一一一話 それはきっと、男の意地
スススッス、スイフト様は一体何ををを?
スイフト様には、アアアアアアニ―様という人がががっ!?
「どどどど!? どういう意味ですかっ!?」
「? 言葉通りの意味だよ。君を孤立させて僕が戦う。そして、護石を破壊させてもらう」
ま ぎ ら わ し い !!
私(の護石)が欲しいってことね!?
あーもー! 変だと思った!
わた、私なんかが欲しいなんて、えーえーそんなこと言われるわけないよね!
ドキッとして損した!
絶対ぎゃふんと言わせてやるんだからっ!
「僕と一対一なら勝てると、今そう思ったね?」
いえ、思ってません。
ぎゃふんと言わせたいとしか。
思わぬスイフト様の台詞に私が言葉を返せないでいると、スイフト様はそのまま続ける。
「何も勝算なくこの状況を作ったわけじゃない。断言するよ。君はアクセルで逃げることはできても、僕を倒すことはできない。少なくともこの試合ではね」
「わたくしが逃げることは容易なのですね。
それなら、この状況を作らずとも先程の状況を維持した方が良かったのではないですか?」
「あのアクセルって魔法がある以上、大人数でフロストを包囲するか、ハナビスを正面からぶつけるくらいしか防ぐ方法はないからね。
だけど、君がここから逃げたなら、僕は黒剣の全員でクレアを狙うよ。
いくらクレアでも前後から攻撃されればいずれ魔力が切れて、護石は壊れてしまうだろうね」
「クレアを!?」
「君がここから逃げた時の話しさ。
話しを戻すけど、戦況を維持して銀杯と白盾の人数を減らすことより大事なことがあるんだ。
質問を返すようで悪いけど、フロストは第三試合のアニーと殿下の戦いは見たかい?」
「……もちろんです。とても良い戦いだったと思います」
「そうだね。確かに良い戦いだった。けど、僕はこれからの試合、Aクラスの人数が多い方が勝つと思わされる内容だったよ。アニーは殿下に食らいつけていたけど、やっぱりAクラスとB、Cクラスの力の差は大きいと思った。
もちろん、複数人で戦えばAクラスの生徒と言えども護石の破壊は可能さ。けど、逆を言えば一人に複数人を割かなければならないということでもある」
「それならやっぱり、ここで全体の人数を減らしておく方が得策なのではないでしょうか」
「それも正しいんだけど……君にしては珍しく先が見えていない気がするね。武闘会のルールと照らし合わせてみてよ」
「あ……」
単純な話だ。
武闘会のルールで、一つ以上敵チームの護石を破壊しないと、出場した生徒は全員失格になる。
三つ巴の戦いだから、絶対というわけではないけれど、自分達のチームから一試合毎に一人以上の生徒が失格になる可能性は極めて高い。
試合が進むにつれて出場できる生徒が減っていくし、人数が一定以下になるまで連戦ができない。
一人のAクラス生徒に対して複数人で戦うという状況が、どんどんと作りにくくなっていくんだ。
第五試合が終わる頃には、各チームの人数は十人以下になる。
試合に出れる人数は作戦にもよるけど、その半分の五人前後。
そんな状況で一人に複数人を当ててしまえば、他の生徒が人数差で逆に倒されてしまう。
それなら、Aクラス生徒にはAクラス生徒をぶつければいい。
けど、それまでにAクラス生徒が少なくなってしまっていたら……。
「わかったくれたみたいだね。できるだけ早い段階でAクラス生徒を削る。これが最善だと僕は考えているんだ。
今は銀杯と黒剣の二チームで白盾を攻撃する状況が作れているから、僕が維持する必要はもうない。
銀杯も黒剣も、マリアンヌ様次第では被害が大きくなるだろうけど、モロックと数名の生徒は倒してくれるはずだ。
さて、この状況が作れたのなら、僕が次に狙うべきは予想が出来ず、きっちりと成果を上げる生徒だ。
第二試合で予想もしない行動を取って、成果を上げた生徒、つまり、君だよフロスト」
「……わたくしのことを、買いかぶりすぎでは?」
「いや、君にはそれだけの価値がある。やっぱり僕は、君がほしい」
「んなななっ!?」
またしてもな台詞に、またしてもドキドキさせられたっ!
頭が沸騰しそうになる寸前で、結界が白に染まり、続いて、銀にも染まった。
「向こうは随分と忙しないみたいだ。僕達もおしゃべりはここまでにして、始めるとしようかっ!」
誰がやられてしまったのか、そんなことを考える余裕も無くスイフト様が動きだす。
私の純情を弄んで、その隙に攻撃をして来ようだなんて、酷過ぎじゃない!?
くそう! 純情を踏みにじった責任は取ってもらうんだからっ!!
