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一一三話 道連れ

 思わず責任を取ってなんて口走ってしまった私の言葉に、スイフト様はぽかんとした顔をされた。

 そして、距離の近さに気づいたのか慌てて距離を離すと。


 どこからか放たれた魔法が、私とスイフト様の間を通り抜けた。

 魔法が放たれた方向を見れば、一人の生徒がゆっくりと膝をついている。


 ロラン様が詠唱変化で魔法を放った?


「なっ!? この距離でここまで正確に狙ってくるなんて、まるで狙撃手だね……。とはいえ、この距離を何度も正確に狙ってくるのは難しいだろうし、詠唱変化させた魔法を使い続けたんだ。魔力が底を尽きたみたいだし、もう邪魔は入らない」


 ふぅ……イケメンの顔が近すぎてパニックになりそうになったけど、今のでちょっと落ち着いた。

 うむ、なりそうになっただけでなってはいない。

 いいね?


 間近に迫ったスイフト様の顔を思いだして顔が火照りそうになるのを必死で振り払い、さっきの攻防を振り返る。

 これまでの攻防と合わせてわかった事が一つ。

 私が詠唱を開始すると詠唱を確実に阻害しに来るということ。


 それが何を意味するのか……。

 行動を制限しようとしているのだと思う。


 詠唱魔法を使えないとなれば、私は無詠唱魔法を使うしかない。

 無詠唱魔法はいくつか使えるけど、攻撃手段として使えるのは実質バレット、どこでもウィンドカッター、エアーズガーデンくらい。


 エアーズガーデンを発動するには集中が必要だから、一対一の戦闘では実質バレットとどこでもウィンドカッターの二つだけ。


 行動のタイミングを読まれていたのは間違いないと思う。

 でも、先の先の本質的なカラクリは行動を絞りこみ、さらにどちらかの行動を取るように誘導するようなものかもしれない。


 行動が制限されるのは、実戦と同等に考えて反射的に攻撃を防いだり、避けているからだ。

 実戦であれば武器で攻撃されるのを防がなければいけないのは当然だけど、今は護石に守られた試合。

 顔はともかく、それ以外なら攻撃を受けるのを覚悟さえしていればある程度行動制限を外すことはできる。


 行動制限を外しても、タイミングを読まれている以上こちらが起死回生の一撃を狙っても避けられてしまう可能性は十分にあるね……。


 だから、心理戦を仕掛けてみよう。


「ところで、一つお聞きしたいのですが」


「何? さっきのお詫びというわけじゃないけど、僕に答えられることなら」


 スイフト様は私との距離を一定に保ちつつゆっくりと歩きだす。


「先の先で、ハナビス様に訓練で勝ったことはあるのですか?」


「……早くも前言撤回したいよ。君にあまり情報を与えたくないんだけど、勝てなかった」


 とある場所で立ち止まり、お手上げのポーズをして答えてくれた。


「訓練で打ち合える時間は伸びたけれど、攻撃がわかっていても押し切られた、で合っていますか?」


「これ以上はノーコメント」


「ありがとうございます」


 苦々しい顔をなさったので、図星と考えていい。

 先の先で何をしてくるか分かっても、先手を取れないくらい速い攻撃には対応できないということだ。


 わかったが、うん。

 接近戦では、私の手札にそんな物ないね。


 距離さえ取れれば、やりようはある。

 最初にバレット・マグナムが候補に上がるし、発動さえできれば不可避だろうエアーズガーデンもある。


 実戦なら、どちらも一対一の場面では発動までに時間が掛かりすぎて使えない。

 けど、さっき考えた通りに護石で守られたこの試合なら無理を通せなくはない。


 スイフト様はさっきの応答で、私が何かを企んでいると考えているに違いない。

 数度の攻防で私が取った行動と別なことをすれば警戒して、タイミングを把握されて同じ攻撃は通用しなくなる。


 光の手袋の効果も後一回が限界かもしれない。

 チャンスは一度。


 次で、決める。




「君は僕をどう倒すか考えているけど、自分が倒されることをあまり考えていないよね?」


「?」


「実はさっき、一つだけ嘘をついた。黒剣は逃げていればいいなんて、ね。

 僕の攻撃だけじゃ君の護石を削り切れないかもしれないことは予測できていたんだ」


 スイフト様の後ろから、黒剣の集団による魔法が放たれていた。


 どゆこと!?

 これじゃ、スイフト様も巻き込んじゃうのでは!?


 そんなことは構わず、スイフト様がこちらに向かってくる。

 魔法は、よく見れば三つだけ。

 白盾への牽制もあるからか、数が少ないのが救い!?


 魔法に気を取られすぎて、牽制もできずに接近戦の距離に。

 スイフト様の狙いは私の態勢を崩し、魔法の射線に入れることだった。


 結果は、私とスイフト様共に黒剣の魔法を一発ずつ被弾した。

 味方の攻撃でも護石にダメージは蓄積されるのである意味痛み分け。


 けど、今までの攻防でどちらの方が護石へのダメージ蓄積が多いか正直よくわからない。

 スイフト様の攻撃は私は何度も食らっているけど、最初の攻防でこちらも無詠唱魔法を当てている。


 もしや、道連れを狙っている!?


