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ざっと思いつくだけでも考えるべきことはたくさんあった。まずテーマを設定しなければならなかったし、予算もあまり多くかけられない。もちろん火気厳禁。都会でよく見られるような、大がかりなイベントなどはできない。
隼人によると、マルシェの主催は町内会と組合だそうだ。そして、彼らはどうも張り合っているらしく、見えない火花を散らしているというのだ。
とは言っても、マルシェ自体は毎年やっていることだし、お野菜なんかも安く売られるということなので、おおむね好評なのだそうだ。そのため集客については、なんとかなりそうだ。
残る問題は、目玉をどうするかってことだけだった。意気消沈し、「うーん」と再び考えこむ。さすがに、すぐアイディアは浮かばない。
「わたしが町内会長につかまったから……」
あかりさんが謝りかけたので、わたしと隼人はそろって立ちあがった。
「そうじゃないですよ、あかりさんのせいじゃありません」
「じいさんたちが急になんかやってやろうって、そんな欲をかいたせいだから」
あかりさんは目を丸くして見ていたけれど、「おふたりとも息がピッタリですね」と笑いだす。どちらからともなく目をあわせてから、わたしたちは再び腰を下ろした。
なんかやりにくいなあ。
「で、どうする? 何か思いついた?」
わたしが先をうながしたら、隼人は「全然」と首を横に振った。
「もう、頼りない」
「思いつかんのだから、しょうがねえじゃんか。沙織ちゃんだって考えてよ」
「もちろん」
などと、いきがってみたものの、すぐため息がもれた。
不安げなあかりさんの視線と、それ見たことかとニヤニヤと笑って高みの見物を決めこむ隼人を視界の端で捉えながら、どうしたものかと周囲をめぐらしてみると――。
あるものが目に入り、とつぜん目の前が開かれたような気がした。
「あ、そうだ。あれがあるじゃない!」
わたしが声をあげると、あかりさんと隼人は「えっ」と言ってふり返り、わたしの視線と同じ方向を向く。そこの壁一面にごきげんコーナーがあった。
「ここと同じように、みんなのごきげんを書いてもらって展示するのはどうですか?」
「そりゃいいや、予算もあまりいらないし、カードとペンだけだもんな。貼る場所は公民館の壁でいいんじゃね?」
「各お店に置いてもらって、お客さんに書いてもらうわけですね。それなら大きな負担はありませんね」
マルシェの日まで残り半月を切っているけれども、活路は見えてきた。やっと話がまとまった。企画をまとめるのは、こういうことにいちばん慣れているわたしがやることになった。お願いされたのではなく、わたし自らが手をあげたのだ。
「さっそく家に帰って作ってきます」
「沙織さん、よろしくお願いします」
「それでは、また。コーヒーごちそうさまでした」
カフェを出ていこうとしたら、隼人もいっしょについてきた。




