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「葬儀にもいらっしゃったかな? そうだとしたら、失礼のないようにしないと」
なんだか、ソワソワしてきた。そんなわたしの態度がおかしいと気づかれたのか、
「落ち着けって。オーナーも春江さんと同じ高齢者だぞ。引退したんだから、会えるかどうかわかんないって」
隼人の慰めるように言う口もとには、穏やかな笑みがのぞいている。
あっ、そっか。「ごめん」と改めてあやまったら、
「おいおい、やけに素直だな。調子くるうって」
その顔に今度は戸惑いの色が浮かんだ。
「え、そうかな?」
「そうそう、沙織ちゃんは人の顔色をうかがうより、ドーンと構えてる方がにあう」
「わたし、そんなにずうずうしい?」
「ああ、そういうとこあるよ」
「えー、隼人ほどじゃないけど」
そっか、わたしって、ずうずうしいんだな。自覚はまったくなかったけれど、人間って自分のことはよくわからないものだ。
気づいたら、いつの間にか商店街の通りを歩いていた。時折、顔見知りのひとに出会い、あいさつを交わすことはあったが、隼人はずんずん進んでいった。
どこまで行くんだろう。そう思ったときだ。隼人はある場所でとつぜん立ち止まった。
「沙織ちゃん、ここ、ここ。昔、部活の仲間たちとナポリタンよく食いにきたんだよなあ。そのときの面影は、やっぱ全然ないわ」
それでも、隼人はなつかしそうだった。
なるほど、こんな田舎にはそぐわない、オシャレな店構えだ。平日の昼下がりだというのに、カフェの前はにぎわいを見せている。
カフェの前を通りすぎるとき、窓をチラチラのぞいて店内の様子をうかがおうとしている高齢者や、うれしそうにスマホを見ながら順番待ちをしているマダムもいる。もう少し時間がたてば、授業が終わった学生たちもやってくることだろう。
『喫茶はれのちごきげん』
ゆるい活字で書かれた看板を確かめたあと、わたしたちも順番待ちの列に並んだ。お客さんが外に出てくるたびにドアがひらいて、チリンチリンと鈴が鳴った。コーヒーの香りも漂ってくる。
なんだかなつかしかった。都会にいた頃は、友人の真奈美に誘われて、美味しいパンケーキを食べにいったっけ。久しぶりの感覚に心が弾む。そういえば、真奈美どうしているかな。しばらく連絡をとっていないや。
「隼人、何にする?」
「うーん、悩むなあ」
話しながら待っているうちに列の前が短くなり、とうとう自分たちの番がやってきた。
店内に入ったら、新しい木のすがすがしい香りも鼻をくすぐってきた。
見ると、カウンターの奥で、四十代くらいの女性がコーヒーを淹れている。なかなか混んでいて、ほぼ満席と言っていいくらいだ。カウンターの席は一つしか空いておらず、テーブル席は四席が五つ、二席が三つとスペースに余裕はあるが、どの席もうまっている。
隼人が順番待ちの名前を書くボードに、自分の名前を書きいれ、「2」と人数を入れた。そのあとすぐ名前を呼ばれ、わたしたちはやっと座ることができた。




