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今日も生きてて、わりとごきげん  作者: このはな
第三話 ごきげん通帳はじめる

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 その女性の名前は、森田あかりさんといった。


 彼女はなぜ「ごきげんカード」なんてものを始めたのだろう。その理由を聞いてみたくて、何回かカフェに行って顔見知りになったとき、思いきってたずねてみたのだ。祖母との繋がりがあるかどうかも知りたかった。


 そのとき、隼人といっしょではなく、わたしはひとりで、カウンター席に座っていた。


「あの、すみません。ごきげんカード、どういう経緯で始めたのか、聞いてもいいですか?」


 ついさっきまで世間話しかしていなかったせいだろうか。突然のわたしの行動に、あかりさんは少し驚いた顔をしたけれど、


「コーヒーのおかわり、いかがですか?」


 と、何も理由を聞かずに勧めてきた。


「はい、いただきます」


 あかりさんは、コーヒーをカップに注いでから話してくれた。


「もともと東京のコーヒーショップで働いていたんです。でも、父が腰を痛めて長く立つことができなくなったときに、こっちに戻ってきたんです。じつは、わたし、最初は、そういうことをやるタイプじゃなかったんですよ。丁寧な暮らし、数年前に流行っていたの覚えていらっしゃいます?」


 わたしが相づちを打ったら、あかりさんはころころ笑った。


「ああいうの、だめなんですよねえ。ずぼらな性格だから」


「でも、そんなふうに見えません。びっくりしました」


 あかりさんはいつも髪をうしろに束ね、パリッとした白シャツに黒のパンツ、茶色のエプロン姿だ。なので、そのように言うと、


「そうですか? あら、うれしい。ありがとうございます」


 また彼女はうれしそうに笑った。


 わたしも笑みを返してから、おかわりのコーヒーを一口だけ飲んだ。それだけで心が柔らかくなっていく。とても優しい味だ。


 あかりさんは話を続けた。


「回転率を上げてまわさないといけなかったし、数字だけで評価されるしで、お客さんの顔も見えなくて、今から思うと相当、疲れていたような気がするんです。なんのために働いているんだろうって。お金のため? それもあるけど、それだけなのかしらって」


 わたしと似ている、そう思った。




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