スイフト様との距離は二〇メートル程。
一息で詰められる距離じゃない。
私は一度息を吐いて心を落ち着かせると、左手の指先で拳銃を作ってスイフト様に照準を合わせる。
さらに、ウィンドカッターの詠唱を開始して、右手でダガーを構える。
スイフト様の接近戦の実力は、Bクラス上位くらいのはず。
ハナビス様との戦いも切り抜けられたし、いつもサラに訓練してもらっているんだ。
落ち着いて戦えば勝てる!
バレットの最大の利点は速射性。
スイフト様との距離が一〇メートルを切った所で、風の弾丸を撃ちだす。
そのタイミングにぴったりと合わせて、スイフト様は横に軽くステップしてバレットを避ける。
構わず続けて二射するも、その全てが避けられてしまう。
回避に動いた分、私とスイフト様の距離は縮まらなかったが、こうも簡単に避けられるとは思ってもみなかった。
再びこちらに向かってくるスイフト様に対し、詠唱魔法のウィンドカッターを放つ。
距離が近いからか詠唱完了のタイミングを把握されてしまい、あっさりと避けられてしまう。
そして、スイフト様が接近戦の間合いへと入ってくる。
振り下ろされるロングソードにダガーを合わせ、その力を下へと受け流し、その勢いに乗って後ろ飛び下がり、同時にバレットを二発発動させて直撃させる。
剣の重さはハナビス様程じゃないけど、思った以上に腕に響く。
長期戦になれば、いずれ私じゃ受けきれなくなる。
けど、この攻防を続けていれば先に私がスイフト様の護石を破壊する可能性のが高いはず。
「……フロスト。確かに僕はハナビス程強くないよ。だけど、弱いままでは居たくない。いや、強くなりたいんだ。大事な人を守れるくらいには。
少なくとも、対等であることを証明しなくちゃならない」
「……」
どゆこと? ごめんなさい、ちょっと理解が追いつきません……。
「ハナビスとバディを組んで、褒められたことが一つだけあるんだ。僕は、目が良いみたいなんだ」
「戦術眼、ということでしょうか?」
「それもある。けど、それだけじゃない。
僕はもう、さっきみたいに君のバレットは食らわない。僕が、勝たせてもらう!!」
スイフト様にしては話が飛び飛びな気がする。
説明を求めます!
なんて考えていたら、スイフト様が走り込んでくる。
私は、迷ってしまった。
さっきと同じことをしてもまた避けられてしまうのではないか? という迷いだ。
目が良い、というのが引っかかる。
指先からバレットの照準が読まれている?
それなら同じことをしても無駄かもしれない。
接近時に避けられたのはたまたまという可能性もあるけど、次は違う手で迎え撃とう。
さっきと同じように左手で拳銃の形を作り、右手でダガーを構える。
だけど、使う無詠唱魔法はどこでもウィンドカッターだ。
バレットを警戒させた所で、詠唱魔法のウィンドカッターと無詠唱魔法のどこでもウィンドカッターで奇襲をかける。
考えがまとまる頃には、スイフト様が接近戦の間合いに入ってくる。
先程と違うのは、半身になるように体の向きを変えて、コンパクトに突きを狙いに来ていること。
地味に嫌な攻撃だった。
半身にされることで、正面から狙える面積が小さくなる。
突きは振り下ろしのような線の動きではなく、点の動きなので、ダガーでは受ける難易度が格段に上がる。
私はダガーで受けるのではなく、避けることを選択する。
スイフト様の攻撃はハナビス様程鋭くはないけど、コンパクトに何度も突いてくるので、私は避けるのに必死になって詠唱を中断してしまう。
幸い、こちらの無詠唱魔法による反撃を嫌がってか深くは踏み込んでこない。
何度目かの突きを避けた所で、どこでもウィンドカッターをスイフト様の横から発動させる。
同時にスイフト様は後ろに飛び退いていた。
どこでもウィンドカッターはギリギリ当たったけど、読まれていた……?
詠唱魔法と違って、無詠唱魔法は発動タイミングが分かり辛いはずなのに?
「うん。大体わかったかな。さあ、次行くよ!」
先程の攻撃を繰り返すように、スイフト様が半身になって突きを放ってくる。
考えている暇は無かった。
咄嗟に避けながらもバレットで迎撃しようとして……。
「っ……!?」
左手は、腕ごと肩より上に上がっていた。
咄嗟に私は飛び下がりながら、ダガーを握る右手の人差し指を伸ばしてバレットを乱射する。
その全てを避けられてしまったものの、なんとか距離を空けることができた。
何? 何が起こった?
バレットを撃とうとする瞬間に、突きの軌道を変えて左手を斬り上げた?
私の攻撃タイミングが読まれている?
あ、私これ知ってるかも!?
漫画とかで見たことある奴、確か……。
「先の先……?」




