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偽りの私と二番目の君は、真実の恋をする。  作者: 福与詩檻


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17話 次の皇帝

 彼女はシャワーを止めると小声で「助けを求めてもいいよ。その代わり私達死んじゃうけどね」と言って微笑む。狂気すら感じる笑顔を見ながら頷くとドアの前にいる二人に向けて声を上げた。


「マージ! オクトリ! 用意してもらった服も濡れちゃったから、悪いけど二人で新しい服取りに行って! 私も後で行くからさっきまでいた部屋に集合ね!」


「了解!」


 マージの声が聞こえてからしばらくすると二人の足音が遠ざかっていく。


「覚悟ができたんだね」


「その前に教えてくれないかな。何故私を殺そうとするのか。そうじゃないと天国で困る」


「そうだね。それなら教えるよ。私の元々の名前はディッセント・モルガナイトだ。ラルドは妾の子の私と母を捨てたのさ。それだけならまだしも、母をラルドは殺したんだ。そのラルドの息子が愛しているサクラギ・クラゲを殺せば……私は救われる」


「そんな理由があったんだ……でも、なんでラルドはあなたの母を殺したの?」


「お喋りだな……そんなこと関係ある?」


「あるよ。何か理由があるかもしれない。そうじゃないと復讐を終えたとしても満足できないよ。ラルド・モルガナイトがあなたの母を殺す理由を知らないと無駄足になる可能性もある。私を殺したとしても、また別の誰かを殺す必要があるかもしれない。その時のこと順番に話してみて?」


 話を聞いて説得ができるならいいが、不可能だと判断したら彼女から逃げるしかない。問題は彼女のほうが体格差で不利なことぐらいか。


「あの頃は母と二人暮らしだった。お買い物をした後に家まで戻ると母が死んでいたの。その後にフェイブ・ブライド国王陛下に助けられた。陛下からはラルド・モルガナイトが私と母を殺そうとしたことを聞いた。そして陛下が今国内は危ないから私に帝国まで行くように言われて、定期的に他国の情報を王国まで伝える役目をしている……それを聞いてあなたは何を思うの?」


「そのフェイブ・ブライドは本当にあなたを助けようとしたの?」


「陛下を疑うんだね」


「いや、ごめん。どうしてあなたを助けようとしたのか気になってさ。あなたはラルド・モルガナイトの妾の子でフェイブ・ブライドとは関係がないはずだよね」


「そんなの陛下が優しいからじゃないのかな」


「それなら陛下はあなた以外の困っている子供を助けたのを見たことがあるの?」


「ないけど」


「あなたの母が死んだ時に何を見たかよく思い出して」


「そんなこと言われても、あの当時はモルガナイト家を襲撃している最中で陛下や周りの人も忙しそうで話をしている暇なんてなかった」


「ねえ、フェイブ・ブライドは何故モルガナイト家を襲ったの?」


「知らないよ。今関係ある?」


「関係はないかもしれない。でも、フェイブ・ブライドの考えを知ることがラルド・モルガナイトに近づくこともある。フェイブ・ブライドはラルド・モルガナイトの何が駄目で国を掌握したのか。それを知ることができたら復讐の役に立つかも」


「手伝ってくれるんだ」


「可能ならやめてほしいけど……それを止める権利は私にはないから」


 ディッセントはナイフを懐に戻すとタオルを投げつける。


「早く着替えな。ドアの前で待っているからさ」


 私がタオルで体を拭いていると彼女が部屋から出ようとして足が止まる。


「そこにある服濡らしておいてよ」


「そうだね」


 ドアが閉まる音が聞こえて私は壁に手をつく。


「心臓に悪い……」


 指輪を着けて濡らした服に着替えるとドアの前にいたディッセントが「ジェイドからしたら私は姉のような存在かもね。私はジェイドの敵になるよ」と呟く。


「本当に血が繋がっているなら争ってほしくない」


「別に私としてはジェイドの前であなたを殺して悲しませるのも悪くないと思うの」


「……そうしたらジェイドはどんな顔をするのかな」


「さっきから思っていたけど、あなたって度胸だけはあるよね。すごい平然としていたし」


 私は冷静を装いながら彼女と歩き始める。


「そんなことないよ。私結構臆病な性格だと思う。それに誰かを殺すのを止めたい気持ちはあるから、ディッセントが復讐をするのならやめてほしいとは考えているよ。まあ、そんなのも私の自己満足でしかないのは事実だから本気なら止めない」


「どっちよ」


「あなたの話を聞いて疑問に思った。それだけだよ。何をしようとあなたの自由だ」


「陛下があなたを殺すように言っていた理由が少しわかった気がする。何もかも見透かされているようで気味が悪い」


「私の出生からしても特殊だから仕方ないよ」


「何もかも諦めたかのような態度……私は嫌いかもしれない」


 扉を開けて円盤のあった部屋に入る。


「ディッセントは私がそう見えるんだ」


「そうとしか見えないよ」


 この部屋には誰もいない。


「二人はまだ戻らないね。私が傍にいるというのに」


 ディッセントの呆れたような顔を見て安心して椅子に座る。彼女と会話を続けていると服を持って二人が戻ってきた。


「悪い。時間かかった」


 マージから渡された服を持つと全員が部屋から出た。タオルでもう一度体を拭いて着替えを終えると円盤に触れてみる。物音一つしない円盤の上に立ってみるが何も反応がない。


「使い方がわからないと意味ないか」


 それにマージとオクトリに話さず帰っても迷惑をかけるだけだ。


 私は扉を開けて三人を部屋に入れる。


「それでディッセントはサクラと話をしましたか?」


 オクトリの言葉に彼女は反応に困っていた。


「話?」


「ジャニュス・アリーのことですよ」


「あ、そうですよね。まだ……聞いていません」


「でも、ジャニュス・アリーのことを言われても私は記憶がないから聞かれても答えられないよ」


「まあ、初めて会った時にジャニュス・アリーとそっくりなのはわかりました。それだけでも十分だと思いますよ」


「随分あっさりしているな」


 マージが退屈そうに窓の外を見る。


「帝国としても重要なのはジェイドで彼女じゃないですから」


「じゃあ、なんでジェイドはジャニュス・アリーのことを伝えろと言ったんだよ」


「複製されたジャニュス・アリーは廃棄されて、今は存在しないのに何故かオリタビア王国にそっくりな顔をした人がいる。しかも、その人物は帝国でも僅かにしか存在しない特殊な名前を使っていた。調べるだけの理由はあるでしょ」


「私の名前って特殊なの?」


「ええ、私達は名前が先で名字が後なのにあなたは逆だ」


「そういえばジェイドがクラゲって言っていたな。オクトリは気づいていたか?」


「聞いていいことかわかりませんでしたから」


「帝国にとってジェイドは重要です。皇帝も彼には帰ってきてほしいと思っています。そんなジェイドが愛している女性のことを調べる義務があるわけです」


「義務って」


「ジェイドは次の皇帝になるかもしれませんから」


 突然のことに私は椅子から立ち上がった。マージとオクトリも驚いてしまっている。


「あれ? 聞いていません?」

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