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今日も生きてて、わりとごきげん  作者: このはな
第四話 ごきげん通帳の行方

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 台風が近づいているというニュースが、ネットでもテレビでもくり返されていた。空気が湿気をはらんでいて、体中にまとわりつくようで重たく感じた。空は灰色の雲が立ちこめている。今にも雨が降りだしそうだ。


 わたしは祖母のごきげん通帳を読もうと思い、引き出しからだしたあと、台所に向かったけれど、台所の小さな窓の向こうで電線が揺れているのが見えたので、そろそろ外に置いてある植木鉢などをしまわなければと思い、ごきげん通帳を脇の下にはさんだまま縁側へ行った。


 縁側の窓を開けた瞬間、「みゃー」か細い鳴き声がしたので足もとを見た。不思議に思って縁側の床下をのぞくと、そこに一匹のネコがいた。真っ黒なネコだ。二つの目がわたしを一瞥したものの、何ごともなかったかのように目を閉じた。


「もしかして、おまえ、ごきげん通帳に書いてあったシロ?」


 ネコは丸くなったまま動かない。


「ちがうよね、シロって普通は白いネコかイヌにつける名前だもの。ねえ?」


 けれど、おばあちゃんのことだから、黒ネコにシロという名前をつけるかもしれない。それに、ごきげん通帳の落書きネコのモデルということもありうる。


 これから天気が荒れるのに放っておいていいだろうか。どうしたものかと考えていたら、


「沙織ちゃん、そんなとこで何つったってんのさ」


 畑仕事の帰りらしき隼人が、垣根の向こうの道から声をかけてきた。


「隼人、ちょうどいいとこに。あのね、ネコがね」


「ネコ?」


「縁側の下に潜りこんじゃって動かないの」


「わかった、そっち行く」


 隼人はこちらにやってくると、わたしと同じように腰を屈めてのぞきこんだ。


「ありゃ、シロじゃん。久しぶりだな、生きてたか」


「やっぱりシロだったんだ。ごきげん通帳にあったから、そうじゃないかって思ってた。確か、地域ネコなんだよね?」


「うん、耳にカットが入ってるだろう。あれはちゃんと不妊手術を受けているって証拠だよ。でもおかしいな、もらい手が見つかって、引き取られたはずなんだけど」


「迷子になって、うちに来たのかな? どうしよう、もうすぐ台風が来るのに」


「床下でもさすがに、びしょ濡れになっちまうよなあ」


 二人してシロを見ながらしゃべる。





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