


 スイフト様が構える。

 一撃の威力は指ツンされる程度だった。

 だから、余程一方的な展開にならない限り、時間切れでやり過ごすことは可能だ。


 それならこのまま全力風魔を使いつつ距離を保って、時間を稼いでいる間にマリアンヌ様が黒剣の戦力を削るのを期待するのも作戦としてありなのでは?


 って、あれ?

 指ツンされる程度には感覚が護石からフィードバックがあったけど、三回目の攻防で腕を上に弾かれた時には痛みがなかったような?


 左手に目をやると、何か違和感がある。

 よ~く見れば、ほんのわずかに光を放っていた。


 これ……クレアが両手で握った時に、無意識に無詠唱魔法が発動されちゃったとか……?

 つまり……光の……手袋!?


 これなら意識して左手を右手で抑えれば、光の手袋で攻撃の衝撃を吸収しつつ、バレットを撃てる……先の先のカラクリさえ解ければ、反撃の一手になりうる。

 マリアンヌ様が黒剣の戦力を削ってくれるのを期待しつつ、スイフト様を倒せればそれこそ何よりの戦果になるじゃん!


 よし! 次で先の先のカラクリを見極めるぞ!


 私は横方向に走り出し、距離を保ちつつアクセルの準備に入る。

 走りながら両足に一回ずつ効果を付与するイメージをして、走るスピードを緩めてからウィンドブラストの詠唱を開始する。


 詠唱完了間近でアクセルを発動させ、右足で地面を蹴って距離を詰める。


「ウィンドブラスト!」


 狙いはスイフト様の足だ。

 衝撃波が足に当たれば儲けもので、地面に当たってもその衝撃でよろめいてくれればラッキー。


 結果は……バックステップ一つで無効化されてしまった。

 けど、すぐに攻めには回れないよね!


 ウィンドカッターの詠唱とどこでもウィンドカッターの準備を開始して、左足に付与されたアクセルの効果で一気に肉薄し、ダガーによる接近戦へと持ち込む。

 武器を振りながら詠唱するのはめっちゃ息が苦しいけど、こちらが攻勢に出ることで何かカラクリが見えてくることもあるはず!


「あぶなっ!?」


 ダガーの攻撃では護石に対するダメージは微量と考えたのか、削られることを厭わずダガーによる攻撃を左腕で受け、右手の剣でまたしても突きによる攻撃を仕掛けてきた。

 顔スレスレに攻撃され、またしても詠唱を破棄してしまう。


 それじゃ、次! どこでもウィンドカッター!

 って、嘘!? 体当たり!?


 どこでもウィンドカッターを発動しようと、後ろに下がろうとした瞬間だったから、頭から落ちるかも!?

 つい目を瞑って、身体をこわばらせてしまう。


 っと!? あれ? 護石があるとはいえ、頭に衝撃がないような……?


「はわ……はわわ……はわわわわわわわっ!!!」


 目を開けると、目の前にスイフト様の顔があった。

 後頭部に微かに暖かい感触を感じられるから、地面との間に手を差し込んでくれたのかもしれない。


「戦いの最中とはいえ、女性である君を頭から倒す気はなかったんだ。ごめん、頭は打ってない?」


 イケメンがっ!? イケメンが近いぃぃぃ!!!

 しかも、壁ドン! いや違った、地面ドン!


「いえ、あの……だいじょ……えっと……せ、せせせ」


「せ?」


「せき、責任を! 責任を取って頂けますか!!」


「は?」

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