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わたしを助けてくれたのは、隼人だった。後から聞いたところによると、帰りの車の中での態度が気になって、もしやと思ったらしい。隼人がわたしの様子を見にうちに来てくれたとき、わたしは膝を抱え、わんわん泣いていた。びっくりするくらい頬が熱く、熱があるかと思ったそうだ。
背中を丸め、ぶるぶる震えているわたしを、隼人は何も聞かずに抱きしめてくれた。わたしはその胸にしがみつき、子どものように泣きつづけ、気づいたら朝になっていた。自分の部屋として使っている客間に寝かされ、窓にはめ込まれた磨りガラスの模様をボンヤリながめていた。
隼人に抱きしめられたまま、眠ったような気がする。けど、うっすらとしか覚えていなかった。眠ったのはほんの数分だったかもしれないし、もっと長い時間のような気もする。とにかく時間の感覚がなかった。
意識がハッキリしてから、どのくらいたったときだろうか。「うっす、起きてるか?」とふすまの向こうから声がした。隼人だ。さすがに恥ずかしかったので、横になったまま声をかけた。
「うん、起きてる」
「入っていい? おかゆ、持ってきた」
「うん」
わたしが返事をすると、ふすまが開いて隼人が部屋に入ってきた。彼は割烹着姿だった。それに、頭に三角巾も巻いている。まるで、おばあちゃんみたいだ。
「すっかり面倒をかけちゃったみたい、ごめん」
「いいってことよ、気にするな」
隼人はおかゆをのせたお盆を布団の脇に置いた。
「昨日より顔色がよくなってる。よかったな、たいしたことなさそうで。後で病院に連れていってやるからな」
「たぶん、秋バテだよ。もう大丈夫、病院はいい」
秋バテなんて言葉があるかどうか知らないが、適当に言ったら、
「そうはいかんって。秋バテは怖いんだぞ。行かなきゃダメだ」
隼人の目がサンカクになった。
「ううん、本当にいいの。だから……」
「ダメだ、おれが春江さんに叱られる。それに、うちのおばちゃんにも」
病院に行くのが怖かった。いいよ、医者なんて。わたしは抵抗し続けた。隼人が作ってくれたおかゆを一口ずつフウフウと息を吹きかけて冷まし、ゆっくり時間をかけて食べた。食べられるところを見せれば、考えなおしてくれると思ったからだ。でも結局、ムリヤリ隼人の肩に担ぎ上げられ、軽トラの助手席に乗せられてしまった。
「おれを助けると思って、な?」
小さい子をあやすみたいに、わたしの頭をなでてくる。大きな手のひらだった。
しかたなくうなずいた。




