表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽りの私と二番目の君は、真実の恋をする。  作者: 福与詩檻


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/27

25話 ペリド

 鏡の中に映る見知らぬ少年が話しかける。写真立てのもう片方の少年は自分のことをトルン・サファイアと名乗った。


『そうか。君はトルンと言うんだね。よろしく』


『それで君は確か名前が……ペリド・ラスラズ。我が国でも君の名は知れ渡っている。数十以上の言語を話せる天才だって話だ。それに画家としても有名らしいね。努力をしないとできないことだ』


『意外だ。ガーネット王国でも私の名前を知る者がいるとは驚きしかない。そうだな……トルンの名を覚えておこう』


『ありがとうございます』


『また今度な』


 二人の会話が終わると次は成長したトルンを映す。鏡の中でトルンはジュライアとの婚約をアクアと話していた。オリタビア王国についての話をしていたが、ほぼすべてフェイブ・ブライドの悪口でディッセントからしたら気分が悪くなる話だった。そのせいか彼女は鏡を懐に入れてため息をつく。


「さっさと行こうか。想像通り私の目に狂いはなかった。トルンは嫌な奴だ」


「どうしてそう思うの?」


「いやらしい目をしていた」


「そんなことないと思うけどな」


「絶対危ない奴だよ! それにしてもなんで自分の歯置いてあるんだろ」


「歯が抜けたら取って置いたんでしょ。別に珍しくはない」


 私は部屋の中を眺める。綺麗な絨毯や絵画が見えた。壺に触れていると思わず落としそうになるがディッセントが支えてくれて一安心する。


「気をつけてよ」


「ごめん」


 柔らかな絨毯に綺麗な壺に絵画のすべてが高級品にしか思えない。この絵画は非常に綺麗だが、どこか恐ろしさを感じる。人同士が殺し合っている絵の下には小さく赤黒い文字でペリド・ラスラズと書いてあった。


「この絵画見て」


「どれ? これはラスラズ王国の王子の……これを描いたのだろうか」


「そうみたい……ん? あの人王子なの?」


「ああ、そうだよ」


 ディッセントは私にも話していないことが多そうだ。


「少年の頃から絵の才能があったなんてすごいよね」


「そうね。私にはそんな時間的余裕なかったから羨ましい限りよ」


 真剣な眼差しでディッセントが絵画に近づく。


「ねえ、サクラ。これ血じゃない?」


 私の手を引っ張ると彼女は赤黒い文字を指差す。


「そう? 暗いからわかんない。いや、明るくても血かどうかなんて私にはどうにも……」


「何度も見たからわかる。これ血だよ。なんで血で書いてあるんだろ。絵のほうは……血じゃないね」


 サインだけ血なのか。


 私は気になってディッセントの懐に入っていると鏡を取り出すと絵画に向けた。映し出されたのは本を読むペリドの手だった。先程と同じで少年の時の姿で本の内容は難しくて理解できない。ヒエログリフに近い文字なこともあって読めなかった。他にも英語の本もあったが読んでいる途中で彼が立ち上がってしまう。彼が次に行うのは彫刻だった。楽しそうに彫刻を済ませると音楽を奏でた。


「色々やってるね」


「こうやって楽しんでいたんだ。知らなかったよ。すごいな」


「ディッセントもやってみたかった?」


「そりゃあね」


 鏡に映るペリドは次に行うのは絵画だった。何気なく眺めていると彼が描いていたのは今この部屋にある絵画なのに気づく。私は驚きのあまり言葉を失う。ディッセントも同様に口を動かさなくなる。彼女がうつむくと何故か拳を握りしめていた。


「ディッセント? 何か気になるところでもあった?」


「ああ……」


 彼女は鏡を指差すと絵画の下に小さく自分の血で名前を書いていた。近づかないとわからないほど小さい文字を書いていると女性が近寄る。


『ペリド……こんなもの自分で描く必要があるの?』


『私よりも才能ある者を知らないからな。こればかりはきっと母上にもわからないだろ』


『何もかもわからないわ』


『これは私の証でもある。この作品は私の名前を書いて完成した。こうすれば誰にも真似をすることはできない。世の中には偽物が溢れているが、これでペリド・ラスラズの作品を複製することは不可能になった!』


