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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第13章 精霊の選択

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(20)協力者⑰

 今トゥーラは、リアルタイムで彼方のリードと繋がっているのだろうか?


「トゥーラ、もしかして、リードも子犬化しているのか?」


――犬じゃない


「ああ、ごめん、えっと――リードも小型化していて、トゥーラも巻き込まれた?巻き添えってそういう意味?」


――うん


「トゥーラ、中央(セントラル)からきた初代は、敵ですか?味方ですか?」


 シルビアが問いかける。


――味方


「もしやエド・ロウの身内ですか?」


――恐妻(きょうさい)


 シルビアがその表現にぷっと噴出した。


「シルビア?」

中央(セントラル)の役人は、私もよく知っている人物です。エド・ロウの奥様だと思います」

「――」


 その言葉を理解するのに、カイルは数秒を要した。


「え?」

「心強い味方と言えますね。問題ありません」

「え?ちょっと待って。所長の奥さんって中央(セントラル)の人間なの?僕はてっきり、研究都市所属の研究員だと思っていたよ?」

「彼女は中央(セントラル)管理官(エリート)ですよ。ディム・トゥーラだって、未来の技術官僚(テクノクラート)じゃないですか。中央(セントラル)の関係者が、研究都市に派遣されていることは珍しくはありません」

「なんで所長の奥さんにリードがこてんぱんにされるの?」

「こてんぱんにされた理由は、わかりません。それよりトゥーラのこの状況が問題ですよ」

「え?」

「確かに問題です」


 シルビアの意見に同意したのはアイリだった。

 焼き上げたパンケーキを大量に皿に盛って、アイリがトゥーラの目の前に置いた。


「カイル様、婚約式の式典でトゥーラは列席しますよね?子犬姿か、成獣かは大きな問題です。この姿をみて誰もトゥーラとは思わないのではないでしょうか?」


――あいり 犬 じゃない


「あら、ごめんなさい。もう一枚追加するから許してください」


――許す


 トゥーラは猛烈な勢いでパンケーキを食べ始めた。


「えっと……アイリ、どういう意味かな?」

「事情を知らない人々には、精霊獣を失った――つまりは世界の番人の加護を失ったと解釈される可能性があります」


――失って ないよ?


「ええ、ええ、そうですね」


 アイリはトゥーラの無邪気な言葉に同意しつつ、カイルを見つめる。

 専属護衛の指摘はもっともだった。

 案外、深刻な事態にカイルは冷や汗を感じた。


「トゥーラ、元の姿になるのにどのくらいかかるんだ?!」


――わかんない


「リードはなんて言ってるんだ?!」


――「せいしんてき ひんし」 からの 回復しだい


「精神的瀕死ってなんだ?!」


――えっとね りーど いわく


 パンケーキを貪りながら、トゥーラは言った。


――海の 底 より 深く 落ち込んで いるんだって  


 いったい何を言えば、相手をそこまで落ち込ませることができるのだ。カイルは所長の奥方に恐怖を感じた。





 リルとサイラスが戻ってきた時には、店は半分ほど片づけがすんでおり、二階からいい匂いが漂っていた。


「あ、アイリのパンケーキの匂いだ」

「鋭いな」


 サイラスはリルの嗅覚(きゅうかく)に感心をする。


「これぐらい、すぐわかるでしょ?」

「全然わからん」

「血の臭いならわかるくせに……」

「それなら自信がある」


 リルはカイルがよく言う、サイラス脳筋(のうきん)説を支持したくなった。この(かたよ)りはどうやったら矯正(きょうせい)できるのだろうか。

 二階にあがると、シルビア達がいた。


「お帰りなさい、リル。台所を少々借りています」

「どうぞどうぞ。私もパンケーキがほしいです」

「もちろん、リル達の分もありますよ」


 食卓には頭を抱え青ざめたカイルが座っていた。

 そのテーブルの上に愛らしい子犬に似たウールヴェがパンケーキを食べていた。


「あれ?カイル様、新しい(ウールヴェ)ですか?」




 リルの何気ない言葉に、カイルはさらに追い込まれた。

 

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