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「それはもう聞いた」
「えっと、そうじゃなくて、なんの関係もないのに巻きこんだこと……家族じゃないのに……びっくりしたでしょう?」
できるだけ明るく笑おうとした。でも乾いた笑いにしかならない。
言葉を探しているのか、戸惑っているのか、隼人は黙っている。
「怒っていいんだよ?」
つけ足すように言ったら、隼人はこぶしを握りしめた。
「ああ、怒った。正直ムカついたよ。名前も顔も知らない、その男に。そいつは、このことを知っているのか?」
わたしは首を横に振った。
「なんで? 理由、聞いていい?」
なんで? ああ、なんでだったんだろう。わたしは他人事のように思える自分に少しあきれながら口をひらいた。
「自分の不注意で流産したの。わたし自分のからだのことなのに妊娠に気づいていなくて、申し訳なさすぎて別れたんだ。それでも彼は結婚しよう、こんなご時世だから子どもはいらないって言ってくれたんだけどね。わたしは、彼の気持ちに応えることができなかった。怖かったんだ。だから、ここに逃げ帰ってきたの」
「そいつのこと、好きだった?」
「それだけは断言できる。できるなら、産みたかった。初めて心から愛したひとだったもの」
一瞬の間があいた。
「そっか。なら、おれがゴチャゴチャ言うことないな」
隼人は、それ以上たずねてこなかった。わたしの頭を抱いて、「がんばったな」となぐさめてくれた。
昨日あんなに泣いたというのに、わたしはまた泣いていた。そうして、壊れそうになっていた自分にやっと気づく。
「ごめん、また泣いちゃって」
笑おうとしたけれど、うまく笑えない。
「無理することない。おれしか見てないから。あと、春江さん」
「おばあちゃん……?」




