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今日も生きてて、わりとごきげん  作者: このはな
最終話 わけあうごきげん

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6


「沙織さん、おつかれさまでした」


 片付けを終えたあかりさんが、満足そうに目を細めて、わたしの隣に立つ。


「大成功ですね、沙織さん。みんな、自分の書いたカードを誰かが読んで笑っているのをうれしそうに見ていました」


「はい、おばあちゃんが言っていた通りでした。『ごきげん』を数えると、明日が来るのが待ち遠しくなるって。それをみんなで分けあえたみたいで、すごく贅沢な時間でした」


「ふふ、春江さんもきっと、空の上で得意げに笑っていますよ」


「だと思います。ガッツポーズしてますね」


 あかりさんの言葉に、わたしも深くうなずいた。


 ごきげんって結局のところ、暮らしの中にひっそりと咲く小さな花みたいなものなんだ。気づくか気づかないかは自分しだい。


(おばあちゃんは、そのことをちゃんと知っていたんだね。ありがとう、おばあちゃん)


 たくさんのごきげんカードを眺めながら、そんなふうに考えているときだった。


「あんた、春江さんとこの孫かね?」


 背が低く、ぶかぶかの中折れ帽子をかぶったご老人に話しかけられた。


「あ、そうです。沙織といいます」


 そのご老人は帽子の淵を押し上げながら、わたしをじっと見つめてくる。


「春江さんにそっくりじゃあ」


 そして、うれしそうにしわくちゃな顔で笑った。


「そんなに似てますか?」


 前に日高さんからも似ていると言われた。あかりさんも入れて、これで三人目だ。よほど似ているんだなあって思っていたら。


「うんうん、似てる似てる」


 ご老人はひとりで納得し、コツコツ杖をついて去っていく。


 どなたか名前を聞くのを忘れてしまった。ポカンとしていたら、あかりさんが教えてくれた。


「すみません、わたしの父なんです」


「あ、こちらこそ。そうとは知らず……」


「あと、ついでに言うと、うちのオーナーです。春江さんと同級生の」


「そうだったんですか!?」


 男性だったなんて。お友だちっていうから、てっきりお母さまの方だと思っていた。


 だめだな、わたし。まだまだ修行が足りてない。思い込みと言う名のフィルターをはがすには時間がかかりそう。


 なんだかこの街には、わたしの知らないことがまだまだたくさんあるみたいだ。



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