18話 聖女、ヤンデレ王子とついにキスをする
「魔力供給……ですか」
私は驚きを隠せず、目をパチパチさせた。
「そうだ。今以上のポーションを作るには、君の魔力供給が必要だ。
今キースの体調は良くなってきているし、次は俺の錬金術を手伝うために魔力供給をして欲しい。
もちろん、アルナの望む形で構わない。
キースへの魔力供給も、処女神リーンのようなキスの形ではないことは聞いている。
俺に対しても握手でかまわないから……」
ジェシー王子が熱心に私を説得しようと身を乗り出して来たけれど……。
「ダメ!」
大きな声を出して割り込んできたキース王子。
すごい剣幕だった。
これまで見たことのないような険しい顔つき。
まるで悪人でも見るかのようにジェシー王子を睨めつけ、私とジェシー王子の間に割って入って来た。
「アルナが魔力供給をするのは僕だけだ!」
そして子供のように癇癪を起こし、叫んだ。
その剣幕に、工房を興味深げに見学していたシャーロット様が肩をすぼめて震えだす……。
うん。怖いよね。
ビアとシェリーも、キース王子の癇癪にはなれているだろうに、動揺して固まってしまった。
「おいおい、それはいつ決まった?誰が決めた?」
ジェシー王子がムッとした様子で反論した。
「お前の病状を鑑みて、集中的にキースに魔力供給をするという話は納得したが、お前だけが聖女の加護の恩恵を受けていいと決めた法はない。
エドワード兄上の派兵は護国の使命。
危険も伴う。
俺のポーションが多くあれば、それだけ民や兵、そして、騎士団団長であるエドワード兄上の命を救えるかもしれないんだ。
弟としてそれをサポートしようとは思わないのか?」
「うるさい、うるさい!
ジェシーお兄様は聖女アルナが物珍しいだけだろう!
ポーションは、今作れる量で十分じゃないの?
それに、僕に魔力供給を減らせばそれだけ結界の力がまた弱まる可能性もあることは考えていないの?
僕だってひび割れた結界を修復するために日々儀式で魔力を消耗しているんだからね!
アルナはこれまで通り、僕だけに魔力を供給すれば良いんだ!
ジェシーお兄様は割り込んでくるな!」
「なんとワガママな事を。キース、本当に見損なったな……!」
地下室に響き渡る声。
すごい勢いで王子兄弟の口論が始まった。
おろおろするシェリー、震えて固まってしまったシャーロット様。何も言えず黙り込むビア。
キース王子は色々言っているけれど、多分私がジェシー王子に魔力供給をすること……彼の手を握る事が気に入らない、というのもありそう。
ずっと、ジェシー王子と私を会わせたくないって言ってたしね。
「アルナ。頼む。ポーション作りのために、力を貸してくれ」
力強く云うジェシー王子。
「アルナ!今まで通り結界術に励めるよう、僕だけに魔力供給をして!」
懇願してくるキース王子。
二人の王子が私を見ている。
あ、あの。
私。
どうしたらいいの?
◇◇◇◇◇
ここ、ゲームだったら、絶対今後の展開や、各王子の好感度に影響ある選択肢です。
私の決意はなんだった?
アステリアを聖女として守ること。
だから。
キース王子、大好きだけど……キース王子の気持ちを優先したいけど。
私は……ジェシー王子にも魔力供給をしないといけないのでは。
そんな事を考えていたら。
キース王子が私の手を掴み、引っ張った。
「行こう!」
私はぐいと引っ張られて、キース王子に導かれるまま地下室を出る。
他の人を置き去りにして、キース王子は私を連れて強引に青玉宮を出た。
私は抵抗できず、手を引かれるままキース王子に続く。
彼の手を振りほどくことが出来ない……!
