5
汗をかいたのでシャワーを浴びたものの、どんな服を着ていくか迷った。最近は自分の姿なんてあまり気にしないでいたけれど、まだ他人からどう見えるか気にする気持ちが残っていたんだなって、こうなって気づいた。都さんは、今のわたしの様子を、あのひとにつぶさに話してしまうだろう。だから、彼女にみすぼらしく思われるのは、どうしても嫌だったのだ。
こっちに越してくる前に着ていた、外出着を何枚か衣装ケースから引っぱりだす。あと、髪を乾かして眉も整えて、ばっちりお化粧も決めて……。バスタオルを体に巻いたまま、祖母の鏡台に座り自分の顔を真正面で対峙したときフッと笑えた。
恥ずかしさと情けなさがじわじわ大きくなっていく。わたしったら何をやろうとしているの? 今さら彼らによく思われようとしているなんて、おかしいったらないではないか。やめた、もうやめた。
化粧水を多めにつけて、両頬をピタピタたたいて活を入れた。オシャレでもなんでもない、ただ膝が破れかかっただけのジーンズをはいて、イルカのイラストのプリントが入ったTシャツを着た。
うん、これでいいじゃない。飾り立てったってボロが出るだけだもの。負けが見えている勝負なんてしたくはない。もう二度と、彼らと同じ土俵にあがりたくなかった。
玄関前の姿見でもう一度、自分の格好を確認する。それから、わたしは家を出た。
都さんとの待ち合わせ場所は、駅前にあるファミレスだ。歩いていくにはさすがに遠いため、自転車に乗っていくことにした。
ペダルを踏みながら、かつて恋人だったあのひととの出会いを思い出す。彼と初めて出会ったのも、自転車をこいでいるときだった。チェーンが外れて困っていたところ、通りかかった彼が声をかけてくれた。スーツ姿なのにも関わらず、アスファルトの地面に膝をつき、直してくれたなあって。
ファミレスが見えてきたら、少し緊張してきた。わたしは今から、都さんと再会するのだ。『お義母さん』と呼んでいた、あのひとに。




