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「この辺りは新興住宅地だらけだからな。市民の憩いの場も作ったってわけさ」
「田舎で何も変わらないと思ってたけど、そうじゃなかったんだねえ。住むひとが増えてきているんだ」
しばらく気持ちがいい秋風に吹かれる。隼人も風に身をゆだね、心地よさを感じているようだ。でも、今の会話が気になってしょうがなかった。「責任ていうより約束」とか「物事にはタイミングがある」とか、隼人ったらはぐらかしたりして、何を隠しているんだろう。
ここで追及することもできたけれど、この雰囲気を無駄に壊したくなかった。なので、問いただすのはまた今度にし、今回はやめることにした。
わたしたちは荷物を持って歩きだした。
やがて公園へと続く道向こうから、品のいい初老の婦人があらわれた。わたしたちの顔を見て、「こんにちは」と会釈する。わたしたちも「こんにちは」と申し訳程度に頭を下げた。婦人の胸に抱かれた小さなイヌが黒い目でジッと見つめてくる。
婦人とイヌが何ごともなく通りすぎていってから、わたしは隼人をふり返った。
「知りあいだった?」
「いや、全然。隣町だし」
隣町といっても都会にあるのと違い、その面積は広く隔たりがある。それに、ここは余所から引っ越してきたひとが多いようだから、隼人が知らないのも当然だろう。
「ご近所さんに思われたのかな? この格好だから」
わたしたちはふたりとも、垢抜けないカジュアルな服装だ。対して今さっき通りすぎていった婦人は、オシャレなスポーツウエアを着こなし、サングラスをかけ、いかにも走ってますって雰囲気だった。
「そうかもな」
「おもしろいね、知らないひとどうしアイサツするなんて。ここは街中で都会っぽいのに、やっぱり田舎なんだなあ。本当の都会なら、知らないひとどうしアイサツなんてあまりしないもんね」
それから、わたしたちは公園の敷地に入った。樹木がたくさんあって、ちょっとした森のようになっていた。適度に元あった木々を残したにちがいない。
今日は日曜だから、子どもたちも遊具で遊んでいた。わーわー弾んだ声が近くから聞こえてくる。どうやら向こうでは草野球をしているみたいだった。
「広いところだねえ。グラウンドもあるんだ。わたしもやってみたいな、野球。なんだかスポーツをやってみたい気分」
軽く言ってみただけなのに、
「ようし、やるか! 野球!」
隼人はそう言って、自分のシャツの袖をまくり上げた。
「えっ」
「キャッチボールだけど」
「なあんだ」
「その前に弁当、食おうぜ」
「賛成!」
わたしたちはお弁当を食べたあと、キャッチボールをしたり、ローラースケートをレンタルして滑ったり、目いっぱい遊んだ。まるで昔に帰ったようだった。さすがに喉が乾いてきたので、コンビニかどこかで飲み物を買おうということになった。
「木陰で休んでな。ほうじ茶でいいんだろ?」
隼人が走っていく。こちらはヘトヘトなのに、まだまだ体力はありあまっている感じだ。さすが農業系男子だ。
「ありがとー」
隼人の背中に声をかける。そのとき、ポケットの中のスマホが鳴っていることに気づいた。その画面に表示された名前を見てドキリとした。そして、どうしてブロックしておかなかったのだろうとすぐ後悔した。




