22話 古代の王
「わかった。王国以外ならどこでもついて行くよ」
「ありがとう」
「お礼を言われるようなことはしてないけどね」
「今更言わなくてもわかってるよ。それで心当たりはあるの?」
「このまま進めば砂漠に到着する。そこは空からだと円形の模様が見えるの。それが古代に大きな都市があったと言われている場所なんだ。もしかしたら何か残っているかもしれいないよ」
「行ったことあるの?」
「ないよ」
「そんな古い都市に魔道具があったとしても誰かの手に渡っていると思うんだけど」
「帝国が調査したから何もないと思う」
「行く意味ないじゃん」
「オリタビア王国までの通り道だから言っただけ」
ディッセンは太い枝の上で寝っ転がる。
「退屈だから寝るよ。サクラ、砂漠に入ったら起こして」
いつ下に落ちても不思議じゃない場所で彼女は寝てしまった。振り向くと煙が広がっている。木を燃やそうとしているのか少し焦げ臭い。揺れ動く木々が更に成長を続けている。枝に触れてみるも頑丈で簡単に切ることは不可能だと思われる。私は寝息を立てる彼女の隣に座ると手の中にある鍵に目を向けた。私が手を伸ばすと寝ていたはずの彼女が「ねえ、サクラ」と言った。
「寝たんじゃないの?」
「この鍵って人体に使うとどうなるのかな」
「気になるなら使ってみればいいよ」
彼女は目を開けた。
「安心して。何もしないよ」
こうして彼女の善意を試すことはしないほうがいいかもしれない。今は機嫌が良くても何かのタイミングで私を本気で殺す気持ちになる可能性がある。
私は黙って正面を向く。小一時間程度座っているといつの間にか砂漠に到着していた。寒さに体を震わせながらディッセンを起こすと彼女は鍵を使って、太い枝を別の方向へと変更させる。次第に巨大な円形模様の地形が現れた。深い谷と丘が見える。人が住んでいたようには思えないが彼女は円形の中心地まで行くと鍵を使って動きを止めた。
「行くよ」
「待って。高い!」
そうして私の手を取ると彼女は急に飛び降りた。地面に衝突するかと思っていると空に浮かんでいる。ゆっくりと地面に降りると彼女は私の顔を見て笑い始めた。
「驚いたでしょ」
彼女は自分が着ているコートを見せる。
「そんなの着ていたっけ?」
「前から着ていたけどな。あなた私に興味なさすぎでしょ。これ風雷の外套で空を飛べるの」
「それなら最初から使えば良かったのに!」
彼女は砂に触れる。
「……重税で苦しんでいるとこんな国を破壊して遠くまで逃げたいと思うことがあるの」
「巻き込まないでよ……」
そんな便利なものがあったのに私は帝国に住む人になんてことをしたんだ。
「それにこの外套は重さによって飛べる距離が変わるの。二人だとあんまり遠くまで行けないと思ってね」
「重くない」
「体重気にしてた?」
「もういいよ。早く行こう」
歩く度に足が砂に沈んでいく。徐々に太陽が見えて気温が変化する。寒く感じていたのに急激な暑さで体調が悪くなりそうだった。
「顔色悪いよ? ちょっとだけ休憩しようか」
私の体調を心配する彼女と一緒に近くの岩で休むことにした。見渡す限り砂と岩しかない風景は変わることなく、永遠と続いているように思える。私の貧弱な体が悲鳴を上げ始めるのも時間の問題だった。
「移動しようか」
「いいの? まったく、休憩できてないけど」
「その都市があったという場所まで行きたい」
彼女は申し訳なさそうに笑う。
「ここがそうなの。砂に埋まってるけど」
「勘弁してよ。こんなところで砂から掘り出すとか面倒じゃん」
岩に背を預けて目を閉じていると彼女が私の肩に寄りかかって寝ている。私も睡魔に襲われてしまう。目を閉じてから随分と経過して私の肩を揺らす彼女の声が聞こえる。
「起きて!」
いきなり腕を引っ張られて空まで飛び上がると私は下にぽっかりと穴ができているのが見えた。
「危なかったね」
「ありがとう、ディッセン」
私達が先程まで寝ていた場所は地面の砂が消えて穴が広がっていた。ゆっくり降りていくと穴の中は岩と砂ばかりで何も見えない。広い空間でディッセンは地面の砂を蹴り飛ばすと木が見えた。彼女は辺りを歩きながら付近の砂に触れていく。私も彼女同様に手を伸ばして砂を触ると木材があった。
「ここ建物だ」
「新しいよね」
「帝国が以前いたのかも」
「どっちにしてもここじゃないね」
彼女が疲れたように倒れ込むと激しい音と一緒に砂が天井から降り注ぐ。私に手を伸ばす彼女が消えると部屋中を砂が満たしていく。その瞬間私が立っていた地面の砂が消えて、逃げることもできずに落ち始めた。全身に何度も岩などが当たったが幸いにも指輪の効果で痛みはなく、随分と下まで落ちたが服や靴には砂が入り込む程度で済んでいる。
「口にも入ってる……」
砂を吐き出しながら私が落ちてきた穴を見る。
「どうしよう……見えない」
これではディッセンと会うことも難しい。彼女がここまで来てくれることを祈るしかないが仕方ないか。
「私一人で帰ろう」
そう思ったがどこに行けばいいかわからない。
広い空間を歩いていると大きな壁が見えた。そこには一人の男性と大きな剣が見える。壁に刺さった大きな剣が男性の腹を貫いていた。痛みに苦しむ男性は私を見て驚いているようだった。
「血が流れていない……えっと大丈夫?」
私が大きな剣を見ると結構錆びている。
「ああ、大丈夫だ。君は一体……」
「私はサクラギ・クラゲだよ。あなたは?」
「私はメシスト・トパーズだ」
「どこかで聞いたような」
「当たり前だ。私は王様だからな」
「とりあえず」
私はメシストの腹に突き刺さっている大きな剣に触れる。
「待て。抜かなくていい。もう、私は」
彼の手が伸びて私を止めようとするも大きな剣は崩れてしまった。腹部の痛みに倒れそうになる彼を支える。




