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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第13章 精霊の選択

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(21)協力者⑱

 カイルは、この問題に一番正攻法に近い解決策を選んだ。

 それはセオディア・メレ・エトゥールとファーレンシアに意見を求めることである。

 シルビアと共にメレ・エトゥールの執務室に向かい、緊急の面会を申し込んだ。ファーレンシアにも同席を頼む。


 専属護衛達を人払いしてもらってから、カイルは布に包んで連れ込んだ、小さくなったウールヴェを執務机の上に下ろした。


「トゥーラではないか」


 メレ・エトゥールはすぐに子犬の正体を見抜いた。


「なぜ、小さくしたんだ?」

「勝手に小さくなってしまったんだ。ディム――天上のメレ・アイフェスのウールヴェがトラブルで、小さくなってしまった。その影響を受けたらしい」

「まあ、かわいい」


 ファーレンシアは小さくなったトゥーラを抱きあげ、はしゃいだ。

 そのまま、ぎゅっと胸で抱き締める。


――僕 このまま 小さくても いいかも


「おい、こら、待てや」


 カイルの殺気がウールヴェに飛んだ。

 予想に反して、メレ・エトゥールはあっさりとした反応だった。


「なるほど。婚約の儀に関するアイリの指摘も、もっともだが、たいした問題ではない」

「そうなのか?」

「てっきり、別の問題かと思ったから、拍子抜(ひょうしぬ)けだ」

「どんな問題を想定したのさ?」

「侍女と関係をもったとか、隠し子がいるとか、(めかけ)をとりたいとか――」

「僕はそんな不誠実な人間じゃないよっ!メレ・エトゥール!!」

「そうだな、妹に対して不誠実な人間だった場合は、どうしてくれようかと思ったが……」

「どうなったわけ?」


 セオディア・メレ・エトゥールは、カイルを見て嗤ったが、カイルは悪魔の笑みという比喩(ひゆ)がどのようなものか、初めて学んだ。


「ヘタレなカイルが、そんな高等技術をできるわけありません」

「シルビア、それ(けな)しているの?褒めているの?」

「さあ、どちらでしょう」

「だいたい隠し子とか、(めかけ)とか、高等技術なの?」

「では、貴方にできますか?」

「………………できません」

「そういうことです」

「で、できたら、私が困ります」


 顔を真っ赤にして、ファーレンシアが抗議する。


「ファーレンシア様、そのときは私か侍女に相談してくだされば、対応します」

「……どんな対応だよ」――


 カイルはぼやいた。


「メレ・エトゥール。僕はこの手の王族の風習を要求されるのかな?」

「要求しないから、安心するといい」

「よかった。で、()()の解決方法はないかな?」


 カイルはファーレンシアの腕の中の(ウールヴェ)を指差した。


「精霊獣は世界の番人の領域だ。世界の番人に尋ねればいい」


 カイルはものすごく嫌そうな顔をした。


「嫌なのか」

「嫌だ」

「相変わらずだな」

「嫌なものは嫌だ。できるだけ接触は回避したい。何か他に案は?」

「そうだな――」


 メレ・エトゥールは思案した。


「以前シルビア嬢が指摘したのは、ウールヴェが思念喰いだということだ。急成長した時のような状況にすれば、いいかもしれないが、あの時のように長期間の意識不明は困る。婚約式に影響が出るのは、本末転倒(ほんまつてんとう)だ」

(いや)すのは、いかがでしょう?」


 ファーレンシアは首をかしげて提案する。


「カイル様ならトゥーラを通じて、ディム様のウールヴェを(いや)せるのではないでしょうか?」


――僕 は 姫 に (いや)して もらうのが いい


「まあ」


 ウールヴェの可愛いおねだりに、ファーレンシアは顔を綻ばせたが、その瞬間、カイルは己のウールヴェをファーレンシアの腕からやや、乱暴に取り上げた。


「カイル様?」

「シルビア、ファーレンシア、聖堂につきあってくれないかな、癒しを試してみたい」

「はい」


 シルビアはカイルに(ささや)いた。


「ウールヴェに嫉妬(しっと)とは、いささか情けないですよ?」

「ムカつくものは、ムカつくんだ。この点はトゥーラと話し合って、(しつ)ける必要がある」

「ウールヴェとの(きずな)は、どこにいきました?」

「間違いなく(きずな)以前の問題だ」


カイルは真顔で返した。

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