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三か月ほどかけて、どうにかこうにか、やっと、家中のものが片づいた。
六畳間の押し入れに押しこんだ段ボール箱が家に置いとくもの、ゴミ袋につめたものが捨てるものだ。そのゴミ袋も、燃えるゴミ、不燃ゴミ、資源ゴミと三種類に分けた。
部屋の床一面にゴミ袋がすきまなく並んでいる光景は、なかなか壮観だ。めったに見られるものではない。今日が燃えるゴミの日でよかった。せっせと門の前まで運んでいると、携帯が鳴った。また都さんのいじわるかしらと思ったが、友人の真奈美からのメッセージだった。真奈美は元同僚で、今も同じ会社で働いている。
真奈美【そっちはどう? 落ち着いた?】
沙織 【うん、けっこう慣れた】
真奈美【でも暇じゃない?】
わたしは少し考えた。
沙織 【余白がある、って感じかな】
沙織 【何もしない時間が自然にあって、その何もしない時間に、いろんなことに気づくようになったんだ】
真奈美【沙織、変わったね】
沙織 【え、そう?】
真奈美【うん、楽しそう。前より】
それから、今度の休みに真奈美がうちに遊びにくるという約束を交わし、メッセージを終わらせた。
とてもうれしかった。そっか、わたし変わったんだ。
「えへへ」と笑っていると、
「こら、何にやにやしながら携帯を見ているんだよ」
ふいに背後から抱きしめられた。土と汗の匂い。隼人だ。
「あ、おかえり。友だちからラインがあってね、今度遊びにくるって約束したの」
わたしは彼の腕のなかで見あげた。
「友だち?」
「うん、真奈美っていう子なの。同じ職場で働いてたんだ」
「それはよかったな。ごきげん通帳に書かなきゃ、ただいま」
額に、ちゅっ、と口づけされる。
「おれも報告があるんだ。直売所、来年の春からはじめることになった。おれのブランド野菜だぞ、すごいだろ」
「えっ、ほんと? おめでとう! なんて名前にするか決めてる?」
「んー、そうだな。春江さんを偲んで、ごきげん青果とか?」
「いい感じ!」
わたしたちは笑いあった。
これからどんなことが待っているのか、それは誰にもわからない。
ドラマチックでもなんでもない、起きるのはみんな小さなできごとだ。
だけど、泣きながらでも笑いながらでも、ここで自分の人生を歩いていくんだ。そんな予感に胸を膨らませながら、わたしは今日もごきげん通帳に書きこむ。
また明日もきっと、いい日になる。
平凡な日になることを願って――。
『今日も生きてて、わりとごきげん』
そして、パタンと閉じた。
END
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