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19話 聖女、ヤンデレ王子と公認の仲になる

 私とキース王子が想いを確認し合った後。


 キース王子は、兄、ジェシー王子への魔力供給を許してくれた。

 もちろん握手で。


 青玉宮せいぎょくのみやに戻ると、丁度ジェシー王子に見送られ、離宮を出ようとしていたシャーロット様、ビア、シェリーと遭遇そうぐう

 

 私とキース王子の様子が明らかに以前変わったんでしょう。

 私達の様子を見て、全員顔を見合わせて何か言いたそうな表情。

 

 はいそうです。

 

 キス、しちゃいました。

 告白を受け入れました!

 想いを確認し合った所です!


「ジェシー王子。ポーション作成のための魔力供給、つつしんでお請けいたします」

「もちろん握手だよ。手を握るだけだよ!」


 その言葉に、ジェシー王子は一瞬ぽかんとした後、朗らかな声で笑い始めた。


「この短い時間でなにがあったのやら!

 まあいい。聖女アルナ!おかげで国が護られるぞ!」


 こうして。


 私たちは早速、青玉宮せいぎょくのみやの地下室に戻る。

 錬金釜の前で真剣な顔つきのジェシー王子が、乾燥した植物や鉱物、瓶に入った薬品、桶に汲んだ井戸水などを混ぜ始めた。

 回復ポーションを作るらしい。

 これまでは少量しか作れなかったものを、量産してみるとかで。

 

 その背中を私たちは固唾かたずを呑んで見守った。

 キース王子の手は、ずっと私の手を握りしめている。

 優しく、そして力強く。

 

 そこに、午後の鍛錬を終えたエドワード王子もやってきて、シャーロット様の横に並んだ。


「すぐに来れなくて申し訳ない」

「いえ、いいんです。エドワード様に会えただけで、私は幸せです」


 なんて可愛らしいシャーロット様。

 エドワード様を見つめる恋い焦がれる瞳は、乙女のものだ。

 本気でシャーロット様はエドワード様が好きなのね。

 エドワード様は、慈愛の籠もった目で見つめ返している……二人の恋愛はきっと、まだ未満だ。

 でも後数年もすれば……。


「よし、準備できた。

 仕上げはこのドワーフの錬金棒で釜をかき混ぜて魔力を込めるだけだ。

 その前に、アルナ。頼んだ」


 ジェシー王子が、私に手を差し出してくる。


 キース王子が私を見て、笑顔でうなずいた。

 もう彼の瞳に不安そうな陰りはない。


 私はキース王子と視線を絡ませた後。


 ジェシー王子の手を握り、魔力供給を開始した。

 私の体を光が包み、それが握手を通してジェシー王子に送られていく。

 リーンの加護。

 天から注ぎ込まれる力が、ジェシー王子に満ちていく……。


「すごい。これが聖女の魔力供給か!体中に魔力が満ちていくのがわかる!」


 手を離した後、ジェシー王子はすぐに錬金釜に向かい合い、黄金出できた大きな匙……ドワーフの錬金棒で中身をかき混ぜていく。

 錬金釜の中の液体からふわっと霧が立ち上り、その中にキラキラとした光の粒が生まれては消えていく。

 これが錬金術……!

 

「やった!成功だ!」


 ジェシー王子の声に、その場にいた全員が顔を見合わせて笑顔になった。

 私とキース様も抱き合い、ジェシー王子の錬金術の成功を喜んだ。

 

「アルナ!ありがとう!

 これだけ一度に作れれば、今後派兵があっても十分兵を守る事が出来る!」

 ジェシー王子もおおはしゃぎ。

 早速瓶に詰めようとか、別のポーションも作ろうとかあれこれ口にしてエドワード王子と打ち合わせをはじめたり。

 良かった。

 力になれてホッとした……。

 

 あれ?

 

 そんな中。


 一人だけ、ほんの一瞬だけど、引きつった作り笑顔で浮かない顔をしている人がいた。

 次の瞬間には、その憂いを含んだ表情は消えていて。

 気のせいかな……?


