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今日も生きてて、わりとごきげん  作者: このはな
第五話 ごきげんではない再会

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「この辺りは新興住宅地だらけだからな。市民の憩いの場も作ったってわけさ」


「田舎で何も変わらないと思ってたけど、そうじゃなかったんだねえ。住むひとが増えてきているんだ」


 しばらく気持ちがいい秋風に吹かれる。隼人も風に身をゆだね、心地よさを感じているようだ。でも、今の会話が気になってしょうがなかった。「責任ていうより約束」とか「物事にはタイミングがある」とか、隼人ったらはぐらかしたりして、何を隠しているんだろう。


 ここで追及することもできたけれど、この雰囲気を無駄に壊したくなかった。なので、問いただすのはまた今度にし、今回はやめることにした。


 わたしたちは荷物を持って歩きだした。


 やがて公園へと続く道向こうから、品のいい初老の婦人があらわれた。わたしたちの顔を見て、「こんにちは」と会釈する。わたしたちも「こんにちは」と申し訳程度に頭を下げた。婦人の胸に抱かれた小さなイヌが黒い目でジッと見つめてくる。


 婦人とイヌが何ごともなく通りすぎていってから、わたしは隼人をふり返った。


「知りあいだった?」


「いや、全然。隣町だし」


 隣町といっても都会にあるのと違い、その面積は広く隔たりがある。それに、ここは余所から引っ越してきたひとが多いようだから、隼人が知らないのも当然だろう。


「ご近所さんに思われたのかな? この格好だから」


 わたしたちはふたりとも、垢抜けないカジュアルな服装だ。対して今さっき通りすぎていった婦人は、オシャレなスポーツウエアを着こなし、サングラスをかけ、いかにも走ってますって雰囲気だった。


「そうかもな」


「おもしろいね、知らないひとどうしアイサツするなんて。ここは街中で都会っぽいのに、やっぱり田舎なんだなあ。本当の都会なら、知らないひとどうしアイサツなんてあまりしないもんね」


 それから、わたしたちは公園の敷地に入った。樹木がたくさんあって、ちょっとした森のようになっていた。適度に元あった木々を残したにちがいない。


 今日は日曜だから、子どもたちも遊具で遊んでいた。わーわー弾んだ声が近くから聞こえてくる。どうやら向こうでは草野球をしているみたいだった。


「広いところだねえ。グラウンドもあるんだ。わたしもやってみたいな、野球。なんだかスポーツをやってみたい気分」


 軽く言ってみただけなのに、


「ようし、やるか! 野球!」


 隼人はそう言って、自分のシャツの袖をまくり上げた。


「えっ」


「キャッチボールだけど」


「なあんだ」


「その前に弁当、食おうぜ」


「賛成!」


 わたしたちはお弁当を食べたあと、キャッチボールをしたり、ローラースケートをレンタルして滑ったり、目いっぱい遊んだ。まるで昔に帰ったようだった。さすがに喉が乾いてきたので、コンビニかどこかで飲み物を買おうということになった。


「木陰で休んでな。ほうじ茶でいいんだろ?」


 隼人が走っていく。こちらはヘトヘトなのに、まだまだ体力はありあまっている感じだ。さすが農業系男子だ。


「ありがとー」


 隼人の背中に声をかける。そのとき、ポケットの中のスマホが鳴っていることに気づいた。その画面に表示された名前を見てドキリとした。そして、どうしてブロックしておかなかったのだろうとすぐ後悔した。



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