 アクセルで逃げることが頭をよぎるもそんな猶予をくれるはずもなく、魔法が放たれていない間は苛烈に攻められ、魔法の第二波がやって来る。


 結果は、第一波と同じく私とスイフト様は一発ずつ被弾。

 その後も同じ攻防は続き、第三波の魔法は私だけが一発被弾。


 やばい……。

 第三波はあきらかに味方の魔法を予測して動いていたっぽい。

 防戦一方のままじゃ負ける……。


 賭けに出るしかない。


 上手くいけば倒せてラッキー。

 倒せなくても、隙を作れればアクセルで一気に逃げよう。

 クレアとエリック様は白盾との戦闘から逃げていたから、私がこの場を離れて黒剣が二人を狙ってももう大丈夫なはずだ。


 第四波が放たれる前からバレット・マグナムを発動できるようイメージを開始する。

 スイフト様の攻撃は防がなくていい。

 集中すべきは、マグナムの準備と飛来する魔法だ。


 まぁなんていうか。

 殊の外、同時に二つのことをするのは上手くいかなかった。

 私の右手に準備できたバレットは風の銃身が短く、マグナム程の威力は到底期待できそうにない代物だった。


 ただ、飛来する魔法はずっと目に捉えていた。

 左手にはクレアが無意識に掛けてくれていた光の手袋がある。


 衝撃を極端に吸収する効果があるそれで、魔法の衝撃を吸収しつつ軌道を変え、スイフト様に当てて態勢を崩す一回だけのチャンス。


 後は私の動体視力だけが問題!!


 スイフト様の攻撃に対して、一切の防御を捨てて飛来する魔法にタイミングを合わせて……えい!!


 掴むようにして手のひらで魔法を受け、スイフト様の方へ軌道を変えることに成功!!

 けど、私が防御を捨てていたことに違和感持っていたのか、避けられてしまう!?


「まだまだぁ!」


 銃身は短いけれどバレット・マグナムを発動させると今度は命中!


 スイフト様は後ずさったけれど、期待した光は発生しない。

 護石を破壊するには至らなかったのだ。


「ふ、ふふ。ははは! やっぱり君は強い。でも、面白い。ハナビスの気持ちが少しだけわかったよ」


「いや、あの……そういうのは本当にハナビス様だけで十分ですから……。

 ところでスイフト様? わたくし、逃げます!!」


「おっと、そうはさせない」


 宣言と同時に走り出す私と、剣を斜めに掲げるスイフト様。

 アクセルの準備が出来そうな直前、黒剣の魔法第五波が私の目の前で進路を塞ぐように着弾した。

 そしてその隙にスイフト様が距離を詰めてきた。


 うっわ、本格的にヤバイのですが!?


「お姉様ー!」


 いつの間にかクレアがこちらに向かってきていて、すでに五〇メートルくらいの位置から叫んでいた。

 白盾から逃げた後、追ってこないからかこちらに向かって来てくれたみたいだ。


「これで、形成逆転ですね」


「さすがに分が悪いね。勝負はお預けにしよう」


 正直、退いてくれてすっごく助かる。

 ここから撤退するべく、スイフト様は私から距離を取りながら周囲を確認して、ギョっとする。

 エリック様が真横からスイフト様に襲い掛かったのだ。


「フローレンシアちゃん! 僕を巻き込んでもいいから攻撃するんだ!」


「え、えぇ!?」


「くそ! 正気か!?」


「あぁ、正気だよ。Cクラスの僕がAクラス生徒を倒せるなんて、こんな大番狂わせないだろ?」


「確かに……ね。でも、君の実力じゃないし、Aクラスの力を舐めないでほしいな!」


 不意をついて攻撃したはずのエリック様だったけど、先の先の前にすぐに劣勢へと追い込まれる。


「フローレンシアちゃん、早く……っ」


「は、はいっ」


 バレット・マグナムもどきを始め、全力風魔など魔力消費が激しく、一撃で倒すような手段が取れない。

 詠唱魔法とバレットを合わせて攻撃を開始するも、うまく立ち回られて思うようにダメージを与えられない。


 すると、クレアが私の元に辿り着いた。


「はぁ……はぁ……大丈夫ですか、お姉様」


「え、えぇ、私は。でも、エリック様が……」


 走りながら見ていたのか、状況はクレアも理解しているようだった。


「エリック先輩! 光のバレットを使います。三分、耐えて下さい! お姉様もエリック先輩のフォローをお願いします」


「わ、わかった」


 言葉の通り、私はバレットでスイフト様が逃げれないように牽制をし続けた。


「エリック先輩!」


 クレアが呼ぶと同時にエリック様はなんと武器を捨て、攻撃されることも厭わずにタックルをして二人して地面に転がる。


 エリ×スイ!?

 地面ドン再び!?


「撃て! クレアちゃん!!」


「はいっ!」


 クレアの指先から放たれた光の弾丸が二人を貫き、二人は光に包まれて結界の外へと飛んで行った。




 その後、私とクレアは海側へと逃げ込み試合終了となった。


 白盾はエリーゼ様が作ったであろう霧を利用した。

 エリーゼ様を追い立てるように黒剣側へと追いやって接敵させ、自分達は霧を利用して黒剣へ近づいていき、中位魔法を中心に強襲を仕掛けた。


 結果、黒剣を三人倒したが、残りは散り散りに逃げられてしまったようだ。

 なお、エリーゼ様は奇跡的に生存された。


 こうして第四試合は幕を閉じた。



 第四試合結果

 銀杯 三名失格 二年生:エリック、カーイ、セッツ

    残り:十名


 白盾 四名失格 一年生:モロック、Bクラス生徒、Cクラス生徒 二年生:Bクラス生徒

    残り:十名


 黒剣 四名失格 一年生:スイフト、Cクラス生徒二名 二年生:Bクラス生徒

    残り:十名

フ)長くなりましたが(分量的にもリアル期間的にも)、第四試合終了です

サ)さすがに少し冗長でしたね

フ)これでも結構書き直したんだけどね。第五試合はもう少しスッキリできるように精進します…


ク)第五試合執筆のため、また一ヶ月間のお休みをいただきます。

  次回更新は、2/19(日)予定です。

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