<薔薇咲く中庭>を通り抜け、黒曜石宮にやってきた。
ドアを閉めるなり、キース王子は私を抱きしめた。
二人きり。
異国の雑貨や魔道具が並んだ、いつもの応接間兼執務室。
「だめ。僕以外の人に触れてほしくない……ワガママなのはわかっているよ。でもヤダ!」
キース王子の細身な体に抱き寄せられ、彼の骨ばった細い腕が私の腰と肩に絡みつき、きつく締め付ける。
息ができないくらい強い抱擁。
キース王子の息は荒く、震えていた。
「アルナは僕のものだ。
聖女としてだけじゃない……今は女性として、人間として、君の全てが好きだ」
「僕を癒やし、大事にしてくれる君が好きだ」
「他の人に触れさせたくない。絶対嫌だ。それが国のためでも、相手が兄様でも」
「アルナは僕だけのもの」
「僕だけの聖女でいて欲しい。僕のものにしたい。僕だけのものにしたい」
「国の事を考えないといけないってわかってるよ!
でも嫌だ。
ジェシーお兄様の手を握るなんて許さない。
僕だけに触れて。
僕だけを見て。
僕の頭がアルナでいっぱいのように、君の中も僕だけで満たしたい」
キース王子の口からあふれる、怒涛のような、言の葉が。
キース王子に締め付けられる体のきしみが。
キース王子の琥珀色の瞳の切なげな視線が。
全てから昇り立つ激情の奔流が私に絡みつく。
全身から力が抜けていく。
ここまで……愛が深いなんて。重いなんて。
私を抱きしめる彼の体は、ずっと小刻みに震えている。
キース王子は不安なんだ……。
私が誰かに盗られそうって……。
私が……しなくちゃいけないことって。
もしかして。
私はそっと顔を上げた。
そして、キース王子の唇に、自分の唇を重ねた――。
驚いて体をビクリと波立たせたキース王子だったけれど、すぐに瞳を閉じて重ね合わされた私の唇を優しく食んだ。
私も目を閉じる。
そして、初めてのキス――。
◇◇◇◇◇
長いキスの後。
唇が離れた後も、夢の中のようなふわふわした甘い心地は消えなかった。
キース王子は泣きそうな顔をしていた。
「アルナ……良かったの?君は……キスは嫌だと……」
「嫌なんじゃありません!キース王子を好きになってしまうことが……好きって認めてしまうことが、怖くて出来なかったんです……。
これは、魔力供給は関係ないキスです。
私の気持ちです。
わかってもらえましたか?」
「うん……うん」
ぎゅっ。
再びキース王子の腕の中。固く抱きしめられる。
「アルナ。好きだよ」
「私も……キース王子が好きです」
キスしないって決めていたのに。
もう完敗。
私、本気でキース王子のことが好き……。
キスしちゃった。
それに、もう……お互い、両思いってことだよね。
ああ、夢じゃないかな。
いや現実だ。
キース王子と、私は同じ想いで……。
感情がぐちゃぐちゃ。
でも幸せ。
ああ。今、私絶対真っ赤になっている……!
私たちは何度も何度も唇を重ねた。
甘い甘いキス。
キース王子の薄く、でも柔らかな唇が何度も私の唇に触れる。
時に優しく、時に激しく。
そして、ずらして重ねた唇は挟み合うように触れ合い、キース王子の舌先がツ……と私の粘膜の上を滑る。
私の体に官能的な稲妻が走り、腰が砕けそうになるけど、キース王子は逃してくれない。
私の腰に手を回し、自分の方に引き寄せて……私の唇を砂糖菓子のように舌先で転がし、私の震えや反応を楽しんでいるみたい。
意地悪。
「んん……ッふ……」
頭の中がふわふわ。
体も……とろけそう。
これがキース王子のキス……。
「僕だけの事を好きでいてくれる?愛してくれる?」
「はい。はい……」
「嬉しい。アルナ。……僕の不安を……君が一瞬で消してくれた。
僕は君を信じる。
君が離れていかないって……僕だけを見つめてくれるって。
だから――」
(続く)
初キッス。以降はちゅっちゅすることで魔力供給をしていきます。
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