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「藤原さん、体も心も、今は本当にクタクタなんだと思います。流産のあとに気持ちがひどく落ち込んだり、不安定になったりするのはね、決してあなたの心が弱いからじゃない。ホルモンのバランスも崩れるし、誰にだって起こるごく自然な反応なんです」
先生のやさしい説明に、緊張していた気持ちがほどけていく。
「数ヶ月、あるいはもっと長い時間がかかるかもしれないけれど、無理に『元気にならなきゃ』なんて思わなくていいからね。悲しいときは、ちゃんと泣いていい。その悲しみを、ひとりで全部背負い込もうとしたら潰れちゃいます。さいわい、小沢くんもいることだし……今は周りの手もたくさん借りて、まずは自分の心と体を一番に甘やかしてあげてください」
説明を終え診察室を出てからも、隼人はわたしの手を握ってくれていた。会計も、薬局に処方箋を出して薬をもらうのも、すべて隼人がやってくれた。再び軽トラに乗せられて家に着いた頃には日が暮れていた。
「沙織ちゃんは、ゆっくり休んでて。今すぐメシの支度をするから」
軽トラを駐車場に止めるなり、隼人はそう言った。
「え、でも……」
「鳥羽先生も言ってたろ、自分の心と体を甘やかしてあげなさいって」
そう言われると弱い。
「うん、わかった……」
わたしの返事に満足したのか、隼人はニッと笑うと軽トラの鍵を抜きとり、ドアを開ける。わたしもロックを外して車から降りた。
どうして何も聞いてこないのだろう。先生の説明を受けた後も、車の中でも、隼人はわたしに質問してこなかった。おそらく、気をつかっているのにちがいない。けれど、怒っていないのだろうか。だって、巻きこんでしまったんだもの。きっと驚いたはずだ。
落ち着いてしまうと、とたんに今度は後悔がどっと押しよせてきた。罪悪感がすごかった。自分のとった行動はやはり間違いだった。隼人を家族のかわりにすべきではなかったのだ。
「隼人、待って」
玄関の中へ入ろうとした隼人を、わたしはひきとめた。
「あの、今日はいろいろごめん。昨日も」
隼人が立ち止まり、なんとなく険悪なムードが漂い始める。