 笑い出す彼に母親は頭を抱える。


『それじゃあ……大切に保管しとくね』


『いいや、これは友にやることにした』


『友なんていたかしら』


『失礼だな。トルンとかいう奴だ』


『前に一度会ったと言っていたような……その子に?』


『プレゼントしてやろうと思ってな』


『売られないといいのだけど』


『奴が売るものか。あいつは良い奴だよ』


 二人の会話が終わると次の場面に切り替わる。彼は少し成長して机で書類を眺めていた。彼は何かを手に持っていたが見えない。鏡に映る従者らしき人物が隣で立ち『このロストテクノロジーと呼ばれるものをこれ以上集めるのは危険ですよ』と言って彼から魔道具を取り上げる。


『何故だ?』


『当たり前でしょ。危ない兵器だからです』


『これを兵器と思うか。間違っているぞ。正解は相手の行動を封じるだけだ』


 彼は従者が持つ指輪を奪い取る。


『この国にはロストテクノロジーが少なすぎる。それでは国を守れない。トルンとの会話で知ったことだが、隣国のガーネット王国にはロストテクノロジーが大量にある。そして帝国はロストテクノロジーを手に入れようと侵略戦争を起こしているのは事実だ』


『セテロレビ帝国とは昨日話がまとまったばかりじゃないですか。それに帝国がロストテクノロジーを求めているのなんて初耳なんですけど』


『誰にも言っていないからな。帝国の侵略戦争は今に始まったことじゃないが、目的はシンプルに資源の獲得だけだったが今は行動の目的が違ってきている。他のラフラン国ならいざ知らず我々に資源なんてない。ガーネット王国も同様だ。あるとしたらロストテクノロジーだけ』


 彼と従者との会話は続くが隣で鏡を見ていたディッセントが眠そうにあくびをしている。


「眠いの?」


「大丈夫」


 気にせず私は鏡を見るとペリドが馬車から降りてジェイドと会っていた。驚きながらディッセントの肩を揺らすと彼女は「よく見てよ」と言って綺麗なドレスを指差す。


「ジェイドにしては細いような……もしかしてジュライアか?」


 鏡の中で二人は会話をしながら見慣れた建物に入っていく。私が前までいたパール家の屋敷のように見える。


『今日は私の婚約者のトルン・サファイアもいますの』


『ああ、知ってる。その為に会いに来た』


 そう言っていたが着いてから彼はトルンと少し会話をして部屋を出てしまう。屋敷の中を歩き回ると彼は以前ジェイドと入った鍵のかかった部屋の前まで到着する。そこはジュライアの部屋だが彼は遠慮なく入ると室内を物色し始めた。


『トルンの話ではパール家は古くからオリタビア王国に存在している。何か情報を持ち帰ることができればいいんだが……お』


 彼は私が以前触った表紙に何も書かれていない古い本を手に取る。中身を見ると彼は文字を声に出して読んでいく。


『今日もあの方を見てしまった。叶わぬ恋だというなのにやめなければ。なんだ、これ……えっと。まだ続くのか。メシスト? なんだ。王様とか書いてあるが……この文字は前に遺跡で見たものと似ているがどうにも変だな』


 古い本を読み進めていく彼は頭を抱える。


『ただの妄想じゃないか……しかもメシストの話ばかりでロストテクノロジーの話は一切ない。あの女は暗号を使って自分の妄想を隠しているのか? それにしては妙だな。この本やけに頑丈だ。爪で削ってもすぐに直るぞ』


 彼は古い本を横に置いて彼女の部屋を眺める。


『殺風景な部屋だ。あまりここにいると見つかるな』


 扉を開けようとするが彼は立ち止まる。そのまま古い本を手に取ってもう一度読み進めると彼は笑い始めた。


『そういうことか。オリタビア王国が他と違って遅れていることも理解した。この国は別の世界からやってきたのか』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