(19)協力者⑯
「トゥーラ、何があったんだ?巻き添えって、どう言うことだ?」
――おなか へった よ
カイルの抱き上げた両手の中で、ウールヴェは哀れっぽく訴える。
「アイリ」
「二階で何かを作りましょう」
片づけを中断して、三人と一匹は二階に移動した。アイリが台所で食材を確認する。
「小麦粉、卵、砂糖、山羊乳――パンケーキでもよろしいですか?」
「大量に」
「人間の分も」
「…………シルビア」
カイルの視線に、シルビアは悪びれる様子も見せずに、珍しく子供並の純真な笑顔を見せる。
「アイリのパンケーキは絶品ですよ?」
「……アイリ、リルとサイラスの分もお願い」
「了解しました」
アイリが笑いをこらえながら調理を開始すると、カイルは食卓の上に小さくなったウールヴェを下ろした。
アドリー辺境伯の事件では、小型になるように命じてトゥーラに応じてもらったことがあったが、今のトゥーラはあの時より小さかった。
「トゥーラ、元の大きさに戻れるか?」
――今は 無理
「巻き添えってどう意味だ?」
――りーど が こてんぱん に やられたの
「…………は?」
カイルはウールヴェを見下ろした。
「意味がわからない。やられたって、どういう意味だ?」
――でぃむ・とぅーら が 大怪我 をして
「!」
カイルは蒼白になった。それが何を意味するのか、カイルは瞬時に悟ってしまった。
エトゥールにいたシルビアが手に怪我を負ったのだ。同調能力の余波をまともに受けたディム・トゥーラが無傷であるわけもない。
実際、あのとき精神体の彼も怪我を負っていた。
「カイル、落ち着いてください」
シルビアがカイルの震える手を強く握った。
「トゥーラ、私の質問に正確に答えてください。正確に答えたら、アイリのパンケーキがありますよ」
――がんばる
「ディム・トゥーラは怪我をしたのですか?」
――うん
「彼は意識はありますか?」
――うん
「命に別状はありますか?」
――ないよ もう 大丈夫
シルビアは単純な質問を繰り返し、パニックを起こしかけたカイルが欲しい答えを的確に入手してくれた。
「リードが、こてんぱんにやられたことと、ディム・トゥーラの怪我は関係ありますか?」
――あるような ないような
「そこを詳しく」
――でぃむ・とぅーら が 怪我を して しゃとる が とまったの
「!」
――遭難した から 救出 されたの
「シャトルの飛行機能が停止して、遭難、救助されたってことですか……」
――せんとらる から 怖い 人 が きたよ
「怖い人?」
――怖い人 りーど を こてんぱん
「リードを怪我させたってことですか?」
――ううん 精神的 に こてんぱん
「カイルどう思いますか?」
「多分、ディム・トゥーラの大怪我と、シャトルの停止は僕の同調能力が暴走した余波だと思う」
カイルは苦悩に満ちた表情を浮かべた。
「怪我人の発生と、シャトルの遭難救助で、中央から事情聴取の役人がきた、ってところかな」
「リードが中央の怖い人にこてんぱんの意味がわかりません」
「トゥーラ、リードをこてんぱんにしたのはどんな人?」
――初代
「初代?」
ディム・トゥーラのそばにいる初代は限られていた。
「エド・ロウ?」
――違う
「エド・ロウは同行しているから「中央からの怖い人」ではないでしょう?」
「エド・ロウ以外の「初代」が中央からきたってことになるよ?トゥーラ、お前はリードとその怖い人の記憶を共用している?」
――している よ
「僕にその記憶を見せることができる?」
トゥーラは考え込んだが、首をふった。
――できない りーど が だめだ と 言っている
「言っている?」




