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「たぶん?」
「このノート、いちばん新しい日付のものなんです」
わたしの手は何度も何度も、同じページを行ったり来たりしていた。あかりさんは事情を察したらしく、
「沙織さん……」
心配そうに声をかけてくる。
チリンとドアが開く音が鳴った。隼人だった。
「ごきげん通帳、見つかったって?」
大股でのしのし店内を歩き、わたしのとなりの席に座る。「うん」と返事をしたら、「そっか、よかったな」と笑ってくれた。
「どうして隼人が知ってるの? あ、日高さん?」
「ああ、今さっき、おれんとこにも来てくれた」
すると、あかりさんもホッとしたように笑った。
「コーヒー、いかがです? わたしの奢りです」
「いやったー。いただきます!」
年甲斐もなく子どものように大はしゃぎする隼人。「あざっす!」と何度もくり返す。見かねて、「調子に乗らないの!」と横やりを入れたら、「いいだろ、奢ってくれるって言うんだから」とわたしに言って、あかりさんには「あ、今度お礼にうちの野菜を持ってきます!」とハリキリだした。
まさか、あかりさんにも野菜のサブスクをはじめる気? ご迷惑をかけてしまう前に、
「そういえばね、隼人。ちょっと聞いてよ、すごいことがわかったんだよ」
わたしは隼人に、この「喫茶晴れのちごきげん」と祖母との繋がりを話した。
「なんだ、結局、春江さんだったのか。ごきげんの伝道師ってわけだ」
そうつぶやく隼人は、いささかあきれ気味だ。隼人をあきれさせるなんて、おばあちゃんにしかできない技だろう。なんだかおかしくなってきて、わたしも笑ってしまった。
『十月二日 おばあちゃんのごきげん通帳、シロに盗まれるが帰ってきた。みんなのおかげでごきげん』
わたしのごきげん通帳は、なんとか続行中だ。




