↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も生きてて、わりとごきげん  作者: このはな
最終話 わけあうごきげん

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/54

9


 三か月ほどかけて、どうにかこうにか、やっと、家中のものが片づいた。


 六畳間の押し入れに押しこんだ段ボール箱が家に置いとくもの、ゴミ袋につめたものが捨てるものだ。そのゴミ袋も、燃えるゴミ、不燃ゴミ、資源ゴミと三種類に分けた。


 部屋の床一面にゴミ袋がすきまなく並んでいる光景は、なかなか壮観だ。めったに見られるものではない。今日が燃えるゴミの日でよかった。せっせと門の前まで運んでいると、携帯が鳴った。また都さんのいじわるかしらと思ったが、友人の真奈美からのメッセージだった。真奈美は元同僚で、今も同じ会社で働いている。


 真奈美【そっちはどう? 落ち着いた?】


 沙織 【うん、けっこう慣れた】


 真奈美【でも暇じゃない?】


 わたしは少し考えた。


 沙織 【余白がある、って感じかな】


 沙織 【何もしない時間が自然にあって、その何もしない時間に、いろんなことに気づくようになったんだ】


 真奈美【沙織、変わったね】


 沙織 【え、そう?】


 真奈美【うん、楽しそう。前より】


 それから、今度の休みに真奈美がうちに遊びにくるという約束を交わし、メッセージを終わらせた。


 とてもうれしかった。そっか、わたし変わったんだ。


「えへへ」と笑っていると、


「こら、何にやにやしながら携帯を見ているんだよ」


 ふいに背後から抱きしめられた。土と汗の匂い。隼人だ。


「あ、おかえり。友だちからラインがあってね、今度遊びにくるって約束したの」


 わたしは彼の腕のなかで見あげた。


「友だち?」


「うん、真奈美っていう子なの。同じ職場で働いてたんだ」


「それはよかったな。ごきげん通帳に書かなきゃ、ただいま」


 額に、ちゅっ、と口づけされる。


「おれも報告があるんだ。直売所、来年の春からはじめることになった。おれのブランド野菜だぞ、すごいだろ」


「えっ、ほんと? おめでとう! なんて名前にするか決めてる?」


「んー、そうだな。春江さんを偲んで、ごきげん青果とか?」


「いい感じ!」


 わたしたちは笑いあった。




 これからどんなことが待っているのか、それは誰にもわからない。


 ドラマチックでもなんでもない、起きるのはみんな小さなできごとだ。


 だけど、泣きながらでも笑いながらでも、ここで自分の人生を歩いていくんだ。そんな予感に胸を膨らませながら、わたしは今日もごきげん通帳に書きこむ。


 また明日もきっと、いい日になる。


 平凡な日になることを願って――。



『今日も生きてて、わりとごきげん』



 そして、パタンと閉じた。




END



最後までお読みくださり、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。