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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第13章 精霊の選択

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(18)協力者⑮

 アッシュが気絶したリンカを抱き上げ、リルとサイラスの案内ですぐ近所のリンカの家にむかった。そのあいだ、カイルとシルビアは店の片付けをしているアイリを手伝った。


 昔は、このような手伝いを申し出ると、アイリもミナリオも(かたく)なに拒否したが、最近では(あきら)めたらしく、あっさり受け入れるようになった。

 その判断基準は人目があるか、ないからしい。



 取手(とって)(ゆが)み、売物にならなくなった調理器具をアイリは残念そうに眺めた。


「……捨てることになるのなら、安く譲ってもらおうかしら」


 シルビアがピクリとその言葉に反応した。


「アイリ、もしかしてここにある調理器具類があれば、さらにレパートリーが増えるとかアレンジが可能になるとか――ですか?」

「え?ええ……まあ……」

「買取りましょう。リルが帰ってきたら交渉します」


 シルビアは即、(ふところ)から布財布を取り出した。

 カイルはシルビアを呆れたように見た。


「ねぇ、シルビア、どうして甘味がからむと、君の性格が変わるのかなあ?」

「糖分の補給は頭脳労働には必要です」

「それ、建前だよね?」

「当然です」

「アイリのお菓子がなかったらどうするの?」

「世の中は絶望の闇に包まれて、私はのたうち回ります」


 真顔で答えるから、始末が悪かった。カイルはシルビアを相手にすることを諦め、専属菓子職人(パティシエ)率の方が高くなりつつあるアイリを振り返った。


「アイリ、君の作るお菓子には、麻薬成分でもあるの?アイリのお菓子が関わると、シルビアの暴走ぶりがひどいんだけど」

「まあ、カイル様、それは最高級の褒め言葉ですわ。感激です」

「ああ、うん、褒めてるけどね……」

「でも、私の顧客(こきゃく)はシルビア様とトゥーラだけですよ?」

「え?なんで、トゥーラまで……」

「知らなかったんですか?」


 シルビアがやや非難するような視線をカイルにむけた。


「あの子はいつでもオヤツの時間だけは正確に現れて、食べて去っていきますよ。飼い主の(しつけ)が足りないのでは?」


 とんてもない意地汚い逸話(いつわ)に、カイルはショックを受けた。

 トゥーラは一方では、何も食べてないようなふりをして、カイルからもアイリの菓子を強請(ねだ)っていたのだった。


「騙されたっ!!なんて食い意地が張っているんだっ!!」

「それについては同意しますけどね。そういえば最近きませんね」

「――」


 なんかこのパターンは前にもあった、とカイルは思い出した。

 しばらく姿を見せないと思ったら、あの時は、勝手にディム・トゥーラのところへ行って、チップを運んできたのだ。

 カイルも最近、トゥーラの姿を見かけてないことに、ようやく気づいた。


「最近、婚約式の準備で忙しくて放置してたな……」

「まあ、カイル、案外薄情ですね」

「言わないでよ。呼んでみよう。ちょっと嫌な予感がする」


「トゥーラ?」


 名前を呼んでも反応はなかった。


「トゥーラ、ここにおいで!」


 風が起こって、いつものように純白の狼に似たウールヴェが颯爽(さっそう)と――現れなかった。

 代わりに白いちょっと大きめのボールが現れたように見えた。サイズは子供がよく遊んでいる蹴り玉ぐらいだった。


 ぼてっ。


 無様(ぶざま)に着地した毛玉はそのまま、ころころと転がる。


「……………………」

「……………………」

「……………………」


 カイルは壁まで転がってようやく静止した白い毛玉を、拾いあげた。

 子犬のぬいぐるみ――と思ったが、それは生きていた。


「……………………」


 カイルはぬいぐるみ生物を顔の高さまで持ち上げ、視線をあわせた。ぬいぐるみ生物は、しょんぼりしていた。


「……………………何が、どうして、どうなったら、そうなるんだ?」


――巻き添え





 意味不明の返答をトゥーラはした。

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