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自転車をとめてファミレスに入ると、すでに都さんは来ていた。最後に会ったときと、彼女はちっとも変わっていない。和服姿の上品な中年女性のままだ。彼女はわたしを見つけると、美しくほほ笑む。
気持ちを落ち着ける余裕もなく、彼女との再会に臨むことになってしまった。わたしは今すぐ逃げ帰りたい気持ちだったが、頭を少し下げながら彼女に近づいた。
「沙織さん、来てくれてありがとう。急に会いたいなんて言ってごめんなさいね。お元気そうでよかったわ」
彼女は髪をアップにしていたから、両耳が丸見えだった。小さな石のついたピアスがキラッと光る。対して、わたしは自転車でかなりの距離を走ってきたから汗だらけだ。気にすることでないとわかっていたが、
「いえ……」
わたしは負けじと笑みを浮かべた。けれど、本当は泣きたい気分だった。イルカのTシャツで来るんじゃなかったって後悔し始めていた。
「さあ、お座りになって」
彼女に勧められるまま、向かいの席に座る。タブレットでデカフェを注文している間は、彼女からの視線を避けることができた。
居心地が悪くてたまらない。コーヒーの味もよくわからなかった。早く終わらせて、祖母の息づかいが残るあの家に帰りたい。チラリと上目づかいで見てみると、彼女は窓の外の風景を眺めているところだった。その瞳はどこか遠く、わたしにはなんらかの感情も読み取れない。彼女からしてみれば、二十代のわたしなんて小娘にすぎないだろう。小細工したってジタバタしたって、最初からこちらに勝ち目はないのだ。だからこそ、わたしは勝負を捨てたのだけれど、本当にこれでよかったのだろうか。
「あの、こちらにはどうして……」
迷いながらも、わたしから思いきって理由をたずねると、都さんは「ふふふ」と笑った。含みのない、ひとのよさそうな笑顔が何かを示唆しているようで、返って不気味に感じた。それでも彼女には悪意がないだろうから、わたしもまた笑う。
「あなたに報告があってね、あの子、毅はきっと、あなたに気兼ねして言えないでしょうから。そう思って、わたしが直に会いにきたの」
彼女はそう言って、アイスティーのストローに口をつける。
彼の名を聞いたので、胸がドキリとした。
「おっしゃる意味がよくわからないのですが」




