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今日も生きてて、わりとごきげん  作者: このはな
最終話 わけあうごきげん

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5


「はい、これ。駅前の肉屋と、あっちの案内所にあった分な。いやあ、すごい熱気だな」


 隼人は額の汗をぐいと拭いながら、手にしていた色とりどりのカードを差し出してきた。


「うわあ、たくさん! ごくろうさま、隼人」


 受けとったカードには、どれもささやかで、けれどあたたかい日常の「ごきげん」が詰まっていた。それを一枚ずつ、バランスを見ながらボードにピンで留めていく。


 ふと、その中の一枚に目が留まった。


 力強い、けれど、どこか見覚えのある筆跡。


『幼なじみの笑顔が戻った。大ごきげん』


 胸が、ドクンと跳ねた。


 あわてて振り返ると、隼人はすでに次の回収に向かうところだった。公民館の駐車場へと走っていく後ろ姿が見えた。


 頬が熱くなるのを感じながら、わたしはそのカードをボードの一番目立つ場所にピン留めした。




 夕方になり、マルシェが閉幕を迎える頃には、公民館の壁は数え切れないほどの「ごきげん」で埋めつくされていた。遠くから見ると、まるで色とりどりの花が咲いたかのように鮮やかだ。わたしはしばらくひとりで、お花畑のようなボードの前に立っていた。


 さっきから考えているのは、「ごきげんは自分で作るべし」というルールのことだった。そのルールの意味を、隼人とふたりで考えたとき、「ものごとをポジティブにとらえること」という答えで一応の決着をつけていたけれど、本当にそれだけだろうか、ポジティブに考えることと、ごきげんを数えることは、少しちがうような気がしているからだった。


 普通ならポジティブ思考は、マイナスをプラスに変えようとすることだ。でも、おばあちゃんのごきげん通帳は変えようとしていなかった。


 ずっとわかったようでわからなかったことが、すとん、と腑に落ちた。


 誰かが用意してくれるのを待っていたら、しあわせはいつまでも見つからない。自分で目を向けないと、そこにあっても気づかない。だから「作る」なんだ。


 仕事がうまくいかなくて、恋愛がうまくいかなくて、体まで言うことをきかなくなって、全部自分の弱さのせいだと思っていたけれど。


『泣きながらでも生きているなら、それだけでいい』


 おばあちゃんの手紙の言葉が、今になって別の重さで響いてくる。



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