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今日も生きてて、わりとごきげん  作者: このはな
第六話 ごきげん通帳は袋とじ

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「うん、これ。いつ渡そうかと思ってた。けど、今日しかないなって」


 隼人はそう言って、わたしにノートを手渡してきた。


「隼人、これ……!」


 その先の言葉が出てこない。


「そう、ごきげん通帳。正真正銘、最後のだよ」


 そんなことってある? 新しいごきげん通帳が現れるなんて……!


 まったく予想外の出来事に、わたしはあ然とした。涙までひっこんでしまった。


「どうして、隼人が?」


 やっと声を出したら、隼人はちょっと面白がっているようにニッと口のはしを上げた。


「ずっと預かっていたんだ。わたしが逝ったあと、ここぞと言うときに沙織ちゃんに渡してくれって、春江さんに頼まれて」


「ええっ、ホント?」


「ただし渡してもいいし、渡さなくてもいいってさ。おれに判断を任せるって言ったんだよ。バレちゃいけないから、軽トラのダッシュボードのボックスに隠していたんだぜ」


「そうだったんだ……」


 渡されたごきげん通帳を改めて見直した。表紙には、おばあちゃんの文字で『ごきげん通帳』と書かれていて、日付も今までの中でいちばん新しいものになっていた。


「おかげでこっちは、いつバレやしないかと、ひやひやもんだったんだぞ。約束を果たせてよかったよ」


 隼人はわたしのおでこを人差し指で、軽く押すようにつつく。それから、両手を頭のうしろにやって、ぐっと背筋を伸ばした。


「はあー、スッキリした。やれやれ、重い宿題だった。勘弁してくれよなあ、春江さん。恨むからなあ!」


 夕焼け雲に向かって大きな声で言う。


「生きている方が死んでいるひとを恨むの?」


「べつにいいだろ」


 それがあまりにも情けない言い方だったので、わたしはつい笑ってしまった。


「そうだね、そういうのもいいかもね。あのおばあちゃんのことだから」


「お、いつもの調子がでてきた。もう、ひとりでもだいじょうぶそうだな」


 話を切り上げられそうになったので、あわててしまった。



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