 ◇◇◇◇◇


 夜のアステリア王宮正殿。

 白百合の間。


 午後、いろんな事があって疲れた私は夕飯後、即ベッドにダイブ。


 キース王子から届いた「愛している。」とだけ書かれたメッセージカードを眺めて転げ回ったり、疲れた体をストレッチしてみたり、またメッセージカードを見直して転げ回ったり。

 一人でバタバタして情緒不安定な時間を味わい、専属メイドのシンシアに苦笑いされた。

 

「キース王子とアルナ様は絶対お似合いだと思いました!

 あの百合の花……人嫌いなキース王子あんな熱烈な愛情を表現されるなんて、私は、あの時から、絶対本物の愛だと思いました!」

 

 うっとりとしたシンシア。

 ベッド脇のテーブルに寝入る前のハーブティーを持ってきてくれた。

 

「そ、そうかしら」

「ええ。そうですとも!

 キース王子が個人的に花を贈っていたのは、今は亡き王妃様にだけですから!

 こうしてメッセージカードまで届けてくださるなんて……。

 お二人がもし婚約されたら、王子と聖女の婚姻ですから、国を挙げての祝い事となるでしょう」

「そんな!ま、まだお互いの気持ちを確認したところよ!気が早い……!」

 

 婚約!

 そこまで考えてなかった……いきなりそんな飛躍する?

 この私が王子様と婚約?結婚!?

 うそうそ。

 うわああ!

 もう、情緒が忙しい!

 

 というか、まだまだ浮かれている場合じゃない!


 護国の結界のひび割れ、魔物の出現の話もあるし。

 地方への、エドワード王子の派兵の流れも本格的なようだし。

 聖女として国を守る使命は終わっていないんだから!


 キース王子とキスしてお花畑状態の頭だけど。

 明日からまた気持ちを切り替えて、聖女としての務めを果たしていかないと。

 でも、あのキス。

 思い出すと顔がニンマリしちゃう。

 それだけは許して下さい。

 だって、キース王子とのキスを思い出すだけで胸がいっぱいになって、幸せな気持ちがこみ上げてくるから……。


 ◇◇◇◇◇


 翌朝。


 メイド達が出入りする音で目を覚ました。

 花びらが開ききり、萎れつつある花瓶の中の白百合の花を取り替える、との事。


 キース王子からの贈り物の新しい白百合。

 花瓶二つ分。

 そう。

 もう過剰じゃない。

 この部屋にちょうどいい量の白百合の花。

 

 キース王子、直筆のメッセージカード付き。

『早く会いたい。』

 なんてストレートな……。

 でも愛おしい。

 

 愛おしい。

 

 私は贈り物の白百合を眺めながら朝食を摂った。

 今日の朝食は、ふわふわしたホワイトマッシュルームと山羊のチーズのホワイトオムレツ。黒キャベツと塩漬け発酵魚の胡椒炒め。紫レタスとトマトのサラダ。

 デザートに小さなパンケーキとクリーム添え。

 うん。美味しい……滋養が染み渡る。


 朝風呂の後、用意された白いドレスに身を包む。

 シンシアに丁寧に髪をかれ、ヘアセットされて、薄化粧。

 用意された白百合をモチーフにしたアクセサリーも身に着けて。

 

 こんなに心がドキドキするのは、この後の儀式でキース王子に会うから。

 キスの後、自分の気持ちが激変したとわかる。

 好きな人のために身支度するのってこんな気分なんだ……。

 あああ!

 自分らしくない!

 でも、キース王子にきれいに見られたいって気持ちが千倍くらいに膨れ上がってる。

 

 早く、会いたい。


 儀式の立ち会いが終わった後。

 私の元に駆け寄ってきたキース王子と見つめ合う。

 不思議と、お互いに言葉は出てこなかった。

 ただそうする事が自然なように手を握りあい、繋いだまま黒曜石宮に向かう。


 そして、並んでソファに腰掛けて、魔力供給の時間。

 今日からは、もちろんキスで。

 

 シェリーとビアには退席してもらい、二人だけの時間にしてもらった。

 

 いつもの魔力供給とはもう違う。

 口づけでの魔力供給。

 正直めちゃくちゃ緊張しちゃう。


「アルナ。いいね。キスで……」


 キース王子の顔が迫る。

 彼の真剣な瞳。

 

 ふわっと唇が重なった――。

 

(続く)

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執筆頑張ります!

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